新規事業の旅155 マーケティング(2Cと2B)の基礎理解

2025年1月23日 木曜日

早嶋です(約4,500文字)。

事業部制やカンパニー制をとっている企業でも、マーケティングそのものは機能的な組織で対応する場合が多いと思う。その意味で、マーケティングという言葉は企業でも良く使う一方で、実際にどのようなことを考え、行うべきかについての理解は浅い。当然だ。機能制組織の場合は、一部のスペシャリストがその役割を担うからだ。ここでは、基本的な考え方を改めて整理する。

(コンビニ商品で4Pとポジショニングの勘所を付ける)
まずは、習うより慣れろで、実践してみるのが良い。と言っても、マーケティング活動を企業の中で網羅的に行うのは難しいので、コンビニに流通する商品で競合関係にあたる2つの商品を比較する取組からはじめてみるのだ。そして、その商品のポジションの違い、それに対してのマーケテイング・ミックスの整理をすることで、マーケテイングのイメージが付いてくるだろう。

■ケース:水
例えば、水を考えてみよう。商品Aをサントリーの天然水、商品Bをコカ・コーラのいろはずにする。そして、それぞれの商品の4Pを比較してみるのだ。商品(Product)は、パッケージデザインやエコボトルの採用を強調するいろはすと、水源や純度を協調する天然水が対局にあることがわかる。価格帯はどちらも同じだ。どちらの商品も全国展開しているが、地域ごとのご当地いろはすなど、地域の差異を協調している。プロモーションは、エコ訴求のいろはすに対して、シンプルな自然をイメージする天然水と興味深い。

■ケース:カップラーメン
次に、カップラーメンをみてみよう。商品Aを日清カップヌードル。商品Bをサッポロ一番塩らーめんカップにする。カップヌードルはグローバル定番色、塩らーめんは家庭的な味を協調している。価格はカップヌードルがやや高価で、塩らーめんは手頃だ。両者ともコンビニで購入可能だが、カップヌードルは種類が豊富だ。カップヌードルは若者に訴求し、塩らーめんは懐かしさを訴求している。

■ケース:スナック菓子
最後に、スナック菓子を考えてみよう。商品Aを明治のアーモンドチョコレート、商品Bを森永ダースとする。商品の違いはアーモンド入りか純粋なチョコレートかだ。明治の商品はアーモンドが入る分、幾分価格が高い。流通はどちらもコンビニの菓子コーナーで展開され、アーモンドの健康訴求と濃厚で手軽な味わいを訴求するなど、似たような商品でもマーケテイング・ミックスが異なることがわかる。

このように、手頃な商品、身近な商品、認識のある競合する複数の商品を選定して4Pのフレームワークを用いて整理するのだ。時間があればグループでその違いを話し合うと、他の視点が諸々入り、より理解が深まる。そしてそれぞれの商品がどのような違いを演出しているのだ、差別化を図っているのかを議論するのだ。

– 商品(Product):特徴・機能・デザインなど。
– 価格(Price):価格帯、付加価値。
– 流通(Place):どこで買えるか、広がり方。
– 販促(Promotion):どのように伝え、購入を促しているか。

(購買後のフォローの理解を深める)
次は、マーケティングの中でも重要な要素である、購買後のフォローについてだ。ジョブ理論では、購買するまでをビックハイアと称し、その後の取組をリトルハイアと称す。近年はデジタル機器を活用して、リトルハイアの取組に注目が集まるが、非常に大切なコンセプトだ。理解を深めるために、リトルハイアに力を入れている企業とそうでない企業の同ジャンルの商品を比較してみよう。購入後のフォローやエンゲージメントにはch自害があり、それらが顧客体験を生み出す違いになっていくのだ。

■ケース:スマートフォン
商品Aをアップルのアイフォン、商品Bを格安スマフォとしてみよう。Aは購入後にアップルケアプラスなどの保証サービスがあり、OSなどは適宜アップデートされ機能が向上される。またアップルストアでの対面のサポートなど、オンラインとオフラインとどちらも充実している。一方で、Bは購入後のサポートはオンラインのみだ。ソフトウェアのアップデートも少なく、保証プランも限定的な場合が多い。更に、Aは複数の商品がシームレスに連携できて心地よい使用体験を提供する。

■ケース:化粧品
商品Aをフォローに力をいれるPOLAにし、商品Bをドラックストアで販売されう一般的なスキンケア商品にしてみよう。Aは、購入後に専属の担当者によるスキンケアのアドバイスがあり、肌状態をデータで分析して、定期的に商品を提供する。店舗でのフォローに力を入れているのだ。一方Bは、購入後のフォローはほぼ無い。大量生産で価格を重視していることがわかる。

■ケース:食料や飲料
商品Aをネスレが提供するネスカフェアンバサダーとし、商品Bをコンビニ等で販売されるペットボトルコーヒーとしよう。Aはコーヒーマシンの定期メンテナンスや交換、定期購入プランでコーヒーカプセルを提供する。購入後のプロモーションやキャンペーン案内も頻繁にくるのだ。Bは、購入後の関わりは皆無ですぐ購入できる利便性や価格を重視している。

■ケース:自動車
トヨタのKINTOを商品A、一部の中古車を商品Bとする。Aは、サブスクリプションモデルで定期メンテナンスや保険サービスを付帯する。購入後も専用アプリで車の状態が管理され、定期的なアンケートやサポートの連絡も充実している。一方Bは、購入後のフォローは保証期間のみの最低限に限られる。顧客との関係性は購入と共に終わることが多い。

