カスタマーハラスメントについて

2025年2月6日 木曜日

公認心理師・EAPカウンセラーの安藤です。

昨今、カスタマーハラスメントについて企業から、*EAPでは個人相談も増えています。今回は、カスタマーハラスメントについての基礎知識及び、組織としてのしておかなくてはいけない対策についてお書きします。
*EAPとは、「従業員支援プログラム」で、従業員のメンタルヘルス対策として精神的・身体的不調のケアを行うプログラムのことです。

まず、職場のハラスメントの法律上の取り扱いとして、事業主による防止措置が法律上義務づけられているハラスメントは、①セクシャルハラスメント(男女雇用機会均等法)、②マタニティハラスメント(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法)、パワーハラスメント(労働施策総合推進法)です。カスタマーハラスメントについては、法律上の規定はまだないですが、労働施策総合推進法に基づく厚生労働省の指針に次のように明示されています。

事業主は、顧客等から著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求)により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、雇用管理上の配慮を行うことが望ましいとして次の取り組みを例示している。
①相談に応じ、適切に対応するために必要な体制整備
②被害者への配慮のための取組(メンタルヘルス不調への相談対応、行為者に対する1人で対応させない等)
③被害防止のための取組(マニュアル作成や研修の実施等、業種・業態等の状況に応じた取組)

カスタマーハラスメントの法的規則の現状としては、下記の通りです。
① 労働契約法: カスハラ防止の適切な措置を講じない場合、安全配慮義務違反に問われる可能性がある。
② 労働施策総合推進法: 厚生労働省の指針の中で、カスタマーハラスメントに対しても企業に措置義務を求めている。                                                             
③労働者災害補償保険法: (心理的負荷により精神障害の認定基準 2023年9月改定)
従業員が精神的・身体的な被害を受けた場合、労災として認定される可能性がある。
④民法: 企業や従業員が被害を受けた場合、加害者に損害賠償を請求することができる。
⑤刑法: 脅迫罪、侮辱罪、強要罪、暴行罪、等に該当する場合、加害者は刑事罰を受ける。

政府や地方自治体では、カスタマーハラスメント対策の法制化に向けて動きが進んでいます。参考までにこちらは、カスタマーハラスメント対策企業マニュアル作成事業検討委員会 【資料1】カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(案)です。

カスタマーハラスメント対策を組織として、ルール、マニュアル化をしていないとどのようなことが起きるかというと、会社への不信感から従業員の離職、メンタル不調、生産性の低下などが挙げられます。メンタル不調には、PTSD(心的外傷後ストレス症)があります。

よって、組織として早めにカスタマーハラスメント対応の基本方針を決定することが必須です。
例として①カスタマーハラスメント対応の基本方針としては、企業として、カスタマーハラスメントに対する毅然とした対応を行うことを明確に表明し、従業員の安全と健康を最優先に考え、ハラスメント行為を許容しない姿勢を内外に示します。具体的には、企業のwebサイトや社内掲示などで基本方針を公開し、従業員やお客様に対して周知徹底を図ります。



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