新規事業の旅153 脱東京で成長を加速する

2025年1月9日 木曜日

早嶋です。約1.9万文字。

都内には行政機関、大企業の本社機能、皇居、国立博物館や大学施設が集中しており、23区内に約956万人の人口がいる。東京と地方という言葉があるように、日本のメディアをはじめ、企業の商品開発やエンタメも東京を中心に地方に発信されている。しかしだ。その発想を捨て、それ以外のエリアでの商品開発や思想や取り組みを強化することを勧めたい。実は韓国、台湾、中国、米国郊外は、確実にそれ以外のエリアで開発された商品が受けている。そして、今後アジア30億人、そして次のアフリカ30億人の住人にも同様の可能性が考えられるのだ。つまり東京を捨てることで、超絶な事業チャンスがやってくるのだ、と言う仮説を論じてみた。

(日本型国土形成の特徴)
戦後、吉田茂は日本の戦後復興政策を指導した。軍事費を削減して、国家予算を経済インフラの復興と社会基盤整備に集中させることで、経済成長を促進させた。その恩恵は今でもあり、社会全体で均一に維持され、誰もが等しく受益できる公共的なサービスとして電気、ガス、水道、放送、郵便、通信、福祉、交通などが分け隔てなく活用できるようになった。

一方で、都内、特に東京23区内には行政機関、大企業の本社機能、皇居、国立博物館や大学施設が集中した。東京的なエリアとそれ以外のエリアに分かれている。それ以外のエリアは、鉄道沿線を皮切りに、国道沿いが栄え、昔からの商店街やアーケード街は廃れ、郊外の大規模商店街に生活基盤が揃う街並みが出来上がった。一部京都など、文化遺産や宗教法人が密集しているエリアは相続の心配が無く、結果的に文化的なエリアがそのまま残ったが、それ以外のエリアは見事にプレハブが似合う街並みと化した。代々引き継がれた文化的な建築も相続の度に売却され、気がつけば古き良き構造物が綺麗さっぱり除去されてしまった。

政府機関や文化施設が集中する東京的なエリアとそれ以外のエリアは構造的に異なっている。これは日本の国土形成の特徴の一つだと思う。本来、それ以外のエリアも東京的なエリアに迎合することなく独自性を大切にするべきだ。地域の歴史や文化、伝統的な生活様式を生かした街、戦前の昭和以前の街の姿だ。人口減少や高齢化が進む中で、地域資源の有効活用や観光産業の振興が地方の持続可能性を高める重要な要素という指摘はあるが実質的な取組は極めて弱い。

(日本型と同様の国・エリア)
上記で指摘した特徴を持つ国を日本型とした場合、同様の傾向で経済成長をした国を考えてみよう。その前に再度、日本型の特徴を以下の4つのポイントで定義する。
– 均一なインフラ整備:全国的にインフラが整備され、都市と地方の格差は縮小している。
– 画一的な街並み:商業施設や街の構造がどの地域も似通っており、独自性が薄れている。
– 歴史や文化の喪失:経済合理性や相続問題で古いものが失われている。
– 地方の衰退:結果的に都市部に経済や人口が集中し、2極化が進む。
このポイントに基づいて、日本型に似た国(エリア)を考えると、韓国、台湾、米国の郊外型の都市、中国の特定の地方都市などが相当すると思う。

韓国も、小さな国土で全国的にインフラが行き届いており、地方と都市の格差は少ない。高速鉄道(KTX)の整備や光ファイバー通信の普及など、日本と似た取り組みがある。韓国の地方都市には、日本と同じように、ショッピングモールや大規模商業施設が並ぶ国道沿いの開発が見られ、マンション群やチェーン店など、どこに行っても同じような景観が広がる点も共通している。そして経済成長期に都市開発が優先され、多くの伝統的な街並みが失われた。

台湾も、高速鉄道(台湾高鉄)や地方都市のインフラ整備により、地方と都市の差が小さくなっている。大都市以外では、地方都市にチェーン店や商業施設が進出し、昔ながらの街並みが薄れてきている。郊外にはショッピングモールが多く、日本型に近い発展をしている。ただ、台北は政治・経済・文化の中心であり、他の都市とは異なる個性を持っている。ここは東京的なエリアに似ている。

エリアになるが、米国の郊外型都市は近い。アメリカは都市と郊外、地方を結ぶインフラが整っており、どの地域も基本的な生活の利便性が確保されている。アメリカの郊外型都市には、チェーン店やショッピングモールが多く、どの都市も似たような雰囲気だ。これは日本型と似た特徴とも言える。ただし、アメリカには移民の影響で地域ごとの文化的独自性が色濃く残り、この点においては、日本型ほど完全な画一化は見られない。

中国でも急速な都市化により、地方のインフラ整備が進んでいる。特に高速鉄道網や空港が地方都市を結び、日本型の均質な国を目指している面があるように思える。中国は、社会主義の特徴から開発計画が国家主導で行われる。そのため、多くの地方都市が似たような構造や街並みになるっているのだろう。結果的に似たような街並みではなく、はじめから計画的に構造化された点は日本型とは異なる。ただ、経済発展の過程で古い街並みや文化財が失われるケースは多く、日本型と似た課題を抱えているようだ。

整理してみると、これらの国(エリア)に共通するのは、均質化による生活の利便性向上と、文化的多様性の喪失だ。ただ、例えばアメリカや中国のような国では、都市計画や多様性の受け入れ方が異なるため、日本型とは少し異なる発展モデルを辿っている。その意味で、日本型に最も近いのは韓国や台湾のような、国土が小さく均質化が進んだ国々だと言える。

