電力が「や・ば・い」

2022年8月3日 水曜日

◇DXへ3つの不足

原田です。

DXにWEB3、ますます高度な情報化社会へ拍車がかかっています。こうしたなか、その実現を妨げる3つの不足があります。それは「人材」、「半導体」、そして「電力」です。これからどうも「電力」がやばそうです。

人材に関しては特にAI関連の人材が不足しています。大手企業はリスキリングに力を入れています。新聞やビジネス誌の記事を読むと、かなり手厚い待遇です。給料をもらいながら、最新の知識を存分に勉強できるなんて、しかもその知識を使える場所があるなんてうらやましい限りです。AI人材は世界で引っ張りだこで、多く若い人たちがこの分野へ進んでいます。さらに中高年への教育体制も整備されています。ある程度、不足感は減っていくかなと思います。

半導体は現在あらゆる機器に組み込まれています。それもプログラムを実行するだけの単純なものでなく、高性能、小型化、低電力消費、高耐久性が求められます。半導体不足の原因は実に様々要因が複合的にからみあっています。コロナ禍によるリモートワークの進展も大きな一つの要因だっと思います。それでも半導体は需要があれば、供給が増えるので、いずれは解消されると思います。

そしてこれから本格化するのが電力の不足です。日経ビジネスの記事で、国立情報科学研究所の教授が「5年ほどしたら、動画配信やメタバースに制限がかかる可能性がある」と警報を鳴らしていました。これまでのように、思う存分に動画を観たり、ゲームで遊んだりできなくなるかもしれません。当然、仕事にも影響はあるでしょう。

◇増加する電力消費

現在、ウクライナ情勢の影響もあり世界的にエネルギー価格が高騰しています。日本でも冬にはかなりの電力不足になりそうです。世界的にカーボンニュートラルへの取り組みが進むなかで、昔のように化石燃料には頼れません。だからといって日本の場合、原子力発電の割合を高めるのも、議論がまとまらないような気がします。

このような背景のなかで、我々が使う一人当たりの電力は年々急激に上昇していると思います。思いますというのは正確なデータを測ることができないからです。

スマホで映画を観るとき、消費する電力はスマホのバッテリーだけではありません。大量のデータを処理するために、ネットワークの向こうでは、様々な通信機器、そして巨大なデータセンターにある高性能のコンピューターが稼働しています。こうして考えると我々が実際に必要とする電力はかなりのものになると思います。

科学技術振興機構は、2021年の発表で、ICT関連の消費電力の著しい増加を予測しています。30年までに、データセンターで6.4倍、ネットワークで4倍に増加するそうです(18年と比較)。インターネットのトラフィックも年率20%を超えて増加しています。その半分は動画配信です。当然、その割合が高いのは、みんなが大好きな「YouTube」と「ネットフィリックス」です。

◇スケールが違うビットコインの電力消費

さらに、すごいのが、ビットコインのマイニングの消費電力です。ビットコインの仕組みがわからないとピントこないかもしれません。ビットコインでは、複数の民間の事業者がマイニングという作業を行います。このマイニングを行う事業者は営利を目的とし、高性能をコンピューターを所有しています。このコンピューターの電力消費も半端ないのです。

ここで突然、中央アジアのカザフスタン共和国が出てきます。カザフスタンは、ビットコインのマイニングに国家として協力的で、電力も安いため、マイニングを行う会社が集まっています。中国でマイニングを禁止された会社も相次ぎ流入しています。結果として世界第2位のマイニング電力消費国家となりました。電力消費の増加率が21年は8%という以上な伸びでした。カザフスタンでは原子力発電の新設を検討し始めているということです。

仮想通貨はビットコイン意外にも、様々な種類のものが出てきています。その基盤となるブロックチェーン技術は、これからのWEB3の時代へ向けてより多くの分野、用途で使われることが想定されます。

ますます使われる電子機器が高性能になり、使われるデータが増加し、消費する電力も増加していきます。こうした背景の中で、化石燃料には頼れず、簡単に原子力も使えないのです。カーボンニュートラルへの取り組みもまったなしです。本当にいったいどうするのか、だれか真剣に考えているのかなーと思います。

◇来たるべき電力不足に向けて

これまで多くの企業ではDX化に向けて、人材、半導体の不足に悩まされてきました。それが近い将来、慢性的な電力不足に悩まされることになりそうです。

ではどうすればいいのか?大企業であれば再生可能エネルギーを使った発電設備を建設すればいいかもしれません。でもそこまでの投資ができるのは、世界でもごくわずかの企業です。中小企業は手の内ようがないのでしょうか?

電力不足への対策は、時短とリモートです。短い勤務時間でも生産性が上がる仕組みを作ること、そしてリモートを進めることです。電力不足が深刻化すると、夜間の電力消費に制限がかかると思います。これまでのように夜遅くまでみんなで集まって働くことは難しくなると思います。コロナ禍の行動制限がなくなったあとには、電力不足による行動制限があるかもしれません。

時短とリモートは地味な取り組みですが、他に決定的な方法はありません。でもこの2つをうまく取り入れれば、企業の生産性は向上します。たとえ深刻な電力不足が起こらなくても、その取り組みは企業のメリットになります。電力不足が本格化する前に、本気で取り組む必要がありそうです。



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