早嶋です。
前回、NBとPBで顧客接点を持つ販売店やECサイトが力を増し、上流工程のNBを保持するメーカーに対して自社のPBの製造依頼をする小売業が強くなり、立場が逆転する話を書きました。今回は、この取組を法人ビジネスに当てはめてみます。同じことが言えるのです。
(エンドの声が聞こえないメーカー)
まず、メーカーの成り立ちを考えてみます。メーカーですから、社会課題に対して何らかの解決策を商品(製品・サービス・技術)で解決する事を考えます。そのため起業するメンバの多くが商品を企画して実際に形にするチームです、いわゆる技術屋さん、モノづくりを主体とするチームです。当然、企画立案したアイデアが直ぐに形になることは無いので、思考錯誤をしながら商品開発を進めます。
起業したチームは潤沢な資金があるわけではないので、常に資金繰りに奔走します。商品化は時間がかかり集めたお金も瞬時になくなる。そのような産みの苦しみが常に続きます。そして漸く商品が完成しても、売れません。商品化に力点を起き、マーケティングして顧客にアプローチすることを考えていないからです。社長がたまたまトップセールスができれば良いですが、その力が無い場合は、売ることが得意そうな企業に販売をいたくします。早く商品を販売してキャッシュを稼ぎたいのです。
とここまで考えてみると、メーカーはモノづくりをするこに力点を置く。販売やその後のフォローは時系列で考えるとだいぶ後の取り組みなので、初めから考えません。実際は、考えてスタートしていると思いますが、商品化がうまくいかず、時間がかかってしまい、キャッシュフローが途絶えて資金繰りが苦しくなると、兎に角商品化に資金をつぎ込み、販売やその後のフォローなどを考える余裕がなくなるのです。
そのため世の中には販社や代理店が沢山存在しているのでしょう。昔は、商品を企画して製造する上流工程が力を持っていました。市場が商品を欲しており、商品を出すと売れたからです。しかし、今はあらゆるものが充足しているため、そんじょそこらのイノベーションでのひねり出さない限り大変です。まず売れません。そのため徐々に販売やマーケティングが強い会社が事業の主流のようになり、メーカーの販売をサポートしていました。そしてスマフォが普及して、皆がSNSで気軽に連絡を取れる昨今、顧客との関係性が強い企業が強くなるのです。
(メンテナンスが強くなる)
法人企業も同様に観察できます。メーカーは、研究と開発が仕事の花形でした。従い、営業や商品のインストールといった現場に近い、顧客に近い仕事はどちらかと言えば、入社成績が低い方々が行く場所。という雰囲気がありました。少なくとも20年頃前は。現場は現場で、いつもインストール納期に追われるので、現場に収めて設置、あるいは機器の立ち上がりが確認できたら次の現場にむかいます。そのため、現場で実際のメーカーの商品が使われている状況を誰も管理していなかったのです。これも20年前。そこに、ようやくIoTやネットワークの技術が出てきた頃に、現場での使徒を監視することが最も価値のある取り組みだ。となるのです。
当然、横河電機やキーエンスのように、現場がすごく重要で、現場でのデータの蓄積を上流工程の研究や開発に活用することが将来の収益を生むことにつながる。という法定式を昔から大切にしている企業は、現場も自分たちの資本参加でフォローを続けます。しかし一般のメーカーはメンテナンス部隊は、地域の販社や下請け会社に委託して相変わらずものを開発しては売ることに精をだしました。
現場では、サイトやプラントを管理する責任者は2年から3年置きに責任者が変わります。メーカーが商品をインストールした数年は、メーカーマターでも定期点検でその商品の稼働状況を把握していましたが、時々現場の担当者が変わるたびに、徐々にメーカー指定の保守メンテナンスの関わりが薄くなり、自分たちで独自に管理するようになるのです。というのも現場の管理者は数年で現場を変わることが多く、そのために評価されるには、日常のメンテナンスコストをいかに安くするか?という極めて短期的な取組でしか考えなかったからです。その結果、現場サイトにどの商品が、どのような理由でインストールしているかを把握している人が極めて少なくなるのです。
しかし、現場ではトラブルがつきものです。現場のメンテナンスを引き受けている会社や地場の企業は、特定のメーカーのメンテナンス知識だけを持ってしてもトラブル解決はできません。そのため時間をかけてどのメーカーの商品がどのメーカーとコミュニケーションを行いながら、どの程度使われているかを体系化して蓄積していくのです。
そして、近年。ここに活路を見出したメンテンス企業は、施設のオーナーに対して、資産を最大限活用するためのアドバイスを現場の責任者ではなく、プラントの専任者、あるいは事業の責任者に対して提案するようになります。これまで断片的にしか現場の資産を把握していなかった事業の責任者は、プラントまるごとの運営ノウハウと知見を持っているメンテナンス屋さんの声は非常に合理的にうつるのす。
そして小売業よろしく、顧客データを握ったAmazonが上流工程に繰り出すように、B2Bの現場においても、メンテンス企業が上流工程のビジネスモデルを研究して、より良いソリューションを提案することができるようになるのです。これを40年前から行っている企業はキーエンスで、2,000億の売上に対して1,200億の利益を稼ぐ理由でしょう。
(データを取得できる技と経験)
現場が今後強くなる。メンテンスを行っている企業からすると嬉しいが、すべての現場やメンテナンス企業に当てはまるとは限りません。大事なことはまず、自分の仕事を完全に把握していることです。そしてクライアントから言われたこと以外に、相手の仕事内容を理解して、その上で相手のメリットを考える視点と行動を常に行うことが大切です。
例えば、メンテナンス企業といっても千差万別です。委託先のメーカーに、この部品をこのルール通り交換して。という指示をマニュアル通りに受けこなす企業は、常にメーカーからいくらで交換してという価格交渉にさらされます。この仕事にも一定の技術は必要ですが、ある程度の人材が経験を積めば誰でもできる仕事です。そのため競争する相手は一定数いるので、需給バランスやパワーバランスによってクライアントからの言い値を受けるしかありません。
今後、力を発揮する企業は、「なんで、この部品を交換する必要があるのか?」と考え、「この部品を活用している機構はどのような目的で、どのような運転をしているのだろうか?」とか、「プラントや設備はどのような人がどのような理由で経営しているのだろうか?」とか、その仕事の上流工程の取組や自分たちの仕事の下流工程の取組を理解しようとしている組織は、「だったらここまで我々が行うことで、上流工程の企業はもっとココに資源を集中できるのではないか?」「だったらそれらを提案しながら我々も価格交渉をしよう」と考える組織です。
現場や顧客接点に近い組織に価値がますということは、普段の取組から意識するだけではお金になりません。そのデータを集めて、分析して、それらをしかるべき相手に提案して納得いただいて、はじめて価値になるのです。しかし、そのような視点で取組提案ができる組織は、小売のAmazonのように顧客接点を基軸に上流工程のメーカーよりも力をます。ということも可能になるかもしれません。
新規事業の旅(その10) NBとPB
新規事業の旅(その9) 採用
新規事業の旅(その8) 自分ごとか他人ごとか
新規事業の旅(その7) ビジネスモデルをトランスフォーメーションする
新規事業の旅(その6) 若手の教育
新規事業の旅(その5) M&Aの活用の落とし穴
新規事業の旅(その4) M&Aの成功
新規事業の旅(その3) よし!M&Aだ
新規事業の旅(その2) 既存と新規は別の生き物
新規事業の旅(その1) 旅のはじまり