新規事業の旅129 ベンチャー企業と中小企業

2024年7月23日 火曜日

早嶋です。(約1700文字)

ベンチャー企業と中小企業は、似て非なるもの。とまではいかないが、いくつかの観点から異なる。ベンチャー企業は急成長を目指し、革新的なアイデアや技術を活用して新市場を開拓することが多い。ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家から資金調達を行い、短期間で大規模な成長を実現しようと試みる。一方で中小企業は地域密着型や特定のニッチ市場に焦点を当て、安定した経営を重視する。持続可能な維持、もしくは成長を目指し、自主資金や銀行からの融資を主な資金源としている。

株主の特徴からもわかる通り、ベンチャー企業はリスク耐性が高い。一般的にハイリスク・ハイリターンな事業モデルのため、経営者が金融機関などから貸付を行うにはリスクが高い。そのため一定の経験値と理解を示すVCやエンジェル投資家が理解を示しながら投資を行う。ただVCや個人投資家はお金を出すだけではなく、その事業の成功を加速させるため初期段階では、経営支援やネットワークの提供も行う。

株主は、短期間での急成長を重視し、早期の利益よりも、市場シェアの拡大や技術開発に焦点を当てることが多い。そのためにVCやエンジェル投資家は、企業の戦略的方向性に積極的に関与し、取締役会に参加し、企業の成長をもサポートする。そして、IPO(新規株式公開)やM&A(企業の合併・買収)などの流動性イベントを通じて、投資資金の回収を期待するのだ。

一方で中小企業は、銀行からの融資や自己資金で運営されることが多く、外部からの大規模な資金調達は行っても稀だ。中小企業に投資する投資家がいた場合は、頼まれて投資をするか、たまたま知っていて半ばドネーションのような感覚で出資をする。成長よりも安定した収益と長期的な経営を重視する中小企業が多い。中小企業はリスクを最小限に抑え、安定したビジネスモデルを追求する。地場のネットワークや知名度を活かして、既にナショナルブランドが開発した事業モデルをFC等を通じて行う中小企業も多い。明らかにマージンを抜かれるナショナルブランドのFCを敢えて行う傾向を見てもリスクに対して耐性が極めて低いことが納得できる。

ベンチャー企業の風土は若く、ダイナミックな組織文化を持つ。迅速な意思決定や柔軟な働き方を重視し、創業者やリーダーのビジョンが強く組織や経営に反映されることが多い。中小企業はまちまちだ。安定した組織構造でも、従業員の雇用を重視しているとはいえ、制度が充実していない場合も多く、福利厚生も教育耐性もまちまちだ。地理的な拡大をすることもないので、結果的に地域に根ざす場合も多い。地域社会との関係を大切にし、伝統や文化を尊重している企業も多いが、結果的にその状態を維持している場合も見受けられる。

ベンチャー企業は新しい市場やグローバル市場への進出を目指し、革新的なアプローチを取る。ハイリスク・ハイリターンの事業モデルを多く取ることと、資本家から集めた資金を元手に企業価値を高める必要もあり、結果にスケーラビリティを追求し、急速な市場拡大を目指す状況に追い込まれるのも事実。中小企業は、大きな成長は望まず、結果的に地域密着型のビジネスを展開している。戦後起業した事業で、ファミリービジネスで規模が大きく変化していない企業は、拡大よりも安定した顧客基盤の維持に力を入れている。その結果、2代目、3代目が引き継ぐ頃には、事業規模が縮小する傾向も良く観察できる。

初期のベンチャー企業は、組織や仲間に対して、将来の企業価値を配分することで人材を調達する。中小企業は、給与レベルは高くは無いが、一定の安定とその地域から出る可能性が低いため、人口が一定数増加している時は採用もそこそこ実現できていな。現在は、中小企業を中心に人手不足が慢性的に続いている。企業のビジョンや教育体制が整っておらず、業務フローも昔ながらのアナログ。そのため、SNS等の影響で情報が民主化された今、人手不足の企業に人材が慢性的に流出する傾向に歯止めをかけれない状況が続いている。

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