新規事業の旅 その5 M&Aの活用の落とし穴

2022年6月10日 金曜日

早嶋です。

M&Aの目的が新規事業の創出であれば、支配権の獲得にこだわる必要はありません。通常、M&Aという発想になった場合、株式を100%取得するイメージを持つと思います。しかし、実際はマイノリティ出資から入る場合も多いのです。

国内では毎年ざっくり4,000件のM&Aがされています。例えば、2021年は4,280件です。そして支配権を獲得する買収は1,693件で全体の約4割にとどまります。皆さん、「えっ?」と思ったことでしょう。2,111件で全体の約5割は資本参加で残りが合併や事業譲渡、出資拡大というのが実際なのです。

つまり、大手企業でM&Aを行っている企業の5割は支配権を獲得するのではなく資本を入れて関係を強化するなどの取り組みを行うのです。

これには理由があります。仮に、自分たちと事業シナジーを起こしそうな企業があった場合、必ずしもその企業がを傘下に収めることが成功とは限りません。その企業と一緒になって、新たな取組をしたり、自分たちに不足する部分を手伝ってもらったり。或いは、自分たちが持つ強みを活かして一緒に成長することだって考えられます。

その際、「いきなり買収したいです!」というよりは、「我々は、この様なことを考えています。その際、御社の●●が必要です。是非一緒に行いませんか?」と業務提携から始めると、それは営業の延長なので、普通は話を聴いてくれる可能性が高いでしょう。そして、実際に仕事をする中で、人材交流を図り、その企業と一緒に成果を出せるのかを、実案件ベースで確かめます。

M&Aの場合、仮にその企業を買収するとなるとごく僅かな時間で、限られた資料を確認して、投資をするか否かを判断しなければなりません。買収する企業が大企業で完全にガバナンスが取れている企業であれば一定の分析は出来るでしょうが、多くの場合は分析する資料がそもそも不足している状態がほとんどなのです。

一方で、業務提携や業務資本提携であれば、一緒に事業を取り組む際に必要な費用を出資という形で出し、その際も1%から3%程度の比率に抑えます。そして、半年から1年程度かけて一緒に事業を行いながらビジネスDDや財務DDなどを行うことができるのです。

古い発想をお持ちの経営者は、シェアを全て獲得しないといけないと思うでしょう。しかし、マイノリティ出資でも優先的取引や人材交流、特定分野での協業を業務提携する際の契約に盛り込むことで、双方のWinを最大化することも可能です。

そして、実際に仕事をしながら互いに関係が深まり、更に出資をしても良いな、とか。その事業を一気に拡大するタイミングで更に第三者割当増資を行い、出資比率を高めるとか、そのタイミングでM&Aするなども可能です。

何が何でもM&Aという考え方は危険です。M&Aは出来るかもしれませんが、本来の目的は何だっけ?と冷静に考えるとわかりそうなのですが、これが分かる人が少ないにです。



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