安藤です。
今回は、メンタルヘルスに活用できる「ポリヴェーガル理論」です。
コロナ禍での働き方の変化、高度情報化社会における職場でのテクノストレス、経済的不況によるリストラや就職難、核家族化などからくる仕事と育児の両立の難しさ、また、高齢化社会のなかでの介護疲れなど、現代社会には、ストレスがつきものです。また、「他人とうまくやらねばならない」「どう他者と関わっていったらよいかわからない」、SNS時代での「キャラ」から、本音を言えずにためこんでしまい、自分自身が調子を崩す人が増えているように感じています。私自身もストレス耐性がうまくいかなくなった時は、胃腸に異変がきます。胃カメラ検査をしても何も胃腸なし、大半は自律神経の問題です。
そこで、今回は、メンタルヘルスにも活用できる知識として、自律神経系についてお話をさせていただきます。自律神経系は体の臓器のほとんどに通っています。自律神経系は、意思的な体の動作をつかさどる体性神経系に対して、人間の意思とは関係なく生存を守る神経 系です。 主な働きとしては、①消化の抑制・促進 ②心拍の加速・減速 ③気管支の拡張・収縮 ④筋肉の緊張・弛緩です。自律神経は、交感神経と副交感神経の働きに分けられ、興奮と沈静化の役割があります。
交感神経は、心拍数、呼吸、血圧を上げます。素早い動きができるように血液を消化器官から筋肉に移します。副交感神経は、筋緊張のゆるみを促し、心拍と血圧を下げます。消化を促したり、呼吸を遅くします。血液を抹消結果に送ったり、免疫系統の機能を回復します。(参考:Levine)
ポリヴェーガル理論は、非常に学際的かつ複雑なもので、まだ解明されていない脳や神経系の働きや、その関係性も含めて捉えようとする壮大な理論です。「心」と「身体」が切り離されている存在ではなく、自律神経系を通して全体として機能していることを明快に説明しています。身体からの信号が私たちの思考や自己像、世界観に多大な影響を与えているといわれています。
「ポリヴェーガル」とは、「複数の・迷走神経」を意味し、「多重迷走神経理論」という訳語が使われています。ポージェス博士は、自律神経系の発達の進化を軸に考察し、私たちヒトの自律神経系には3つの神経枝があると論じました。その3つとは太古の魚類に備わっていたとされる、進化的に古い迷走神経である「背側迷走神経複合体」、さらに硬骨魚の時代に現れたとされる「交感神経系」、そして、哺乳類のみに見られる新しい迷走神経とされる「腹側迷走神経複合体」です。「腹側迷走神経複合体」は、豊かな表情を作ったり、声のトーンを調整して自分の気持ちを伝えたり、相手からの友好の合図を受け取ったりなどの、人と人とがおだやかにつながり、交流するために欠かせない働きを担っています。「交感神経系」は、主に活動するときに使われ、危機に瀕すると「戦うか・逃げるか」を選択します。「背側迷走神経複合体」は消化吸収や睡眠などを司っているが、生命の危機に瀕すると、「凍りつき反応」を引き起こします。「凍りつき」の状態では、思うように身体が動かなくなり、呼吸や心拍が遅くなり、いわゆる温存モードに入ります。この、戦うことも逃げることもできず、凍りついている状態にあるのがトラウマを抱える人とされています。
「腹側迷走神経複合体」が健全に機能している人は他者から非友好的な態度を取られても、社会的交流を心がけることができ、容易に交感神経系に乗っ取られて闘争・逃走反応に走ることはめったにありません。「腹側迷走神経複合体」がバランスよく働いているときは、「背側迷走神経複合体」もよく機能しているので、胃腸をはじめ、全身状態が良好です。また、脳にも十分な血流がいきわたり、明快な思考、的確な状況判断などが行えます。こうした自律神経系の働きが乱れると、臓器が調整不全に陥り、思考も乱され感情も荒廃します。
そこで、ここで神経をバランスとる簡単なエクササイズを5つご紹介しておきます。①「ぼー」「ぶー」の音を声にだす。②顔をぎゅーと集めます(表情筋を動かすので腹側迷走神経を刺激する)。③グー・パーと手を握ってほどく。④ふーっと、1~2回、口呼吸をする ④キョロキョロ 単にきょろきょろ周りをみる(腹側迷走神経が刺激され、忙しかった思考が少しストップしてくれる)。
ストレス状況から逃れられずに、メンタル不調、体調不調をたどってしまうことがあります。人間が生きていくうえで、社会的な要請に応えようとすることは必要ですが、時には息抜きをし、自分を追いつめすぎないことは大切です。ぜひ、5つのエクササイズを試してみてくださいませ。
参考資料:ステファン・W・ポージェンス/花丘ちぐさ(今ここ:神経系エクササイズ)
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