早嶋です。
企業はミッションやビジョンを基に、5年から10年程度の事業の在りたい姿を設定して、そこに向けて事業部毎の目標、部門ごとの目標と設定した目標を達成するために細分化する。そして当然に末端のリーダーは、その細分化された目標が自分が達成すべき全体と捉えるので、自部門の目標達成を主体に動く。
環境変化が激しい場合、この手の目標管理に不具合が生じる。5年、10年をベースに設定した取り組みが若干冗長なので、そのとおりにいかないという現象だ。そこで、5年程度の事業計画の期間をベースに、実際に1年経過した時点で残りの4年を見直し、追加で1年を加えて、常に5年程度の事業計画をローリングするやり方だ。この場合、誤ったリーダーは、対象目標を達成できないとしても、修正してローリングするので時間が来ればなんとかなると考えてしまうので。
全体を見れば細部が見えなくなり、細部を見れば全体が見えなくなる。人間の性なのだが、トップマネジメントやそれに準じる人材は、常に全体最適と部門最適のバランスを考慮する必要がある。その際の視点は2つ。遠い時間軸と短い時間軸。全体の事業ポートフォリオのバランスと、各事業の方針だ。この時間と規模を常に頭に入れて、遠くと近く、全体と部分を行き来しながら取り組むことが肝要だ。
部分の議論、短い時間軸の議論をするリーアーは、人材が不足、業務負荷が高い、リピートが獲得出来ない、若手が育たないなどの不満をあげる。
しかし冷静に考えると、人口は2008年をピークに減少している。若手を新卒等で採用したいのであれば、数多くある競合や大手企業よりも良い条件を出さない限り採用できないのが事実だ。業務負荷が高いのは、採用が出来ないからだと言っているが、2000年を境に世の中の技術革新は進んでいる。が、業務の流れや考え方は20年フィックスしたままの場合が多い。それなのに気合と根性で仕事を続けるので、なんとか利益は出るが、30代以下の社員からすると勘弁して欲しい状態で、転職を選択する気持ちも理解できる。3年、1年、四半期、1ヶ月。目標を細分化して目先の仕事に目が行くと、取った仕事のフォローや既存のメンテンスがおろそかになる。従い、年月が過ぎても固定客が出来ずに常に焼き畑農業の状態が続く。そして若手が育たないと嘆く。教育は3年から7年程度の時間をかけないと育つわけが無いのに、人事は新人教育で終わりで、階層教育も10年、20年見直しがない。事業部独自の教育は実質計画されておらず、忙しい現場に丸投げ状態だ。
ノルマに追われ、人手が不足して、自分が頑張らないとどうにもならないと勘違いしてしまうのはわかる。が、10年以上持続可能にしたいのであれば、時間軸を長く見て、事業全体、企業全体のメカニズムに対して問題の洗い出しを行い、抜本的な見直しを考えるべきではないか。
いま起きている現象は、5年前、10年前にその発生が確実に予見できるものばかりで、単に企業として対策をしていないで、たまたま採用した40代から50代の気合と根性で組織が成り立っているという事実に気づいた方がよいのではないか。
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