(日本型と異なる国・エリア)
今度は、日本型と対局の国(エリア)を考えて見よう。生活の利便性が均一ではなく、文化的多様性を重視し、地方ごとに独自の成長や文化が持続している場所だ。そのように考えると、イタリア、スイス、インド、米国の地方都市中心のエリア、スペインなどが相当すると思う。

イタリアは、地域ごとに独自の文化、食、言語(方言)、建築スタイルがあり、それが維持されている。たとえば、北部はアルプス地方の影響を受けた文化や産業が発展しており、南部は地中海の文化や農業中心の経済が色濃く残っている。トスカーナ地方(フィレンツェ)やヴェネト地方(ヴェネツィア)は、それぞれの観光資源や歴史文化を活用し、経済成長を遂げている。一方で、地方ごとにインフラの整備状況や生活の利便性には差があるため、画一化とは対照的だ。

スイスは、カントン(州)が強い自治権を持ち、それぞれの地域で異なる言語(ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語)が話されている。この多様性が地方のアイデンティティを支えていると思う。そしてスイスの各地方は独自の産業や文化を育てている。例えば、時計産業で有名なジュラ地方や観光業が中心のツェルマット、金融業で栄えるチューリッヒなど、地域ごとに特色があるのだ。利便性については、地方間で大きく差がある。山間部の小さな村では、都市部と比べてアクセスが制限されることが多いが、その分、地元の伝統や生活様式が色濃く残っている。

インドは、地域ごとに言語、宗教、食文化、建築様式が大きく異なる。北部のパンジャブ地方と南部のケーララ地方では生活様式が全く異なるなど、多様性が非常に豊かだ。そしてテクノロジー産業で成長するバンガロールや、観光と宗教的遺産で栄えるバラナシ、経済と映画産業が盛んなムンバイなど、それぞれの地域が独自の発展を遂げている。利便性も非均質だ。都市部と農村部で生活の利便性やインフラの整備状況に大きな格差がある。しかし、それが地方の伝統的な文化や暮らしを保つ要因にもなっているのだ。

アメリカは、州ごとに法律、教育、経済が異なり、地方独自の文化が根付いている。ルイジアナ州のケイジャン文化やテキサス州のカウボーイ文化など、地域ごとの特色が明確だ。ワイン生産で有名なカリフォルニアのナパバレーや、音楽で知られるナッシュビル、テクノロジーハブであるシリコンバレーなど、地域ごとに経済の中心が異なる。そして国土が広いこともあるが、都市部と地方での公共交通機関やインフラに大きな違いがあり、地域ごとの個性が維持されている。

スペインは、カタルーニャ、バスク、アンダルシアなどの自治州が強い文化的アイデンティティを持っている。それぞれの州が独自の言語や伝統を保持しており、中央集権的ではない。バルセロナ(カタルーニャ)は観光や芸術の中心地であり、マドリード(首都)は政治・経済の中枢だが、ガリシア地方やアンダルシア地方も独自の文化や経済活動を続けている。そして、スペインでも都市部と地方のインフラやサービスには差があり、地方の独自性を維持する要因となっている。

整理すると、これらの国やエリアは、均質化を目指すのではなく、多様性を尊重し、地域ごとの独自性を維持・発展させている点で、日本型と対照的だ。これには歴史的背景や地理的条件、文化的価値観の違いが影響してきたのだろう。特にヨーロッパの国々やインドのような文化的多様性が顕著な場所は、日本型の対局に位置する例としてわかりやす。

(言語の影響と偏った情報)
日本型と異なる国・エリアの事例から、文化の形成、独自の成長を後押しする源泉に言語が最も強くでているのでは無いかと思う。日本にも標準語と方言があり、テレビやラジオは基本的に標準語だ。そして、書いていて気がついたのだが、テレビ情報の9割以上が東京的なエリア、つまり東京23区の限られたエリアで起きたことや、そのエリアに暮らしている人々が創作した情報を流している。地方は、その情報に一種のあこがれを持ち、結果的に似たような街並み、それ以外のエリアを形成したのではないだろうか。

日本では、標準語の普及が教育やメディアを通じて全国的に進んでいる。これにより、地方独自の方言や文化が時代遅れや恥ずかしいとされる傾向が生み出された。特にテレビ番組では、標準語が当たり前で、方言はお笑いや地方色として扱われることが多いのだ。ことばは、文化を支える柱の一つだ。標準語が広がる中で、地方の文化や価値観が均一化し、結果として東京的な生活スタイルや価値観が全国に広がったのではないだろうか。これが地方都市が東京を模倣する要因となった可能性があると思う。さらに、方言や地方独自の表現がメディアの中心から排除されることで、地方文化がマイナー化し、地方の人々自身が自分たちの文化を低く評価するようになった可能性も考えられる。東京的なエリアの住民が意図せずに日本中に言語統制を行ったのだ。

地上波テレビでは、ニュースやバラエティ番組の多くが東京23区を中心とした情報で占められている。政治、経済、文化、エンタメ、経済の多くが東京的なエリアを発信源とするため、地方から見ると東京が日本の中心として過剰に映る仕組みになってしまったのだ。それ以外のエリアでは、テレビを通じて東京的なエリアのライフスタイルや流行が正しい、新しい、かっこいいとご認識されたのだ。その結果、地方の人々が東京に憧れを抱いてしまっている。テレビや大手メディアが東京的なエリアの価値観を全国に押し広げ、地方独自の価値観や文化を埋没させてしまった。それ以外のエリアは、「東京的なエリアと同じでなければならない」という暗黙のプレッシャーを受け続けたのだ。