■ケース:アパレル
商品Aをパタゴニア商品とし、商品Bをファストファッションにしよう。パタゴニアの商品は製品の修理サービスが充実しており、購入後に再利用やリサイクルの案内も欠かせない。また、環境保護に関する情報提供やイベントなど充実しちえる。商品をサスティナブルとして提供しているのだ。一方Bは購入後の関係性は薄くコスパのみで顧客を繋ぎ止めている。ただし、ファストファッションなのでコスパと流行重視で、地球の今後の取組など一切考えない。結果的にパタゴニアの商品は購入後のエンゲージメントた高まり信頼を構築する一助になっていると考えることができる。

このように、購入後のフォローがどのように顧客満足やブランドロイヤリティに影響を与えるかを考えるのだ。商品AとBのコスト構造やマーケティング戦略の違いを整理して、グループディスカッション等を行いながら、購入後のフォローの重要性を深堀りするのだ。如何にリトルハイアが長期的に企業の利益を高め、顧客との関係構築を創り出すかが理解できると思う。

(法人マーケティングへの応用)
マーケティングの講座等に参加する方々の期待に、法人マーケティングについて理解を深めたい。とある。が法人マーケティングについて言及する方々が未だ少ない。学術的に研究が進みにくいことやデータが少ないことがあると思う。しかし、一般的に上記で議論した取組に加えて、法人、つまり組織間での購買や認知、意思決定のプロセスを加味することでいくつか標準化して考えるフレームが見いだせる。それらについて解説してみよう。

まずは、複雑な意思決定プロセスだ。法人顧客の意思決定には複数のステークホルダーが関与するため、それぞれの役割、例えば購買担当者、ユーザー、経営層などを整理して理解し、影響を推測した対応が必要だ。これにより、個人の購買行動(B2C)とは異なるアプローチが求められる。

次に、リードジェネレーションとリードナーチャリングが異なる。法人営業では、興味を持った潜在顧客(リード)を育成するプロセスが個人と比較して圧倒的に長期間に及ぶ場合がある。これには、ホワイトペーパー、セミナー、ウェビナーなどを通じた情報提供も含まれるが、素材や耐久消費財を提供するメーカーにとっては、何か1つを変更するだけでも数年の歳月を要する場合もあるからだ。従い、自社商品のリードをどのように育成して、どのように維持していくかは法人特有と言っても良い。

3つ目は、法人取引の期間の長さだ。一度契約すれば継続する可能性が高く、そのためアフターサポートや信頼関係、企業が継続的に同様の商品を安定供給できるかなどが非常に重要になってくる。研修やコンサルなどを行う際も同じで、初めての新規の顧客に提案する場合は、相手の予算感や時期予算の確定前にリードを開始して、費用対効果を十分に説明した上で、相手の計画に乗せることがポイントになる。そして、初回を済ませ、期待通り、もしくはそれ以上のパフォーマンスを提供することができれば、翌年以降はエスカレーターのように連続的に採用される可能性が高くなるのだ。

カスタマイズや受難性も必要だ。法人顧客は「自社専用の解決策」を求めることが多い。興味深いのは、常に自社は特殊でとか、業界が特殊でとか話して、その具体を整理している社員が少ない。そのため、製品やサービスの仕様において、そのままでは使えないと感じていることが多いのだ。そのため、実際にカスタマイズする必要を抜きに、丁寧に柔軟に対応できる対応力がフロントには求められるのだ。

5つ目は、導入効果だ。自社の要求事項は案外と曖昧な場合が多いが、提供する際や、営業が提案する際は、常に費用効果なるものを求めて来る。法人の購買担当者の上部組織や上司に対しての説明責任、大きな購買や投資に対しては組織の株主や利害関係者に対しての説明責任が発生するからだ。導入時のイニシャルコストに加えて、ランニングコストの妥当性などを定量的に合理的に示さなければいけない。

一方で、ブランド力も無視出来ない。法人顧客は、何らな自分たちで全て解決することを望むのだが、敢えてそこを他社、外部組織に求めているのだ。つまり、その解決策の手段を持たないのだ。マニアックな仕様や商品に対しては担当者は理解していても、意思決定機関が全く認知していない場合が多い。そんな時に名も知らない企業の商品を採用するとなると、その合理性を説明するのは困難だ。この業界で1位とか、他社の採用実績などは、各固たるブランド優位性を示す根拠になるのだ。法人の購買は、個人のように感情的な選択ではなく、長期的なリスク回避が意思決定に常に影響するのだ。

法人の取組はライバルの分析は欠かせない。たとえ既に良い商品を採用していたとしても、常に担当者レベルでは成長戦略を細分化した司令がおりている。そのため新たな問題解決に常に追われているのだ。そのため、自社が提供している製品サービスのライバルに相当する企業の動向を常に把握して、その企業の商品よりも優位性が高いこと、選択した合理性を常に情報として提供することが、企業へのリテンションにつながるのだ。

最後に、法規制や倫理的な配慮は絶対だ。特に、スマフォが普及して人類総メディア化した現在、不正は許されない。そして規則や法令遵守を行っていたとしてもモラルも需要だ。新たな取組をしている組織などは、まだルールが制定されていないグレーなエリアのチャレンジが当たり前だ。その際は、倫理的な取組が判断基準になるのだ。



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