DX化の目的をまず設定しよう!(店舗事業3)

2021年11月11日 木曜日

早嶋です。

店舗事業についての考察と提案の3回目です。
初回は、「対前年比管理をやめよう!
2回目は「本部が集客機能を担当しよう!
でした。

多くの店舗事業が売上低迷で市場も落ち込んでいます。そのため去年の数字を参考に一喜一憂しても意味がないので、過去数年の推移をみて、企業としての大きな方針を掲げることの重要性を書きました。そして、従来のように顧客とコミュニケーションをする手法が直接行うしか無かった時代は店舗での集客は意味があったと思います。近年は顧客のデータを活用しながら適切にツールやデバイスを活用した取り組みが可能です。そうなると店舗は一見さん対応の発想から常連さんの対応にシフトしていくことが大切です。であればセールスに対しては本部でインサイドセールスの機能を持って店舗と連携するのが自然です。

上記のような変化は、当たり前のように見え、そうだね。となりますが、いざ過去のルールで行っている組織は、変化に戸惑います。30店舗以上ある店舗事業は、店長、店長を束ねるスーパーバイザー、そして本部という3段階の構造を取っているところがほとんどです。そして、その役割ははじめから決めたのではなく徐々に拡大していく中で作ったので、結果、店長よりもスーパーバイザー、スーパーバイザーよりも本部の人間が経験や能力が高いという構図になっています。

しかし、ここに盲点があります。近年のDXに乗っかり、本部はデジタルの導入を考えようとします。本来は、DXを行う場合、過去の仕組みをアナログからデジタルにするのではなく、将来の店舗運営の戦略に応じて全く新しい業務プロセスをベースにデジタルで仕掛けを作っていくべきです。

が、本部の人間は現場を知りませんし、デジタルについても精通していません。知っていてもそれは5年、10年前の発想です。本来は、ここにスーパーバイザーが入り込んで現在の店舗運営のコンフリクトを整理して、将来の仕組みを提言するとよいのですが、スーパーバイザーは平均で10店舗程度の店の売上責任を持たされるので、将来のことを考える余裕がなく、管理というまさに価値の無い仕事にどっぷり時間を費やした結果、もっとも思考が硬直化しています。

そこで本部は、外からITの専門家を呼んで仕組みを作ろうとします。その際、細かなやり取りは本部のおえらいさんが出来ないから、若手社員を本部に入れてシステム開発や仕組みを整えようとするのです。ここに更に盲点があります。若手社員は全く店舗の過去から現在、根本的な問題や課題、今後どうするとよいのか?などを全く知らずに、単にアナログを電子化することがDXだと勘違いしているのです。

さて、上記を改善するためには、30店舗以上のDX化をする場合、役者を次のように分けてみます。
A:店長と現場
B:スーパーバイザー(SV)
C:本部
D:インサイドセールス部隊
E:システム構築部隊
です。Dのインサイドセールス部隊が出てくるのは、店舗の一見客を店舗の常連、馴染み客にしていく際のフォローを本部から行うために、チームにあらかじめ入れておく必要があります。

①目的設定
DX化の目的を、生産性を上げ、なじみ客を増やし、結果的に将来の構造変化に対応できる強い組織を作ること。とします。その旗振りは、Cの本部が行います。

②ビジョンの構想
まず、5年先くらいに徹底的にデジタル化と理想の組織が出来た場合の組織の動きや毎日の実際の仕事の流れについての理想を語ります。その際、すでにベストプラクティスとして他者や他業界や他国の事例を断片的でも良いので参考にしていきます。

結構、他者を知るという取組が弱い本部は、ここに瞬間的にコンサルを入れて、混合のプロジェクトチームについて短期的にインプットしても良いでしょう。

③過去から現在の棚卸し
多くが歴史を知らないまま、ないがしろにしたままDXをすすめるので現場の都合やなぜ、敢えて現場がそのような取組を行っているかを知らないで全否定して、導入がうまくいかない場合があります。そのために短期的でも良いので店舗事業の成り立ちや当時の状況、現在の規模になるまでに苦労した点などを理解します。

ここはA:店長やB:スーパーバイザーにガンガン話をしてもらい語ってもらいましょう。店舗事業の盲点は、店長でもSVでも仕事はできるけれども、他者に話がするのが下手な方が山程います。その場合は、やはりコンサルを雇うか本部が上手に仕切ってファシリテーションに徹して、それぞれの体験を引き出して組織のナレッジにすることに徹することが大切です。

④システムの構築
上記が出来て、初めて理想のシステムのイメージが固まります。ただ、おそらくこの理想のシステムは、上記の①から③をしなくても、システム屋さんが提供した内容と見た目はかわりません。しかし、①から③を敢えてのAからEを交えることによって、システムに魂が宿ってくるのです。DX化のシステムは器でコピペが簡単にできるものですが、コピペをして現場がすぐにつかえるかというとそんなモノではありません。なので魂を注入する仕組みが大切なのです。

上記までを3ヶ月程度の突貫で行うことをおすすめします。ダラダラやっても意味がありません。そのため本部がしっかり責任を持ち、プロジェクトチームを横断的に作ります。

その後、30店舗程度ある場合は、10%の数店舗レベルで試験導入して、現場とインサイドセールスとシステム部隊の連動をみて行きます。システムは、随時更新して随時改造が出来るように内製化するのが理想です。もし、それが難しいようであればシステム開発会社に対してのお金の支払を工夫して、随時アップデートが出来る体制をつくります。ここに関しては、近年の開発思想がない本部であれば苦労するので、コンサルを入れるか、成功している企業から人を借りてくるか工夫が必要です。

⑤導入フェーズ
上記が出来たら、店舗、SV、本部、インサイドセールス、システム部の成果を議論します。通常、システムが出来たら終わりだと勘違いしますが、システムは現場に対応させながら、一方で本部の戦略にマッチしていくことが大切になります。

理想は、SVを廃止してインサイドセールスに人員をシフト。インサイドセールスが店舗に顧客を送客してその後のフォローに責任を追わせる役割をもたせることです。本部は、全体的な店舗のコミュニケーションを担当して、店長は送客された顧客に対しての店舗サービスを効率化、最大化するための現場に責任をもたせます。加えて、インサイドセールスが事前に予約を取って来店時の商品に対してはある程度確定しているので現場の裁量で顧客に気持ちよくクロスセルやアップセルの提案ができれば、その追加分の収益が店長の評価につながる。という発想も良いと思います。

いずれにせよ。AからEが各々に分断したKPIを設定するのではなく、全店舗で最も効率が高まるKPIとゴールを一定期間検証しながら決めていくことが大切です。

⑥教育フェーズ
従来の店舗ビジネスは、店長が独自に一応標準化された店舗の教育を行っていました。その資料は多くは紙で残されているので、ここに対したは動画を活用した教育を導入し、基本的なインプットは店長が話をするのではなく、企業の中で最も得意で上手なひとが動画に収録して、それを見せる。そして店長はOJTに徹するなど、工夫をしていくことが大切です。

そして、その教育も常に⑤の導入フェーズで議論した方針に乗って、部分最適にならないようにチューニングします。

ということで、今回は、店舗事業をDX化する際のチームの話、導入の仕方の話、教育の話に対してざっくりと整理してみました。



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