日本型の対局であるスイス、スペイン、インドは言語がそもそも別で、多様性の維持に貢献したとも考えることができる。スイスは、公用語が4つある。ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語だ。そして見事に、地方の文化が言語とともに残っているのだ。スペインは、カタルーニャ語やバスク語などの地域言語がメディアや教育で使われており、地方独自の文化が保持されている。そしてインドもだ。州ごとに異なる言語が使われており、地域メディアが活発だ。これが地方文化の多様性を支えてきたのだ。

それ以外のエリアの改善の可能性は、地方メディアの強化、方言や地方文化の再評価、地方自治の強化と分権化といえるかもしれない。地方のテレビ局や新聞が地方独自の文化やニュースをより積極的に発信することで、地方の人々が自分たちの文化に誇りを持てる環境を作ることが重要だ。方言や地域文化を魅力として捉え直し、観光や教育の中で積極的に活用するのだ。地方のニュースは、標準語を亜流として、地元の方言での伝え方を本流にするのだ。各地域が独自のアイデンティティを育て、それを全国に発信するのだ。地方の文化や経済が独自に発展する可能性は存分にあるのだ。

(統計的な視点)
日本は、東京23区および東京都全体が総人口に占める割合が他国と比べて高い。特に東京への人口集中が顕著だ。一方、スイス、インド、イタリアでは、首都の人口割合が比較的低く、主要都市に人口が分散している。この人口分布の違いは、各国の歴史、経済、文化、行政の構造に起因し、都市計画や地域開発の方針にも影響を与えている。日本の東京一極集中は、経済活動や情報発信の中心が東京的なエリアに集約されていることが背景で、地方との格差や均質化の問題を指摘した。一方、他国は複数の都市がそれぞれの特色を持ち、文化的多様性や地域独自の発展を促進しているのだ。

日本の総人口は23年時点で1億2500万人。東京23区の人口は、23年時点で約956万人で全体の7.6%。東京都全体で約1,400万人なので11.2%。

20年時点でスイスの総人口は870万人。首都ベルンの人口は13.3万人で全体の1.5%。チューリッヒ43万人、ジュネーブ20万人、バーゼル18万人と他都市に人口は分散している。

21年時点でのインドの総人口は13億9340万人。首都デリーの人口は1930万人で総人口の1.4%。ムンバイが2000万人、コルカタ1490万人、バンガロール1270万人と複数の大都市に人口が分散している。

21年時点でのイタリアの総人口は5920万人。首都ローマの人口は287万人で総人口の4.8%。ミラノ136万人、ナポリ96万人、トリノ87万人とやはり分散している。

次に、国内の人口分布を確認してみよ。2025年1月現在で、日本の市町村の数は、790市、740町、180村で系1750市町村ある。これでも2000年代初頭の平成の大合併によって3200以上あった市町村は減少した。人口が1億2500万人なので、1750で割ると、6.8万人。実際、自治体(市町村)のボリュームゾーンは1万人から5万人の規模が中心だ。

100万人以上の政令指定都市の一部は全体の1%以下で、札幌、横浜、大阪、名古屋、福岡など限られている。30万から100万人の大規模都市に属する自治体は全体で5%から6%程度で、自治体数は90から100程度だ。10万人から30万人の地方都市は全体の15%から20%程度で自治体数250から300程度だ。他の約半数の自治体は人口が1万から10万人で800から850程度の自治体が属す。そして、1万人以下の自治体が350から400あり残りの2割強を占めている。

(自家用車の視点)
日本の車の登録台数は現在、7,800万台を超えており、一貫して増加している(2023年時点)。この背景は、それ以外のエリアを中心に車が主な移動手段であるこだ。東京的なエリアの東京23区をはじめとする大都市圏は鉄道やバス網が発達しており、住民の多くが公共交通を利用している。一方で、それ以外のエリアでは鉄道やバスの運行本数が少なく、今でも車が不可欠な移動手段となっている。車の依存が強まる傾向は今後も考えられ、車の登録者台数の増加につながっているのだ。

公共交通が発達した都市部では、移動が効率的で安価だ。従い、個人の車所有率が低い。この環境は、徒歩や自転車を含むコンパクトシティの生活文化を生み、公共の場での行動規範やエチケットの形成に寄与している。しかし、これも東京的エリアの縮図で、実際のそれ以外のエリアは自家用車の依存が依然として高い。常に車が生活の中心で、車が移動の自由と生活の基盤を支えてる。車は、距離の制約を小さくして、買い物やレジャーの範囲を広げる。それ以外のエリアは、車中心のライフスタイルが文化として根付いているのだ。

自家用車の運行は自分の都合で決めることが出来る。それ故に、時間に関しての考え方や縛りが東京的エリアとそれ以外のエリアでは違いがある。公共機関での移動が前提の東京的エリアは、時間に正確で効率的な生活スタイルが可能だ。結果、都市部特有の効率重視と計画的な行動という文化を形成した。都内で営業に同行したり、都内在住の人と一緒に移動するとかなり際どい時間で正確に電車を乗り継ぐ。福岡くんだりの私は余裕を持って現地にいないとドキドキする。そう、それ以外のエリアは車中心で自分の都合で動くことができるので一定の時間の融通が利くのだ。のんびりしたライフスタイルや自分のペースで動く文化がある。ただ、少し街なかでの移動の場合は、駐車場の確保や渋滞を予測してやはり余裕を持った移動が当たり前になる。

この弊害は、ナショナルブランドの開店時間にみることができる。それ以外のエリアにある大型ショッピングモールも、郊外や国道沿いに隣接するナショナルブランドのチェーン店も、皆東京的エリアで生活するサラリーマンが店舗開発している。そのため開店時間が1時間程度、感覚的に遅いのだ。東京的エリアは、その場所に行くまでに1時間は猶予が必要だろう。しかし、それ以外のエリアは、すぐに自分の車でいける距離にあるのだ。9時に開ければよいのに、東京的エリアに模倣して10時とか11時に開店する。車と公共交通の感覚的な違いを理解せずに、東京的エリアの勘違いが日本中に観察できるのだ。

