集合住宅の出口なし

2021年9月20日 月曜日

早嶋です。

分譲住宅の建替。国土交通省によればH31年4月1日時点の調査で278件の事例しかありません。分譲住宅の検討が始まる築年数が30年頃からですので、そのポテンシャルは約200万戸。マンションに換算して1棟あたり50戸としても約4万棟分の可能性があるなか278件というのは誤差の範囲です。

一般的に言われる建替が困難な理由は、1)費用負担の話、2)建替の意思決定が難しい話、3)法的な問題があります。

1)費用負担の話として、建替負担の費用相場はおそよ1,800万円程度です。解体、建築、調査、手続き等の費用の総計です。従来、容積率いっぱいに再建築して余った戸数を販売あるいは賃貸するお金でキャッシュを賄える事例もありましたが、都市部のマンションなどでは容積率の緩和がなく難しいです。

2)建替までの意思決定と流れです。準備、検討、計画、実施という段階を踏むと推定されますが、スタートの壁はマンション管理組合の合意です。検討では専門の会社を入れて改修か建替かを再度調査しますが、やはりベースは区分所有者の意思決定です。計画段階では具体的な計画と費用を明らかにして区分所有者の4/5の賛成が必要です。そして実行という流れです。平均的に10年程度の期間を有するといわれます。

3)法的な問題は、既存不適格です。建築時は当時の法律でOKだった物件、それが今の法律には適合しないという建物です。1970年代、80年代は各種法整備が整う前の物件が多いのです。ここに1)の議論にあった容積率もあります。

最近、上記の取組を進めている不動産会社の方とお話をしました。そこは分譲ではなく集合型の賃貸なので住居者の合意を取ることで先に進む話でした。しかし、「住民とのコミュニティがなくなると生きていけない」、「立地条件が変わると生活ができない」ということで、まるごと新たな引越し先などが見つかって、そのリッチがピシャリ同じような条件ではないと難しい。という思惑が見えてきたのです。

そもそも論ですが、分譲も賃貸も両方引っくるめて、住宅を建築して引き渡すことで目的を果たしてきた会社が圧倒的に当時から多かったのですね。購入する人も、30年先のコトを考えるわけもなく住み続けた。あっという間に30年という期間が来て、事前に予測できたトラブルに巻き込まれている。というわけです。

住宅の提供は、生活者に対して快適に生活を提供「しつづける」とした場合、60年位のスパンで見ないといけないのだなと思います。ただ、提供側はそこまで長いスパンで見ることはできないですよね。ということで、この手の問題は国が介入するか、高いお金を払える住宅を持てる人でない限り難航することが予測できます。

ジョブ理論で言うところのビックハイアに提供者も利用者もフォーカスしすぎているということでしょうね。



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