新規事業の旅119 学習性無力感を克服するアプローチ

2024年6月28日 金曜日

早嶋です。

学習性無力感。要は始めはやる気まんまんで取り組むものの、徐々に上からのオーダーが正直厳しくなり、途中で思考停止になる現象だ。新規の取り組みでも既存の取り組みでも、このような体験を自分自身、あるは部下や同僚が経験しているのを観察したことがあると思う。

このような状態に陥った部下や仲間がいる時に、上司や先輩はどのようなアプローチをとるとよいか、整理してみた。今回は3ヶ月間のリトリートプログラムを提案する。チームで試しても良いし、自分自身で行ってもよい。

1ヶ月目:基礎の構築
2ヶ月目:行動の変革
3ヶ月目:継続と強化

の流れで実践すると良い。

1ヶ月目:基礎の構築

まずは、自己認識を高める取り組みから始める。その取組として、地味だが効果的なのが日記だ。と言っても、長々と書いても続かないので、その日の感情や考えを記録する程度で良い。できれば、仕事として管理下における状態で行ったほうがよいので、定時前に時間を決めて、ノートや共有ツール等に書き込んでもらう。

日記の重要性は、日々アタマの中で自分自身と対話している概念を自分の言葉で整理して記録することだ。そして、一定期間続けると自分の思考のパターンや癖を客観的に分析することができる。日記を書く目的はまさにここにある。

1週間から2週間程度立った時点で、自分の日記を一気に振り返る時間を設ける。その中から、著者(日記を書いた人)の傾向を分析する。おそらく否定的なワードが多く、出来なり理由や感情が繰り返し綴られるなど著者によって一定の方向性が確認できるだろう。

日記を書き続ける日々と同時に環境も整備する。本来は、家族や友人などの社会的なつながりのある人からフィードバックを受ける。しかし、今のように無気力になっている理由はそのフィードバックが無い、もしくは適切では無いからだ。社内で担当者や役割を決めて著者をカバーする環境を整備するのだ。理想は、その役割の方も同様に過去一定の苦労や苦しみから立ち上がった経験がある方が良い。理屈や理論と同時に、本人の一次体験の話も大いに参考になり、著者にとって良いフィードバックを与えることができるからだ。この相手をメンターとしよう。

日記の内容を週に1回程度、著者とメンターで一緒に整理して振り返る。ネガティブな感情や言動レベルに対してポジティブなフィードバックをメンターは与えることを意識しよう。同時に、毎日や日々の行動の中で取り組んだことを拾い上げて小さな成功として、積極的に認めていくことにも意識する。

2ヶ月目:行動の変革

基礎固めは継続する。慣れてきたら平行して環境を整備する。基礎の構築で、ポジティブなフィードバックと小さな成功体験の確認により、著者のマインドの変化に勢いつけるのだ。そして、2ヶ月目のフェーズでは一定の目標設定を始める。著者に、小さくても良いので、2週間から1ヶ月程度の期間で達成可能な目標を設定してもらうのだ。この際、メンターがリードしながら目標設定の手助けをするなど、状況に応じて対応する。この期間の目標は仕事でもプライベートでも何でも良い。毎日筋トレをするなどでも良いのだ。重要なのは、確実に行動し、確実に達成できる目標設定を試みてもらうことだ。

取り組みに対しては今まで通り日記を付ける。目標を設定して、それに対してどのように取り組んだか。どのような気持ちで取り組んだが。その後、どのような気持ちになったが。実際に取り組んだ行動に対しての著者の感情レベルを簡単で良いので日記に付けてもらう。これにより目標⇒行動⇒フィードバック⇒小さな成功体験のサイクルを繰り返すことになる。また、日記をつけることで内省化する力を高め自己効力感が高まってくる。

メンターは、毎週あるいは定期的に、その日記を見ながら、著者の取り組みや状況をフィードバックする。達成したことそのものより、著者が取り組んでいる行動にフォーカスしてポジティブなフィードバックを提供する。ここでも自己肯定感を高め、同時に自分の成功を自分自身に認識してもらい、自己評価を行う習慣を身に着けてもらう目的がある。

3ヶ月目:継続と強化

この頃より、著者に変化が現れる。そこで改めて問題解決の基本的な考え方やスキルを提供する。問題の設定、課題の特定、解決策の方向性と意思決定、計画と実行とフィードバックの考え方だ。この手のテクニカルなスキルは意識レベルが低い時にインストールしても効果が薄い。

問題解決の流れに沿って、本人の半年から1年間の与えられた目標を、自分自身の目標として設定し、現状の自分とのギャップ(問題)を明確にする。そして、その問題を複数の切り口で分解して、問題が発生するメカニズムを整理する。そして、問題を引き起こす要因(事実)を発見して課題として特定する。その課題を解決するための大きな方向性をいくつかの切り口で整理した後、それぞれの方向性に対してアイデア出しをして、解決策を選択する。その解決策を実行するスケジュールをつくり動いて検証を繰り返し成果を出すのだ。

メンターは、この問題解決の取り組みの中で、時には一緒に考え、時にはヒントになる質問をなげる。そして時には、合理的な考えばかりではなく、感情や本人のやる気にフォーカスして注意深くコミュニケーションを取り続けるのだ。定期的なチェックと適切なフィードバック。これが本来メンター、つまり上長が部下に対して行うべき取り組みになる。

3ヶ月の取り組みを見て感じて頂いたが、日常的にこの手のマネジメントサイクルを行っているチームの部下が学習性無力感を感じる可能性は低いだろう。つまりは、そのような状況に部下や仲間を追いやっているのは組織のトップや管理職に原因がある場合が高いと言えるのだ。



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