早嶋です。
企業がとるべき戦略は3つに集約できる、と言うことで以前ブログ「3つの競争戦略」でコストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略を紹介しました。その中の差別化戦略では、何らかの差別性を企業が訴求して、それを顧客が感じ取ってくれる重要性を強調しました。
トヨタ自動車のプレミアムカーラインであるレクサスの競合者は皆さんご存知の通り、強力なブランド力を持つベンツやBMWです。レクサスはこれらのブランドに対抗するために、そして顧客の認知を獲得するために差別化戦略を取ってきました。
レクサスのブランディングをすすめる上で、レクサスがどんなに頑張ったとしても欧州車の歴史は無いといった事実を受け止めていました。そして、この認識を前提にレクサスの差別化戦略が考えられます。
トヨタは製品開発からサービス提供に至るまで、企業が顧客に価値を提供する一連の流れ、つまりバリューチェーンにおいて性能、デザイン、仕様、専門部品などの500項目についてレクサス・マスツ(LEXUS MUSTs)という商品化の基準を設けました。
この基準の特徴的なところは、ブランドを確立するためのアクションを具体的な方法や基準にまで落とし込んでいる点です。例えば、意匠のマスツでは、レクサスの売りのポイントである静かさのために、空調、ファン、モーターの音量を数値で規定しています。例えば、新技術時間差展開のマスツでは、新技術の採用はレクサスからはじめることに決めている。などです。
ただ、実際はレクサス・マスツの大半は非公開です。公開するとその部分を模倣される。しかし、公開しなければ、顧客にレクサスのすごさが伝わらない。きっとレクサスはこのようなジレンマを受けながらブランド化されたのだと思います。
それと北米での展開と日本での展開でも異なっています。どちらかといえば、500のこだわり!といえば日本人は飛ぶ着きそうですが、北米の人は関心を示さないでしょう。彼らが実用主義者が大半だという仮定です。実際、北米のレクサスのHPではレクサス・マスツに関する情報公開はほぼゼロです。
レクサスであっても差別性を顧客に認知してもらい、ベンツやBMWと違うポジションを感じてもらうために、随分苦労があったのだと思います。差別化戦略と言っても、重要なのは顧客の認知。企業本位の満足では全く意味がないのです。