公共交通圏は、徒歩圏内に便利な施設が集まる傾向があり、生活拠点が密集する。一方、車中心の地域では、郊外型ショッピングモールやロードサイド店舗が発展し、住居と施設が離れるため、生活範囲が広くなる。公共交通を利用する都市部は、駅やバス停などの公共の場が自然に人々の交流の場となり、車中心の地方は、家族単位や狭いコミュニティ内でのつながりが重視される。都市部では公共交通を利用することで、CO₂削減や環境への配慮が自然と生活に根付いてると思っている。しかし地方は車の利用が基本故に、環境意識が都市部ほど高くない。反省しなければならないが、一方でそうも言ってられないのだ。

(東京的エリア中心の考え方の過ち)
車の議論になると、地方での車依存を減らし、文化的な多様性を活かすために地方の公共交通の再整備、地域密着の都市計画、文化的なアプローチが重要だ。とおそらく東京的なエリアに本店や事務所を抱える政治家や官僚は考えてしまうだろう。

地方でも利用しやすい公共交通(小型バス、オンデマンド交通など)を導入し、車に代わる移動手段を提供する。公共交通の利用を促進するコンパクトシティを導入して、地方でも歩いて生活できるエリアを整備するのだ。そして、車を単なる移動手段としてだけでなく、シェアカーやEV化を進めることで、環境意識や地域文化との調和を図る等云々と。でも違うと思うのだ。それ以外のエリアに実際に住んでいる視点から見ると。

日本型の場合、例えば東京的なエリアでの暮らしをしている約1,000万人とそれ以外のエリアに暮らしている残りの人の自己肯定感や幸せを感じている度合いは、地方が高いのでは無いかと思うからだ。全てを東京的なエリアの基準や発想で考えるのではなく、むしろそれ以外のエリアを見直すことに取り組んだほうが、遥かに効率的で実現的だと思うのだ。既にあるそれ以外のエリアのインフラをベースにした街作りを考えるのだ。当たり前だが、人口が減少してエリアに点在し疎になる場所で公共交通を整備したとて初めから赤字で投資なんて回収できるはずがない。それ以外のエリアにコンパクトシティを提唱しても、そもそも車で移動して広い住環境に慣れている人が密を好むのか?を考えてほしいのだ。

それ以外のエリアの暮らしは、幸福度や自己肯定感が東京的なエリアの人々よりも実は高いのでは無いかと思う。地方には自然が身近にあり、広い住環境や四季の変化を感じながら生活することで、精神的な安らぎが得られるのだ。東京的なエリアの人は、アウトドアブームに乗っかり、時間をかけて田舎に出向き、お金をわざわざ払って、人が混雑しているキャンプ場に行く人種だ。何でもやってる感を演出しなければならない惨めな人種なのだ。

コミュニティの強さも、それ以外のエリアは強い。東京的なエリアのそれと比較して人間関係が密だ。人間関係は常に人の心を惑わす原因の一つではあるが、東京砂漠という表現は地方には無い。ただ、あまりにも密すぎて嫌になるときもあるかもしれないが、最近は高齢化が進んで、そんなに皆におせっかいをやく人種も少なくなってきた。人間関係に対しては東京的エリアくらいの冷めた感じのほうが良いという人もいるかも知れない。

それから生活コストが安く、一般に野菜や地元の産物が新鮮な状態で手に入り安い。東京的エリアは、一部の不動産ディベロッパーに騙されて、どこもかしこもバブっている。土地が高いのだ。猫の額のような空間に高い住居費を払わなければならない。万が一、車を所有しようと思ったら、駐車場は地方の家賃と同水準。土地が高ければ、それに乗じて全てが高くなる。人件費も材料費も何から何まで高い。したがって、対して美味しいわけでも、清潔なわけでも、サービスが良いわけでも無いのに物価が高いのだ。それ以外のエリアは少なくとも東京的エリアと比較すると経済的なストレスは軽減されている。

このように考えると、やはり地方バンザイ、その他のエリア、すんげーなのだ。もっとその他のエリアにいる人は、そこに居る、その土地を保有しいてる特権を活用して持続可能な未来永劫続く街作りをすべきなのだ。そのポテンシャルも十分にある。

それ以外のエリアの人は、東京的なエリアに数ヶ月住んで体験すべきだ。東京に変な憧れを持たないで東京を直視するために。すると、幸せの青い鳥同様に、いまのおらが村の良さがどんどん可視化されてくるだろう。今居るあなたの環境、自然、食文化、人間関係の良さ。それら全てが観光資源なのだ。東京的エリアの人々やインバウンドの人々にもっと発信しよう。東京的エリアに無い幸せが地方にはゴロゴロ転がっている。すると、東京的なエリアから、地方への移住やJターンやUターンがもっと増えていくことだろう。或いは、二拠点生活を促進させるのだ。

街は既存のインフラをベースにする。そう、車社会を前提とし、効率的な道路整備や駐車場の確保に重点を置いたまちづくりを進めるのだ。グーグルのウェイモが国内でレベル4の自動運転の取り組みをスタートするが、完全に無人で自動運転の状態になるまで、日本はまだ先だろう。それまでは、やはり所有者が車の運転手になるのだ。したがって、車を軸にした地方独自のライフスタイルを尊重した形でのインフラ整備がポイントになる。

