新規事業の旅149 世代ごとの消費の特徴

2024年12月9日 月曜日

早嶋です。約3000字。

世代ごとに消費スタイルが異なるとした場合、背景となる価値観や経済環境を踏まえるとバブル世代、ミレニアル世代、Z世代と3つに分けることができる。一般に最近の世代になるに連れて消費が渋くなると考えがちだが、実はZ世代で独身親と同居というセグメントが最も自由に使える金額が大きいのだ。マーケターは、このセグメントの消費を活性化させることに躍起になっている。

(世代ごとの特徴)
バブル世代は、1960年後半から1970年代前半ば生まれで、経済成長期を背景に、所有や現物という形あるものに成功を示した。ブランド品や高級時計、ジュエリーや車などが代表だ。高価格帯の製品やサービスの支出を許容し、長期間使える物やステータスの象徴となる消費を好む。

ミレニアル世代は、1970年代後半から1990年代半ば生まれで、経済不況やIT革命の影響を受け、実用性やコストパフォーマンスを重視する傾向が高い。旅行やイベント、趣味など、体験型の消費に重きが移り、所有に加え利用への価値観の幅が広がっている。2010年頃より、音楽や動画配信のサブスクサービスが始まり、プラットフォームの普及と共に新品の購買に加えて中古品やリサイクル品などの合理的な消費や環境を配慮する動きも取り入れるようになる。

Z世代は、1990年後半から2010年前半生まれで、物心ついた頃よりデジタル環境が当たり前になり、物理的な所有よりもデジタル体験やオンラインでの存在感がより身近になった世代だ。そのため周囲に迎合することなく個性や自分たちが好きなコミュニティでの活動を中心に、時には推し活、持続可能や社会への共感を重視するようになった。ミレニアル世代よりも更にデジタル空間での課金に対して自然で、ゲーム内課金やアバターの衣装などデジタル空間の消費が当たり前になっている。

もちろん3つの世代は、完全にバラバラではなく、大きな傾向としてみたほうがよい。近年、旅行やイベントへの関心は世代を超えて増加しているし、従来のステータス重視のブランド志向も、価値観や共感に基づくブランド選びは3世代共通の傾向を見せている。一方で、バブル世代に対してはモノに象徴される所有によるステータスは一定のポジションを占める。ミレニアル世代には体験価値やコストパフォーマンスなど利用の満足度が高い。そしてZ世代はつながりや自己表現など、特にデジタル空間での存在感が鍵になっている。

この世代における価値観と消費の傾向は当然にその当時の時代背景が重なる。1990年代のバブル崩壊以降、長期的な経済停滞が続き、特に若い世代の可処分所得が減少している。実質賃金は停滞し、非正規雇用の増加、家計の固定費は増(教育費、通信費など)という状況だ。当然に、高額な所有型消費よりも、低コストで満足感を得られる利用型消費や体験型消費へのシフトする背景があるのだ。バブル世代が象徴する成功の証としてのブランド品や高級品は、Z世代にとって現実的な選択肢ではなくなったのだ。

そして、2007年のiPhone登場を皮切りに、スマートデバイスの急速普及と共にデジタル空間が日常生活の中心に置き換わった。情報へのアクセスが民主化されたことで、物理的な所有よりも情報や体験そのものに価値を見出す傾向が生まれた。更にSNSの影響により他者とのつながりや、自己表現が重要な価値として加わった。フォロー数やいいねの数という従来無かったデジタル空間での評価がステータスの一部に置き換わっている。スマートデバイスは、ゲーム内アイテム購入の促進やアバターのカスタマイズ、推し活やライブ配信への課金など、情報収集のツールとともに購買行動の道具としても進化した。その結果、世の中の商品がアプリを通じた個別最適なされた消費として加速しているのだ。NetflixやSpotifyはまさに象徴的なサービスだ。

バブル世代は所有、ミレニアル世代は利用、そしてZ世代はデジタル空間での存在感が加わり、デジタル化の進展と捉えるよりも、経済制約とデジタル技術の普及が生んだ価値観の進化が進んでいるのだ。

(世代ごとの可処分所得)
最近のデータを用いて20歳から70歳以上の5歳間隔での平均年収を調べてみた。例えば、20から24歳は273万円、25歳から29歳は389万円といった統計データだ。このデータを基に、世代ごとの平均年収を推定した。

バブル世代(50から59歳):約535万円
ミレニアル世代(30から49):約444万円
Z世代(20から29歳):約331万円

次に可処分所得を推定する。平均年収から税金や社会保険料を差し引いた金額を可処分所得と推定すると、年収の7割から8割程度になる。

バブル世代:約374万から428万円(平均401万円)
ミレニアル世代:311万から355万円(平均333万円)
Z世代:232万から265万円(平均249万円)

この推定からZ世代の可処分所得はバブル世代と比較して約6割り程度の水準であることが分かる。この数字を更に整理してみる。バブル世代でも扶養家族が居る場合や子育てが終了した夫婦二人では自由消費額は変わるだろう。そこで可処分所得を更に細分化して自由消費金として推定する。

バブル世代は結婚しているケースが多く、子育てや住宅ローンなど家庭に関連する支出が大きい。既婚者&扶養家族ありの場合、教育費、生活費、住宅ローンなどに大部分を割くため、個人で自由に使えるお金は少なくなる。一方で、子育て終了後の夫婦二人暮らしの場合は、支出が落ち着き、趣味や高額消費に再び資金を使いやすくなる。

扶養家族ありの場合、可処分所得平均の401万円の7割を生活費や扶養家族関連に支出したと考えると、自由消費金は約120万円だ。子育て終了後の夫婦ふたりの場合、生活費を年収の4割とした場合、自由消費金は約241万円だ。

ミレニアル世代は結婚率が低く、独身やDINKs(共働きで子供なし)の割合が高い。独身の場合、生活費や趣味に充てる金額が比較的多いが、住居費用など固定費がかかる。DINKsは、家計全体で支出を分担できるため、自由消費金は独身より多い。

独身は、可処分所得平均の333万円の約6割を生活費や固定費に使用すると考えると、自由消費金は約133万円だ。DINKsの場合、共働きで平均の1.8倍を年収として、約4割を固定費に使用すると考えると、自由消費金は約360万円だ。

Z世代は更に未婚率が高く、親と同居しているケースが多い。独身で親と同居している場合は、家賃や固定費(光熱費、食費など)を親に依存し、実質的に使える金額は高い。独立して一人暮らしの場合、住居費用など固定費がかかり自由に消費できる金額は大幅に少なくなる。

独身で親と同居の場合、可処分所得平均の249万円の約3割を個人消費(食費や交際費)としても、自由消費金は約174万円だ。独身一人暮らしの場合、固定費は7割とすると、自由消費金は約75万円だ。

ミレニアル世代(DINKs):約360万円 ※一人当たり約180万円
バブル世代(子育て終了後の夫婦ふたり):約241万円 ※一人当たり約120万円
Z世代(親と同居):約174万円
ミレニアル世代(独身):約133万円
バブル世代(扶養家族あり):約120万円 ※一人当たり60万円以下
Z世代(独身一人暮らし):約75万円

と整理すると、DINKsとZ世代で親と同居しているセグメントが最もお金を自由に使えるのだ。子育てが終了したバブル世代よりも自由に消費できる金額た大きいのがとても興味深い。



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