早嶋です。
ディープフェイク。ひと頃よりも紙面に登場するようになった言葉です。これは先日お話したシンセティックメディアを活用した悪用の総称です。記憶に新しいのは2019年にFacebookのマークザッカーバーグ氏が語っている動画がネットに拡散されました。更に、当時のトランプ大統領をバラク・オバマ前大統領が批判する動画が流れていました。しかしどちらともフェイク。シンセティックメディアを活用して、悪意をもって大衆操作目的、或は愉快犯的な手口として拡散されたものです。
この技術は一般の方々に普及しているようで知られていないと思います。そのため画像や動画は、多くの一般市民にとって、やはり信憑性が高いと考えられるかもしれません。例えば、選挙で悪用することも可能です。ある属性の方々が崇拝する人がいたとします。その人の画像を活用して、選挙に有意な発言をしてもらうのです。そしてその動画をSNSなどを活用して拡散します。まさに活用次第では様々に悪用できることがイメージできるでしょう。
ITの世界では、この手の技術は大概がポルノ業界から出始めると言われます。実際、そのような合成動画も18年頃より出回り世界的にも問題視されるようになっています。まぁ、技術が躍進する裏では常に何か困ったことが起きて、それが後から法などをベースに整備されるようになる。ということを考えるとしばらくはこの手のトラブルが続出することが予測できますね。
ディープフェイクの論点は3つあります。個人情報保護、名誉棄損、そして知的財産です。例えば、顔情報や音声情報を無断で借用してシンセティックメディアを活用するとこれは明らかに個人情報の観点からNGです。創られた動画により、著しくその個人が不利な立ち位置に置かれ経済的な損失を被った場合、名誉棄損になり、損害賠償の対象にもなるでしょう。そして、基となる動画やストーリーが誰か第三者の権利で守られている場合は知的財産を脅かす対象になるかもしれません。
法的な内容は専門家に譲りますが、現時点でグレーな部分が多いということは、その隙間をかいくぐり活用する企業や個人が続出することが予想できます。各々の倫理観に従って運用となると国籍や国民性、信条や性格によって運用がバラバラになるでしょうからとても厄介です。