それから地方をもっと特徴を付けて分散化させると良いと思う。今の地方自治体の発想はミニ東京をおらが村に作ることだ。何度も言うがこれは不可能だ。諦めよう。地方全体を都市化するのではなく、小さな拠点(地域の中心となる商業や公共施設)を点在させることで、生活圏を適度に広げつつ利便性を向上させるのがポイントだ。結果、人口密度の低さを保ちながら効率的な生活が可能になるのだ。その際、それぞれの拠点の産業を特定すると良いと思う。総花的な中途半端な取り組みをやめ、戦略的に地域資源を絞り込み、農業、観光業、地場産業を集中して支援するのだ。それぞれの拠点がクラスター化するとそれ以外のエリアにも違いが出てくるのだ。

IT化の発展と東京的エリアの渾身的なプロパガンダのお陰で、情報の非対称性が薄れて来つつあるそれ以外のエリア。地方にも東京の情報があふれるようになった。商品はアマゾンでクリックすると購入できるし、有名ブランド・ショップはEコマースに力を入れているので物理的な立地の優位性は薄れている。従い、実際に東京に行った時の衝撃は昔よりも薄れて来たのでは無いかと思う。もちろん、物質的な構造物はインパクト有り有りだが、情報として切り出した場合の違いの非対称性は薄れてきているのだ。

東京的なエリアでの暮らしとそれ以外のエリアの暮らし。当然に一長一短はある。が、現代において、それ以外のエリアの特徴である生活コストの低さと自由度の高さとゆとりの3点については、心理的な心の豊かさの観点から東京的なエリアの人々から注目されているのだ。そのためにも地方は東京化してはいけない。地方の良さを維持しつつ、都市部とつながる仕組みを作ることがポイントなのだ。

(生活コストの比較)
少し視点を変えて、どのくらい生活コストの違いが出るかをシミュレーションした。東京的なエリアとそれ以外のエリア、完全に2つに分けること自体難しいが敢えて2つのペルソナ像を考える。どちらとも4人家族にしよう。両親は共に40代で子供はどちらも小学生。
共通の前提
– R4年の平均所得は560万、可処分所得は440万。

東京的なエリアの家族の特徴:
– 子供は小学生から習い事三昧。塾と他の習い事に平日も休日も時間とお金を費やす。自主的に遊ぶ機会と時間が少ない。
– 親は共働き。子供は保育園に通った。小さい頃から家族と一緒に居る時間が少ないので子供の自立意識が高い。
– 休日や休みに出かける場合は、移動時間がかかり、車の場合は渋滞に巻き込まれる。公園などは充実しているが混雑しており人工的な場合が多い。
– 平均所得は全国より高めで700万。可処分所得は550万。
– 平日の親は、労働時間が共に8時間、通勤は往復2時間、家事・育児は2時間、自由は2時間、睡眠は2時間。
– 平日の子供は、学校6時間、塾・習い事2時間、宿題・勉強1.5時間、自由2.5時間、睡眠8時間。
– 休日の親は、家事・育児3時間、家族で外出4時間(移動含む)、自由5時間、睡眠8時間。
– 休日の子供は、家族で外出4時間(移動含む)、宿題・勉強1時間、自由7時間、睡眠8時間。

それ以外のエリアの家族の特徴:
– やや東京的な情報を信じて教育しているので塾にも通うが徒歩圏内。基本学校から帰るとそのまま小学校で再び遊ぶ。
– 共働きも多いが収入は夫が主で、妻はパートレベル。子供が帰る頃は母親が家に居る割合が高い。
– 週末は子供のイベントごとや家族で過ごす。車で30分から1時間も移動すると自然があり、渋滞に巻き込まれることは少ない。のんびり過ごせる環境がある。
– 平均所得は全国平均で500万。可処分所得は400万。
– 平日の親は、労働時間8時間、通勤往復1時間(車利用)、家事・育児2.5時間、自由2.5時間、睡眠8時間。
– 平日の子供は、学校6時間、塾・習い事1.5時間(徒歩)、自由3時間、睡眠8時間。
– 休日の親は、家事・育児3時間、家族で外出5時間(自然や公園)、自由4時間、睡眠8時間。
– 休日の子供は、家族で外出5時間(自然や公園)、宿題・勉強1時間、自由6時間、睡眠8時間。

大雑把だが、雰囲気は出ている。東京的なエリアは平均所得は高いが、生活費や教育費が高額になり、可処分所得は地方と比較しても大差が無い、もしくは低くなる可能性がある。時間に関しては、東京的なエリアは通勤や通学、習い事の移動に時間をかけており、自由に過ごす時間を圧迫する。それ以外のエリアでは移動時間が少なく、その時間を家族で過ごす時間や自由な時間に充てている。どちらの質が高いかは嗜好的だが、自然や家族と過ごす時間がそれ以外のエリアでは圧倒的に多いのだ。

(東京的なエリア視点の課題と活用)
平均で捉えるのは良くない。上記のペルソナも超大雑把だ。それらを理解した上で、それでも日本の企画部は東京的なエリアの住民が権利を持っている。特に東京23区内には行政機関、大企業の本社機能、皇居、国立博物館や大学施設が集中している。人口は、総人口の7.6%だ。ここの住民が日本全体をプロジェクションして販売する商品を企画している。その際に、それ以外のエリアの住民の実情を理解研究して商品企画や開発、街作りや運営、政策方針の議論をしているのだろうかと疑問が出るのだ。特に政治家とB2C企業はもっとそれ以外のエリアを研究対象としても良いのでは無いだろうか。

企画する場合、それ以外のエリアの生活実態の理解、東京的エリアの特殊性の理解、そして地方の購買力大きさを理解することだ。東京的なエリアの生活は、地方の大半の住民とは異なる環境や価値観で成り立っているのだ。それ以外のエリアの広い住環境、車中心の生活、自然との共生が日常といった特性を無視して企画された商品は、地方に響きづらいと思うのだ。それから東京的なエリアでは、家が狭く、公共交通が発達し、生活のテンポが速いといった特殊な環境が標準とされている。こうした条件に合わせた商品は地方ではニーズが低い場合もあると思うのだ。そして地方の住宅費の経済性、可処分所得が相対的に高いことから、地方住民は実は非常に重要な消費者層なのだ。地方にフィットした商品を開発することで、より大きな市場を獲得できる可能性があるのだ。

