早嶋です。
マーケティング関連の本にも世界一のネズミ捕りの寓話がある。ある時、科学者が世界で最高のネズミ捕りを開発した。科学者はその商品が売れて富を築くことを夢見るも誰も買ってくれなかった。マーケティングの究極は、適切な方に、適切な商品を、適切なタイミングで、適切な金額で、適切に届けることだ。良い商品は全体の一つの構成要素に過ぎず、全体の最適を常に考えることが重用だ。
そのように考えると、新規市場において、「良い商品は売れる」という思い込みは排除したほうが良い。「売れる商品が良い」のだ。そもそも新規市場なので企業は、市場のことをあまり知らない。そのため商品の開発に莫大な資金と時間を費やすのではなく、試しながら市場に投入して市場の反応に商品をチューニングするスタンスも大切なのだ。
インドでエアコンがまだ普及していなかった頃、モーター会社はインドでの可能性を夢見て商談を始めた。静かで、省エネ、壊れにくくて高品質。日本では当たり前の売り文句をインドに持っていく。すると「静かなモーターなんて有り得ない。インド人は音がしないと空調が効いていると思わない!」「高性能だと壊れないから買い替え需要が生まれない!」「品質は落として良いから安いのをくれ!」と。
まさに、市場の声を理解しながら「売れるものが良いもの」という理解をする必要が多々あることが分かると思う。既存の商売は、過去10年とか20年前に、先人たちがそのような取組を行いながらチューニングしている結果なのだ。ただ、今既存の商売を行っている人は、そのような歴史や武勇伝を口伝でも継承していないのだ。
商売において、「良いもの」は作る側のロジックで、「売れるもの」は買う側のロジックなのだ。
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