新規事業の旅128 先延ばし

2024年7月22日 月曜日

早嶋です。(約2400字)

Procrastination. プロクラステイネーション(先延ばし)は、タスクや行動を遅らせ、先延ばしにする行為だ。ストレスや締め切りを逃す原因となる。生産性や健康に影響を及ぼすこともある。

一方で、プロクラステイネーション(先延ばし)には思考を熟成させる側面がある。適度な先延ばしは、アイデアを深め、新しい視点を見つけたりするための時間を提供する。

利点として、創造性の向上がある。時間をかけて熟考することで、より創造的で斬新なアイデアが生まれる場合がある。問題解決能力の向上もある。一旦タスクから離れて再び取り組むことで、異なる視点から問題を捉え、新たな解決策を見つけることがでる。ストレス軽減にもつながる。急いで取り組むよりも、じっくり時間をかけることでストレスを軽減し、冷静に対処できるようになるからだ。そして直感も活用できる。時間を置くことで直感が働きやすくなり、より良い判断ができるのだ。

そもそも、プロクラステイネーション(先延ばし)は多くの人が経験する現象だ。ということは、その背後にはいくつかの心理的および神経学的な要因があるはずだ。いくつか、先延ばしする主な理由を示してみる。

まずは感情的な理由だ。不安やおそれが考えられる。失敗への恐れや、タスクが困難だと感じることが先延ばしの原因になる。人はこのネガティブな感情から逃れるために、タスクを避けようとする。また完璧主義も邪魔をする。完璧に物事を行いたいという欲求が強いと、ミスを避けるためにタスクを先延ばしにすることがあるのだ。

動機づけの欠如もある。タスクがつまらない、興味がないと感じると、取り組むモチベーションが低くなり、先延ばしをするのだ。脳科学的には報酬の遅延などと呼ばれる。即座に報酬が得られないタスクに対しては、モチベーションが低くなり、先延ばしが起きやすくなるのだ。

自己制御の問題もある。短期的な快楽を求める衝動が強いと、長期的な目標よりも目先の楽しさを優先してしまい、先延ばしをしてしまう。自己効力感が低い場合もだ。自分がタスクを完了できるという自信がない場合、タスクに取り組む意欲が低下し、先延ばしに繋がるのだ。

脳の構造と機能も関係する。脳内の報酬システムが関与して、即座に得られる報酬を好む傾向があり、長期的な利益よりも短期的な満足を求めることが多い。これは前頭やの役割として近年研究されている。前頭前野は計画や意思決定、自己制御を担当しているが、この部分の機能が低下すると、先延ばしの傾向が強くなるのだ。

もちろん環境にも左右される。周囲の環境に気を散らすものが多いと、集中力が低下し、タスクを先延ばしにしやすくなる。更に、適切なサポートやフィードバックがないと、先延ばしの傾向も強くなる。

先延ばしは、悪のように見えるが、活用することで脳の創造性を活用できる。ポイントはバランスをとることだ。無計画な先延ばしは避け、あらかじめ計画を立てた上で適度に時間をかけるのが良い。例えば、期限の少し前に一度タスクから離れ、その後再度取り組む時間を確保するなどだ。そのためには、タスクに対して明確な期限を設けることだ。先延ばしが無期限に続くのを防ぐことができる。そして休憩のテクニックも必要だ。長時間集中するのではなく、適度に短い休憩を取る。すると思考をリフレッシュでき、アイデアを熟成させる時間を持つことができるようになる。更に、進捗の確認も有効だ。定期的に進捗状況を確認し、先延ばしが生産性に悪影響を与えていないかチェックするのだ。最後に、適度なプレッシャーを与える。ある程度のプレッシャーはモチベーションを高め、効率的にタスクを進める助けになる。自分に合ったレベルのプレッシャーを設定するのだポイントだ。

上記を踏まえて、先延ばしをいい感じに取り入れ克服するための方法論をまとめてみた。

まずは、タスクを小さなステップに分けること。大きなタスクは圧倒されることがあり、先延ばしの原因になる。そこでタスクを小さく分け、取り組みやすくする。

次に、具体的な目標を設定する。明確で達成可能な目標を期限付きで設定するのだ。これにより、緊急性と方向性が生まれる。もちろん、タスクの優先順位をつけるのがよい。予定表や優先順位マトリックスを使用して、最も重要なタスクから取り組みくむ。

そして、気を散らす要因を排除しよう。ソーシャルメディアや騒がしい環境、不必要な中断など、気を散らす要因を特定し、排除するのだ。職場は、強制的にこの手の環境要因を排除しているため集中力が持続するのも納得できるはずだ。そのために時間管理も大切だ。ポモドーロ・テクニック(集中して作業し、休憩を取る方法)などのテクニックを使用して、生産性を維持し、燃え尽きを防ぐのだ。職場や学校が時間を管理して休憩を与えるやり方は、ここから来ている。

これらを習慣化する。一貫したルーチンを確立することで、習慣を築き、先延ばしの傾向を減らす。一人でできない場合は、友人や家族、同僚と目標を共有し、彼らに進捗を確認してもらうことで責任感を持たせる。

報酬による管理も良い。タスクを完了した際に報酬を設定し、モチベーションを高め、達成感を与えるのだ。

もちろん、今回記述した根本的な原因を理解することも有効だ。なぜ先延ばしをするのかを考える。失敗の恐れ、完璧主義、興味の欠如などの原因を特定し、それに対処することだ。先延ばしをしてしまったとき、自分に対して優しく接してよい。先延ばしは誰にでもあることだと認識し、自己批判ではなく、前向きな変化に焦点を当てるのだ。

プロクラステイネーション(先延ばし)は必ずしも悪いことではなく、適度に取り入れることで思考の熟成や創造性の向上につながることがある。重要なのは、無計画な先延ばしを避け、計画的に取り入れることでバランスを保つことだ。

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