(トライアルカンパニー)
福岡の小売業でトライアルカンパニーは、それ以外のエリアを重視したビジネス戦略を展開し、独自のIT開発体制で急性長している。10年前の成績は売上高3300億円、経常利益30億円だった。直近24年は売上高7179億円、経常利益は約200億円の規模まで成長している。10年で2.15倍の売上、経常利益は約6.5倍だ。

トライアルは大都市の中心部ではなく、地方都市を主要なターゲットにした事業展開だ。地方の生活者に密着した価格設定や品揃えを提供し、地域のニーズに応じたサービスを展開している。本社のある福岡に開発拠点を構え、現場から近い視点でデータ活用や店舗運営を支えるITインフラの開発を進めている。福岡に根ざした企業であることを活かし、地方都市に特化したシステムや物流網を構築しているの。

IT関連技術はすべて中国の自社開発チームで設計・運用している。この仕組みにより、他社依存ではなく、独自のスピード感でシステム改良や新技術の導入が可能だ。特にAIやデータ解析を活用した効率的な店舗運営、在庫管理、顧客分析に注力している。一般的な大手小売業が東京的なエリアの中央市場を重視する一方で、トライアルは地方を基盤に全国展開を進めている。大都市と競争することなく、地域での地位を築くことに成功している。

トライアルの出店ルール等、人口や経済規模に基づく具体的な公式ガイドラインは公表されていない。しかし、いくつかのポイントは出店した店舗とその運営を見ると読み取ることができる。

まず、確実にそれ以外のエリアを重視している。都市部ほどの高い人口密度がなくても、周辺地域を含めて一定の購買層が見込めるエリアだ。人口密度が低い地域でも、大型駐車場を備えた店舗を構えることで広範囲からの集客を狙うのだ。更に、生活圏での競争環境に強い。トライアルは既存の競合が少ない地域での出店を優先している傾向がみえる。大手スーパーやディスカウントストアが少ない地方や郊外エリアをターゲットにしているのだ。周辺の商圏が競争過多ではない場合、未開拓のエリアにおいて生活インフラとしての役割を果たせるのだ。

トライアルはスーパーセンター型の大型店舗を基本としているが、地域の特性に応じて規模を調整する柔軟な戦略を採用する。大型の土地が確保できる地域ではフルスケールの店舗を建設し、より密な商品ラインナップを展開する。小規模な敷地面積に特化した店舗では、食品や日用品など日常生活に必要な商品を中心に取り扱う。大型店舗と比べて品揃えは限定的だが、生活必需品を低価格で提供する点は共通だ。大型店舗が設置されにくい地方の過疎地域や交通の便が悪いエリアでは、小規模店舗を展開し、地域住民の利便性を確保しているのだ。

選定についても秀逸だ。地域の購買力や消費者ニーズを分析し、低価格戦略が支持されるエリアを選定する。特に、物価や所得水準が全国平均より低いエリアでも安定した需要が見込める地域に出店を加速している。地方における店舗展開を支えるために、効率的な物流ネットワークをグループで構築し、新たに出店するエリアは、既存の物流拠点からアクセスしやすい地域が優先される可能性もあると思う。そして、常に地域活性化の一環として、地方自治体との協力関係を築くことで、地域に根ざした店舗運営を可能にしているのだ。

(アイリスオーヤマ)
同社は宮城県仙台市に本社を構え、生活者のリアルなニーズに応える製品開発を行い、特に地方での生活に配慮した企画を重視している。同社は、広い住環境に適した収納用品や家電製品など、地方特有の生活スタイルに合った製品を展開しており、顧客の暮らしをより便利で快適にすることを目指している。

アイリスオーヤマは非上場企業なので詳細な財務情報は公開されていない。直近23年の売上高は7540億円、経常利益は320億。2020年の売上は6900億円だ。アイリスオーヤマのWebサイトを見ると2018年から5年間で平均成長8%を超えていると報告がある。トライアル同様に地方に重きをおいた成長企業と言える。

アイリスオーヤマの販売チャネルは多岐にわたる。まずは卸販売だ。家電量販店、ホームセンター、スーパーなどの大手小売業者を通じて商品を提供している。アイリスオーヤマの製品は、全国の主要な小売店舗で購入可能で、卸販売を基盤として広く流通網を展開し、多くの消費者にリーチしている。一方で、直販サイトも運営している。アイリスプラザという直販サイトは、家庭用品や家電製品を中心に取り扱っている。更に、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどの主要なECプラットフォームでも商品を販売している。自社運営のオンラインストアだけでなく、外部のECプラットフォームを通じた販売を強化し、オンラインでのプレゼンスを高めているのだ。

アイリスオーヤマの強みは商品の企画開発力だと思う。常に真のユーザーインの開発で生活者目線での製品企画・開発を行い、実際のニーズに応える製品を作り出している。市場調査やアンケートだけでなく、社員が消費者となり、実際の生活シーンを観察することで新製品を企画している。開発体制もすごい。スピード重視の開発体制で、年間1,000点以上の新商品を発売する。従来型の家電メーカーと比較して、開発から市場投入までのリードタイムが短いのも特徴だ。特にトレンドや市場の変化に迅速で、新製品をタイムリーに投入する能力を持つ。

