早嶋です。
メーカーなど、特に機械を扱う企業は、原材料や部品の調達から組立、動作確認まで、精緻な経験と技術が必要とされた。従い、徐々に取組む仲間を形成し、時間の経過と共に理想の産業形態を作り上げた。が、自然環境が変化するのと同じ、産業を取り巻く環境にもそれはやってくる。生物が互いに環境に左右されながら互いが最適に生命を育む完成した生態系も実は微小な変化を繰り返し一定の期間を経て差分を取ると大きく変わっていることが分かると思う。
生物世界と産業世界を分け隔てるとしたら、それは人間の観念や思想だと思う。人間は考える葦である一歩、その考えがイデオロギー的に執着を生み出し、変化にストップをかける事例がある。それはプライドが邪魔をさせるという表現がふさわしい。
メーカーの多くは全ての取り組みを把握して、全ての整合性を自分たちで管理してきた。従い、自前主義が前提で、他社に手助けして貰う発想は乏しい、あるいは無い。
ハードからソフトにシフトした際に、電子媒体で記述されるソフトの特徴に、コピペができること。瞬時に伝送することができること。の2つがある。ハードの場合は研究して開発して技術が確立しても、そのハードを2つ作るためには、相応のコストがかかる。そしてそのハードを使用する場合、A地点からB地点に動かす場合にまた相応のコストがかかる。
一方でソフトはその2つから開放される。企業の生産過程において、何らかのコストを下げる方式を編み出したとする。そのソフトを別の企業の生産過程に導入する際、理屈ではコピーが可能だ。インプット部分とアウトプット部分の微調整は人員の整合が必要だが、ソフトそのものの生産するコストについてはほぼゼロに近い。そして、そのソフトを利用する企業間の距離が物理的に離れていても、ネットワークを介してほぼ瞬時に移動が可能だ。
また、アナログと違って、ソフトとソフトを結合する部分の記述やルール(プロトコル)などの整合性が取れていれば、基本的にそのとおり稼働する。そのため、ソフトの中身がわからなくても、その機能と入出力の部分を理解すれば、新たに作らずに活用することが可能だ。ハードの思想と全くことなる概念だ。
そのためソフト屋さんは、全てを時前で作るのではなく、既に世の中で動いている部分に対しては、その部分を活用して、不足する部分。自分たちが力点を置く部分を自分たちで開発して結合さえることで全体の機能を提供しようとする。まさにプラットフォームを活用する発想だ。
この理屈はハードであれ、ソフトであれ、技術者では当然にすんなりと理解できる。が、邪魔をしている思想に、「俺達よりも規模の小さな企業が作ったソフトを活用するのか・・・」とか「これまで競業していた企業の仕組みを導入するなんて・・・」という思想が入り込み、行動や意思決定を鈍らせている事実を多数観察できるのだ。
思考のトレーニングの中で、固定観念を時、まっさらな状態で取組むことの重要性を指摘するが、三つ子の魂百までというように、大きな阻害要因になっているのだ。
新規事業の旅(その21) 現場とトップのギャップ
新規事業の旅(その20) 自前主義の呪縛とイデオロギー
新規事業の旅(その19) モノからコトへ転身できない企業
新規事業の旅(その18) アンゾフ再び
新規事業の旅(その17) 既存事業の市場進出の場合
新規事業の旅(その16) キャズムを超える
新規事業の旅(その15) 偶然と必然
新規事業の旅(その14) 経営陣のチームビルディング
新規事業の旅(その13) ポジションに考える
新規事業の旅(その12) 山の登り方
新規事業の旅(その11) 未だメーカーと称す危険性
新規事業の旅(その10) NBとPB
新規事業の旅(その9) 採用
新規事業の旅(その8) 自分ごとか他人ごとか
新規事業の旅(その7) ビジネスモデルをトランスフォーメーションする
新規事業の旅(その6) 若手の教育
新規事業の旅(その5) M&Aの活用の落とし穴
新規事業の旅(その4) M&Aの成功
新規事業の旅(その3) よし!M&Aだ
新規事業の旅(その2) 既存と新規は別の生き物
新規事業の旅(その1) 旅のはじまり