新規事業の旅116 継続は力なり

2024年6月18日 火曜日

早嶋です。

新規の取り組みにも継続は必要だと思う。もちろん、ビジョナリー・カンパニーで在ったように、始めは大砲を打ちまくって、感触がある部分を探る。次第に、そのあたりの強い部分に資源を投下するという具合に一定の戦略を決めてからの動きに対してだ。この取り組みは最低でも3年から5年はあっても良いと思う。

一方で、既存の取り組みと同じ評価軸を持ち組織を構築して評価するため初めの1年、2年こそ忍耐力はあるが、徐々に短期的なアウトプットを求めるあまり、トップを変えたり、メンバを入れ替えたり。結果数年もしない内にメンバの中に初期メンバーが誰もいなくなるという始末。

事業の成功要因にこれという要素は存在しないだろう。しかし確実に複利の効果はあると信じる。毎日、毎週、毎月、毎年一定の継続的なワークを続け、一定の方向性(戦略)に対して数年単位で資源を投下するのだ。しかし、成熟した事業会社で新規事業を求める組織の多くは、そのような取り組みをしない。

ハーバードビジネスレビューや他の経営に関する紙面やジャーナルで掲げられている複利の効果は次の通りだ。

継続的な学びとインプットの重要性。既存事業に対しても当てはまるが、世の中は絶えず変化している。そのため毎日、毎週。少なくとも毎月の単位で継続的に新たな知見やスキルを身に着けながら組織をアップデートすることが大切だ。そしてその行為自体を強制力でおこなうのではなく、習慣化させ組織の文化として定着さえることが大切だと思う。

この考えは、バーニーのリソース・ベースド・ビューに近いものがある。企業毎に異質でコピペするのに時間と費用がかかる経営資源で差別化をとる戦略だ。日々学びアップデートする組織は理屈でわかっても、実際に自分たちの組織にインストールするのは困難だ。従い、それだけ強烈に意味のある取り組みの証左ともなる。

インプットばかりではない。アウトプットも大切だ。コンピューターの用語に、「garbage in, garbage out」がある。ゴミを入れたらゴミしか出ない。一方でゴミでも有用な情報でもデータベースに入れっぱなしでは役にたたないし、人だと便詰まりを起こしてしまう。そのため定期的にアウトプットして、その成果を定期的に検証して再び、戦略的なインプットを繰り返すのだ。

インプットとアウトプットの継続は、ベースとなる戦略が肝だ。戦略に基づいて一定の大きな方針と計画を示す。ただ既存の計画のように綿密にはできない。この場合の計画の肝は、リソースの確保だ。特に、新規の取り組みをするメンバーの時間を毎週、毎月確実に確保して、新規の取り組みに集中させることが肝だ。

多くの組織は、将来の投資に対してリソースをさけていない。結果、既存の取り組みをしながら新規の取り組みをさせてしまう。これを行うと、当然に過去に発生した問題解決をすることの方が簡単で、成果が目に見えて出てくるため多くの社員は時間を割く。また、将来の取り組みは中々成果が出ない。一方で社員の評価は既存の取り組みでされて、今の成果、直近の四半期の成果で行われる。馬鹿でない限り既存の取り組みにフォーカスするのだ。つまり、仕組みと資源の配分が悪い。これは計画とその管理が悪いのだ。

このように考えると、継続的な取組の裏には、「忍耐」「自己管理」「柔軟性」などの概念が見えてくる。この手の取り組みが得意な人は、そもそも大きな組織で働くのではく、自分の可能性を試すために早々に辞め、小さな組織か、自分で旗を上げて事業を立ち上げているだろう。

仮に、組織の中に一定数いるとしても、その人材は重宝がられて新規の先が見えない取り組みに配属されないのだ。結果、マネジメントもメンバーもなんとなくやっている雰囲気を出すことに手一杯で実際の成果につながらないのだ。

遠い世界の人たちだが、成功者は始めはただの凡人だ。毎日の取り組みが複利になってきいてきて、やがてその取組が簡単に模倣できなくなる。成功や努力を勝ち得たことが無い人間は他社の影の部分や努力にフォーカスせずに、今この瞬間に成功していることに目を向ける。そして一言「あの人だからできるのだ」「あの組織は特別だ」と言う。

が、皆特別なんかではない。初めての時が誰にでもあり、その人や組織が成果を出していないときは注目すらされていない時期が在ったのだ。それでも継続的に一定の方向性を試行錯誤しながら検証と実証を直向きに繰り返しただけなのだ。

ウォーレン・バフェット。バークシャー・ハサウェイのCEOであり、世界的に有名な投資家だ。バフェットは非常に若い頃から投資に興味を持ち、継続的に学びと経験を積み重ねてき。彼の投資哲学は「価値投資」であり、優れた企業を長期的に保有することだ。また、彼は日々数時間を読書に費やし、知識を常に更新していた。そして、あまり知られていないが、彼の資産が莫大なものになったのは60歳を超えてからなのだ。まさに継続的な努力の結果だ。

ジョフ・ベソス。アマゾンの創業者で、元CEOのジェフ・ベゾスは、1994年にガレージからオンライン書店をスタートさせる。インターネット革命は2000年頃からなので、彼の着眼点はすごい。しかし、ベゾスは長期的な視点を持ち続け、顧客満足を最優先に考え、技術革新を推進し続けている。また、失敗を恐れずに新しい挑戦を益属し、複利的な成長を目指した。我々が知る通り、アマゾンは書籍販売から始まり、現在では幅広い商品とサービスを提供する巨大企業となった。すごいのは、考えることができる事業モデルに実際に実践をし続けたことだ。

「GRIT」の著者アンジェラ・ダックワースは心理学者でもある。ダックワースは「やり抜く力(GRIT)」の研究に長年取り組み、成功するためには才能よりも情熱と粘り強さが重要であることを結論つけた。彼女は自身の研究から、教育やビジネスの現場での実践を推進している。今では、一定の人はGRITの重要性を認識し、長期的な目標達成に向けて努力するようになった。しかし、多くの人は「もともとから才能がある」「あの人は特別だ」という固定観念の思考を打破することができない。

ジム・コリンズ。「ビジョナリー・カンパニー」シリーズの著者だ。コリンズも成功する企業の特徴を長期にわたって研究した。継続的な努力と改善が企業の成功に寄与することを明らかにしている。彼の研究は、とにかく膨大なデータに基づいたアプローチで、企業の長期的な成長戦略の探求こそがコリンズの継続の証だ。

「継続は力なり」松下幸之助が言ったとされる。パナソニックの創業者で、経済界にも多大なる影響力のある人物だ。企業経営や人生において「継続することの重要性」を強調しており、彼の経営哲学の一部として広く知られた。

短い期間で成し遂げたことは、短い期間で他に追随されてしまう。日々の努力と忍耐の積み重ね。それを10年単位で状況に合わせて行うことが新規の取り組みの中でも大切な要素なのだ。

(過去の記事)
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