製品の多くが自社で開発・製造で、品質管理が徹底されている。プラスチック製品の成型技術やLED照明の開発など、多くの分野で自社の技術力を活用し、近年の家電製品やIoT製品の分野でも着実に成長している。技術の背景には、自社開発だけでなく、他社とのコラボレーションや技術提携を積極的に行うなどオープンイノベーションの活用がうまい。海外企業の技術を取り入れながら、日本市場向けに最適化した製品を提供することや、韓国や中国の工場と連携してコスト効率と技術力を両立するなどだ。

アイリスオーヤマの強みの厳正は地方にあることだと思う。製品開発も、地方都市での生活に適した製品(広い住環境に対応する収納用品など)が得意だ。それは、地方拠点で働く社員の声や意見が、製品開発に活かされているからだ。本社が仙台にあり、宮城をはじめとする地方の社員が実際にその地域の生活環境に基づいた視点を自然と提供しているのだ。地域に住む社員が、自身の生活や周囲のニーズをもとに企画提案を行う仕組みが開発企画力の源泉なのだ。

(ニトリ)
ニトリは、日本を代表する家具・インテリア用品を扱う小売業で、設計から製造、物流、販売までを一貫して行う製造物流小売業のビジネスモデルを特徴とする。ニトリは、商品の企画から製造、物流、販売までを垂直統合した独自のビジネスモデルを採用している。商品企画・設計は、自社で行い、トレンドや顧客ニーズを反映している。製造は海外拠点(主に中国や東南アジア)を活用したコスト効率の良い製造だ。物流は、自社物流網を構築し、迅速かつ効率的な供給を実現している。そして販売は、国内外の店舗やECサイトで販売し、価格競争力と利便性を提供している。

「お、ねんだん以上」ニトリの成績は、2024年時点で約800店舗(海外約100店舗)、売上高8958億円、経常利益1324億円だ。10年前の2014年は売上高3876億円、経常利益635億を見れば成長が著しい。

ニトリは、海外展開に積極的で、アジアや米国市場で店舗を展開している。地方でのニーズを満たす商品ラインが、そのまま海外郊外や地方の生活スタイルに適応しているのだ。ニトリの海外展開における成功要因の一つは、地方市場で培ったニーズに応じた商品開発力だ。それが、海外の郊外や地方生活にも適応できている。このような商品ラインは、シンプルで実用性が高く、価格競争力を持つため、特に新興国や北米郊外市場のようにコストパフォーマンスが重視されるエリアで支持されている。

ニトリは「お、ねだん以上。」という価値提案を海外市場にも適用し、現地の生活スタイルに合わせた商品展開や店舗設計を行うことで、消費者の心をつかんでいる。アジア市場では、都市部と地方の消費スタイルの差を捉えた柔軟な商品展開が特徴であり、米国市場では、日本の細やかな収納アイデアや機能性が新たな価値として受け入れられている。ニトリのグローバル戦略は、現地の生活文化に寄り添いながら、日本国内でのノウハウを活用して競争力を発揮する点にある。

ニトリの成長の源泉も開発にあると思う。そして国内の開発拠点は札幌だ。ニトリの創業地であり、本社機能を持つ重要な拠点だ。商品企画や開発の中心地として、多くのプロジェクトがここで進行する。

海外の開発拠点は深圳などにある。主に商品の生産に関わるサプライチェーン拠点として機能し、製造パートナーとの連携を深め、品質管理や商品開発を行っている。東南アジアはベトナム、インドネシアなどで、生産とともに素材調達や製造技術の研究を進める拠点だ。コストパフォーマンスに優れた商品開発に寄与しているようだ。そして、北米は米国市場の特性に合わせた商品の研究と開発を行っている。

ニトリは、商品開発から製造、物流、販売までを一貫して管理する製造物流小売業のビジネスモデルだ。商品開発のプロセスでは、現地での市場調査を重視し、地域ごとに最適化されたデザインや機能を商品に反映。これらの拠点が、ニトリのグローバル展開を支える基盤として重要な役割を果たしているのだ。

(地方拠点のメリットとグローバル展開)
B2Cメーカーは、地方に商品企画やマーケティング拠点を移し、現地の生活実態や消費者行動を徹底的に研究するべきだと思う。そして単にデータで理解するのではなく、究極のエスノグラフィの手法で自分がそれ以外のエリアの住人になることで、インサイトを研ぎ澄ませるのだ。事業の低迷を回復したいのであれば東京的エリアとおさらばして、それ以外のエリアに住むモニター家庭を定期的に調査し、生活習慣や商品利用状況をデータとして収集する一方で、自分のそれ以外の生活実態を加味するのだ。実態に基づく商品企画が可能になるとは当然だろう。

もちろん、デジタル技術の活用は当然だ。それ以外のエリアは多数ある。地方でのリアルな生活を観察しつつ、ビッグデータやAIを活用して地方消費者の潜在ニーズを分析し、新商品開発に活かすのは必須だ。商品開発時には、地方特有の文化やライフスタイルを尊重し、それを魅力として商品に取り入れるべきなのだ。

そして、ここからは仮説だ。地方発で成功している企業や商品のモデルは、海外展開においても非常に強いポテンシャルを持つのだ。特に、地方に開発拠点を持つ企業が企画・販売している商品がインバウンド需要で注目されている現象は、地方のニーズに適応した商品がグローバル市場でも評価される可能性を示唆しているのだ。

地方の生活者に寄り添った商品の特性(コストパフォーマンス、実用性、柔軟性)は、都市化が進んでいない地域や郊外の生活にマッチする傾向がある。地方特有の課題(広い住環境、車社会、急激な少人数家庭への移行など)を解決する商品は、日本国内だけでなく、似たような生活環境を持つ海外市場でもニーズが高い可能性があるのだ。

