そのショッパー有償ですか?

2024年3月20日 水曜日

早嶋です。

近年、環境を配慮する傾向が強いあまり、店頭で顧客に配布する袋(ショッパー)が有償になっている。金額にすると数円から数十円なので大した金額ではないが、店員の無機質な対応が気になると共に、一定のブランドであれば、そのブランドに対して嫌悪感すら抱く場合もある。

ショッパーは、百貨店やモール等、一定の層が集まる場では、プロモーションとして活用できるツールでもあった。環境理由に、一方的にショッパーを配布しない取組に疑問を持ったことは無いだろうか?

百貨店の中にあるブランドショップと同じブランドで、先日訪れたアウトレットモール店舗でも、紙袋のショッパーが有償だ。疑問だ。ショッパーの紙袋を意識するよりも、つくりすぎたアウトレットの商品を見直すべきだ。アウトレットを出さない生産計画を考慮した方が、よっぽど環境に負荷がかからないのでは無いかと考えてしまう。(もちろん顧客として、アウトレットはいわばテーマパークのようで、その存在が無くなるとそれはそれで寂しいが。)

アウトレットモールは通常、郊外に店舗を構える。顧客は車でその場所まで行く必要がある。仮に一定のB級品が発生したら、それはWebショップで提供する方が環境に配慮できる。そんなことを考えながら、ショッパーが有料、しかも環境を考えてと言われた瞬間に苛つきを覚える。環境配慮ではなく、ショッパーで地味に利益をとっているように感じてしまうのだ。

繁華街やモール等では、ショッパーを持つ顧客が歩くだけで、その店舗やブランドを宣伝することになる。ずいぶんと昔の話だが、六本木ヒルズが出来たタイミングで、歩いている人は皆GAPと書かれたショッパーを持って歩いていた。戦略的に、大きめのGAPのショッパーを配布し、既に購入している商品などを、”親切に”、GAPの大きな袋に詰め替えてくれたのだ。(上述した百貨店とアウトレットのブランドはGAPではない。)ショッパーに、ロゴや企業メッセージを印刷することで、店舗外の多くの人々に見てもらう機会を増やす。店舗街を歩く人々がショッパーを持つことで歩く宣伝マンになり、認知度を増やせるのだ。

人の心理についてコメントする。数千円の買い物でも、数万円の買い物でも、その場で10%でも5%でも割り引いてくれると地味に嬉しいものだ。逆に、会計の際に、わかっていても、毎回袋の値段を聞かれ、サイズを聞かれる行為にうんざりする。高級店舗であれば、勝手に選んで勝手に価格に反映したところで、文句は言わない。なのに、敢えて聞かれる。プロ意識の欠如とも感じる。

企業が環境に配慮すべきことは理解する。とても重要だ。しかしだ。顧客に対して有償のショッパーを提供することをエコフレンドリーとして顧客が喜ぶかなのだ。そのような顧客がそもそも、あたなのブランドを敢えて買うかなのだ。企業として是非議論してほしい。

その議論の際に、否定的な有償ショッパーの障害を3つ示す。
1.ブランド露出の減少
2.顧客満足度の低下
3.競争上の課題

特に、2つ目、3つ目はポイントだと思う。有償ショッパーの導入により、会計時に更に、金額を請求されたと感じることだ。行動経済学では、ピークエンドの法則と言われる。人はある出来事に対して、感情が最も高まる瞬間と、最後の印象で全体の印象を判断するという法則だ。買い物でブランドショップで素晴らしい商品を見つけて購入した瞬間は、最も嬉しい感情だろう。一方で、小さな金額なのだが、その心意気が気に食わなくて、ショッパー有償のたびに、ネガティブな感情が蓄積して、その結果、そのブランドに嫌悪感を抱くのだ。

行動経済学にはナッジという概念がある。軽く肘先でつつくとか、背中を押す程度の意味だが、ナッジはその積み重ねが結果的に人の意思決定に大きな影響を与えるということだ。無意識かもしれないが、ショッパーの、会計時のあの感覚が、ブランドロイヤリティを激下げするのだ。

ライバルが同じように有償のショッパーを配布しているとき、パタゴニアの事例は参考に値する。ショッパーは有償だが、そのショッパーを後日店舗に持って来ると、いつでもその金額を返金してくれる。(今も継続しているかわからないが。)この取組は素敵だ。環境にも意識しているし、環境の理解者にはとてもフレンドリーというメッセージをしている。

要はそのブランドの一貫性に辻褄があっていない感じを受けるのだ。例えば、路面店では雨の日、傘用のビニールを店頭で配布し、そのビニールに濡れた傘をいれることを要求する。殆濡れていなくても、強制的にいれるように指示する店舗すらある。ちょっとみてすぐ出るのに。そのビニール袋に対して対価を請求する店はない。が、確実にそのような店は、ショッパーや店舗の袋を有償にしている。ここにギャップを感じるのだ。

やみくもにショッパーを有償にするのではなく、自社のブランドの立ち位置や他社とのポジションの違いを検討した上で、ショッパーを限りなく有効活用するのか、何も考えないで有償にするのか。などを議論してほしい。他社が考えなしショッパーを有償にしているとする。自社が敢えてショッパーを無償にしたただけで、競争上の優位を勝ち得ることだって現在は考えられる。

要は何も考えずに一律みんながやっているから。という態度は一定のブランドロイヤリティを感じる店舗に対しては極めて危険な取組になることを指摘したい。



コメント / トラックバック2件

  1. さのとも より:

    何故店のロゴの印字されたショッパーを客が持って歩くことで宣伝効果があるのにお金を払って買わなくてはならないのか?と常々思っております。
    私自身、初めて訪れたショッピングモールを歩いていて、その店のロゴが入ったショッパーを持って歩いている人を見て「あ、あのお店入ってるんだ!」とフロアガイドで探した事が有ります。
    それを有料?商売としてどうなんでしょう。

  2. biznavi より:

    あるひ、レジ袋が有料になりますよ!となり、皆があまり考えずに、3円、5円、10円と金額を請求するようになったと思います。六本木ヒルズがオープンした際に、皆がGAPのショッパーを持っていました。GAPは、他店の袋よりも少しだけ大きめのショッパーを準備して、一緒に入れて上げるサービスを行っていました。もちろん、自社の歩く宣伝等になって頂くためです。金額と顧客の心情を考えた場合に、ショッパーの金額を別で取る理由について、何も考えていない。としか言えないですよね。

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