新規事業の旅150 リユースマーケット

2024年12月20日 金曜日

早嶋です。2600文字です。

リセール市場が盛り上がりを見せているが、これはオールドエコノミーの成せる技で、数年から10年以内に枯渇してしまう市場では無いかと懐疑感を持っている。ニューエコノミー世代は、物質的な富にあまり興味を持たなくなるからだ。

(リユース市場の現状)
近年、日本における買取専門店の増加に伴い、ブランドバッグ、ブランドジュエリー、ブランド時計の買取市場も拡大している。

– 2022年のリユース市場全体の規模は約2兆8,900億円。そのうちブランドアイテムの市場規模は約3,000億円だ。
– 2023年の国内宝飾品小売市場規模は、前年比101.9%の1兆423億円と予測されている。 この増加は、富裕層を中心とした反動消費やインバウンド需要の回復によるものと考えられる。
– 2022年2月、ロレックスのデイトナが史上最高値となる740万円を記録し。その後12月には500万円にまで価格が落ちている。価格変動は、需要と供給のバランスや世界情勢の影響を直接的に受けている。
– 2024年の調査で、宝飾品の売却理由として「使用していないアイテムの整理」が多く、特に60代ではその傾向が顕著だ。 また、リユースジュエリーの購入経験者は約半数に上り、価格の手頃さやユニークなアイテムの発見を理由に挙げている。

上記が、直近の高級品(リユース含む)に関する一部のファクトだ。日本のリユース市場は近年拡大傾向で、2022年の市場規模、約2兆9000億円は13年連続での成長結果だ。2022年の販売経路別の市場は、店舗販売が1.6兆円、ネット販売が1.3兆円だ。リユース市場の中核は実店舗での販売で、大手リユースチェーンや地域密着型の店舗が含まれる。ネット販売はC2C取引などのフリマアプリやオークションサイト、個人取引とB2C取引などのリユース専門業者や企業が運営するECサイトに分かれる。メルカリやラクマの利用拡大によって市場が増加しているのは想像つくだろう。消費者がより手軽に取引出来る環境の整備が整っているのだ。

(世代消費の特徴)
世代ごとの消費でもコメントしたが、今後の消費の中心となるZ世代の消費傾向に変化が出ている。Z世代は、所有より、体験や他者との共感を重視する傾向がある。SNSやデジタル空間でのつながりを重視し、高級品のような現物よりもデジタルコンテンツや体験型の消費に資金を割くことが増えている。従い、高級品がもたらすステータスの価値は低下し、リサイクル、アップサイクル、共有経済など、環境に配慮した選択を求める傾向が強まっていく。この意識の変化は、高級品市場のリユース需要にも影響を与える可能性がある。メタバースやNFT、ゲーム内課金など、デジタル空間における所有や体験への支出が増加し、物理的な高級品への関心が相対的に低下していくのだ。

バブル世代やミレニアル世代にも変化がある。バブル世代が子育てを終えた後、可処分所得が増えるが、消費の方向性は高級品ではなく、旅行や趣味、健康、資産管理(投資・貯蓄)などにシフトし、自己充足的な領域にシフトしつつある。そのため、高級品をリユース市場で売買する動機が資産価値から実用性へと変化している。ステータスや所有欲そのものが減少し、投資対象と慣れば、結果的に、高級品全体の需要は低下すると思うのだ。

これらは必ずその出口であるリユース市場にも影響を及ぼす。高級バッグや宝飾品、時計、ジュエリーの需要が低迷すると、これらを主要商品とするリユースマーケットの一部が打撃を受けはじめるのだ。街を歩けば買取専門の店が溢れているが、買い取る商品が底を付けばリユース市場での商品が枯渇するので市場全体は冷え切る方向に行くのは理解できるだろう。高級なお酒が飛ぶように売れる時代も過去の産物だ。その代わり、エコ・サステナブル商品やデジタル関連商品のリユース市場、あるいは体験型サービスの再販市場など、新しいカテゴリのリユースが注目されるようになるだろう。ただ、元の価格が合理的なので市場全体の規模は縮小するのだ。

(高級品の市場)
国内における高級バック、ブランド品、時計、ジュエリーの市場規模と推移を調べてみた。アクセスできるリソースが限られていたので、代替的にジュエリー市場だけで考察してみた。2024年の国内宝飾品小売市場規模は約1兆953億円で、前年から4.7%増加すると予測されている。一方で、2025年の規模は約1兆514億円で、4%の減少傾向を予測している。

次に、年齢層ごとの購買動向に関するデータを追いかけてみたが、短い時間でアクセスできた情報によれば、20代から30代の若年層は、やはり所有より利用を重視し、レンタルやサブスクリプションサービスの利用が増加している。また、不要品の売買にも積極的で、フリマアプリやリサイクルショップの利用が一般に定着している。そして60代から70代のシニア層はデジタル技術の活用が進み、オンラインでの情報収集や購買活動が増加しているのだ。 若年層での高級品の所有に対する価値観の変化とシニア層でのデジタルチャネルを通じた購買活動の増加は確実な現象として確認できる。

ちょっとこれだけの傾向だけで今後、国内の高級市場が低迷すると考えるのは野暮だが、マーケット全体で情報収集の合理性が進み、若手が所有よりも利用に重視した瞬間に、提供される商品全体のボリュームは合理的な数に収束していくことを鑑みると、トップラインの売上全体は減ることは言えると思う。

(戦略体な考察)
ということで、リユース市場で競争力を今後も保つためには、高級品依存を脱し、Z世代や次世代消費者のニーズを満たす商品・サービスの提供に注力することが必要になる。具体的には以下のような方向性があると思う。サステナブルな商品のリユースモデルの構築。デジタル消費に対応したリユース、例えばNFTやデジタル資産の取引プラットフォームだ。そして、若い世代が重視する共感やストーリーを組み込んだサービスの展開だ。高級品市場の縮小をチャンスと捉え、次世代の消費トレンドに合致した新しいリユースマーケットの構築がそろそろではじめるのではないかと思う。



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