日本型の国(エリア)で考察した台湾、韓国、中国の地方や米国の郊外は、日本の地方と似た生活スタイルや環境が多く、地方発の商品が適応しやすい市場と考えることができる。台湾や韓国はグローバルでは規模は小さいが、出だしの国として実験すると良い。これらの国は、地方での生活においても質の高い商品を求める意識が高く、日本製品への信頼が厚い。中国の地方都市や農村部では、実用性が高く価格も手頃な商品が受け入れられる可能性が高い。そして米国の郊外では、広い住環境やDIY文化に対応した商品が求められる。地方発の商品開発は適応性が高いのだ。

インバウンド需要の研究は案外需要だ。インバウンドが有難がって購買している商品は、安いか、その国(エリア)には流通していない概念の商品なのだ。そのような視点でみてみると、インバウンドが地方のスーパーで大量に購入している商品は、実用性、独自性、高品質を兼ね備えたものが多い。これらは、日本国内の地方生活で生まれた知見が商品に反映されている証拠なのだ。

そのように考えると、地方発の商品がグローバル市場でも評価されるポイントは、価格競争力、実用性と信頼性、デザイン性となる。価格競争力は、地方の視点で効率的に設計・製造された商品なので輸出してマージンを乗せてもなお競争力が高いはずだ。実用性と信頼性は、日本の地方で成功した実績が、品質への信頼を支えることになる。そして、デザイン性は、日本特有のシンプルで実用的なデザインが良いのだ。ここもエリアに迎合することなく、そのままのパッケージやデザインで勝負しよう。グローバル市場でも受け入れられる傾向があるのだ。

B2Cメーカーは、東京的なエリアの思考を削除するのだ。それ以外のエリアの思考で戦うのだ。地方での成功は、国内の売上を牽引するばかりか、海外展開の可能性を高める重要なステップとなり得るのだ。特に、台湾、韓国、中国、米国郊外といった日本型の生活スタイルが親和性のある市場では、地方発の商品がそのまま受け入れられる可能性が高い。地方に根ざした企業が持つ強みを生かし、地域特性に応じた商品開発とグローバル戦略を組み合わせることで、さらなる成長が期待できるのだ。地方での成功モデルは、日本国内だけでなく、世界の地方や郊外へと広がる大きなチャンスを秘めている。

(さらなる可能性)
アジアとアフリカは今後の世界経済における成長の鍵を握る地域だ。これらの地域が日本型の街づくりに近い形で発展する可能性は現時点では非常に高いと考えられる。

まずはアジア30億人だ。アジアは既に世界経済の中心となりつつあり、中国、インド、ASEAN諸国がその成長を牽引している。この地域は人口ボーナスを享受しており、中間所得層が急増している。アジア全体で都市化が進み、インドネシア、フィリピン、ベトナムといった新興国は、地方から都市部への人口移動が加速している。

その中で、街作りが日本型化していると思うのだ。日本型の均質なインフラ整備は、多くのアジア諸国が参考にしているモデルなのだ。特に、中国の一帯一路構想を通じたインフラ支援は、アジア諸国の地方都市を日本型に近い形で発展させている。すると、アジア諸国では、地方都市も都市化が進み、均一的な商業施設や住宅街の発展が進行し、結果的に日本のケースをベースとしたタイムマシン経営が出来るのだ。アジアの新興中間層は、日本の商品やライフスタイルに憧れを抱いており、日本型の消費行動が浸透するのも見えている。

次にアフリカ30億人だ。アフリカは2050年までに人口が倍増すると予測され、労働力や消費力の拡大が期待されている。新興経済圏としてのポテンシャルは非常に大きいのだ。アフリカの都市化率はまだ低いものの、急速に進展しており、これに伴い、インフラ整備や住宅開発の需要は急増する。そしてダークホースは中国の存在で、それが日本型の後押しをしていくと予測ができるのだ。中国は一帯一路構想を通じて、アフリカ全土で道路、鉄道、港湾といったインフラ整備を進めている。このインフラ整備は、日本型の都市モデルに近い均質な基盤を提供している。この投資とインフラ整備が続けば、地方都市にも画一的な商業施設や住宅街を生み出す構造になり、日本の地方都市に似た便利で均質な街並みが形成されるのだ。その結果、アフリカでも、中国製品と並び、日本製品や日本的な商品設計が評価される。字指、その市場は拡大中だ。特に品質や信頼性を重視する層には、日本型の商品はマッチしている。

アジアやアフリカは、日本型の街作りをすることに対しは不可逆的だろう。とすると、日本型の街作り、都市モデルを提供する企業は早く進出すべきだ。特に、地方のインフラや街づくりに特化したノウハウを、アジアやアフリカの地方都市開発に活用することで、日本企業が市場拡大がイメージ出来る。

そして、生活必需品や実用商品は、上述した地方発の商品企画がやはり、アジア・アフリカの新興市場で非常に高い適応力を持つ可能性があるのだ。今後数十年で、中間所得層が急増するアジアの地方都市は、日本型の商品やサービスの主要ターゲット市場となるだろう。そして、アフリカの消費層も、地方都市を基盤とした生活必需品やインフラ商品に対する需要が大きくなると予測される。

アジアとアフリカの成長は、日本型の街づくりや商品の輸出にとって大きなチャンスだ。特に、地方型モデルがアジアの地方都市やアフリカの新興都市にマッチすることで、日本企業がグローバル市場で成功する可能性は非常に高い。地方発の商品企画の成功事例を活用し、アジア・アフリカでの市場拡大を目指すことは、未来の日本企業の競争力を高める重要な戦略となるのではないだろうか。

ということで東京的なエリアの憧れを捨てることが、日本の未来を切り開くことに繋がるのかも知れない。



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