◇サブスクリプションビジネス百花繚乱
原田です。
現在、動画のサブスクリションビジネスはまさに百花繚乱です。圧倒的に強い「Netfilx」、Amazonの「Prime Vido」、ディズニーの「Disney+」、アップルの「Apple TV」など、世界に冠たる企業が運営しています。
日本でもTV局系列の「hulu」、「UーNEXT」、「FODプレミアム」などが、一気に立ち上がりました。その他にも多くの企業が参入しました。種類もアニメ専門、スポーツ専門など沢山あります。
資金とブランドがあれば、新規参入は簡単なので、続々と大手企業が参入しました。しかし、現状を見ると動画系サブスクリプションは、「Netfilx」の一人勝ちのようです。この競争が激しい業界で、「Netfilx」は世界的に値上げをしました。現時点では、初回の期間無料のキャンペーンもやっていないようです。続々とオリジナルの作品をリリースして、ヒットさせています。
◇「Netfilx」の「強み」の源泉
「Netfilx」一人勝ちの背景には、コンテンツ作成能力という「強み」があります。2019年のコンテンツ制作費用は約1兆5千億円です。NHKの年間製作費の5倍です。もちろん今は、更に多額の費用をかけていると思います。
制作費用が潤沢なので有名な監督、俳優、様々なクリエイターなど優秀な人材が流れ込んでいます。日本のお家芸のアニメでも、アニメーター「丸抱え」の仕組みを作っています。日本の制作会社と提携し、アニメーターの育成費から、その生活費まで負担しています。
お金が潤沢なだけでなく、監督にはかなりの裁量が任されているようです。TV局が敬遠するような際どい内容の作品を作ることもできます。日本のテレビ局のように過剰な自主規制に縛られません。アップルやディズニーのように今まで積み上げてきた守るべき企業イメージもありません。この制作の自由度も大きな魅力です。
現場はお金があるだけでなく、才能のある人が集まり、いい作品を作りたいという意欲に溢れています。
「Netfilx」のコンテンツ作成については、膨大な利用情報をAIで解析してユーザー層に合わせて好みの映画を作れる云々と、本や記事に専門家が書いてあることが多いです。圧倒的な量のデーターベースとその解析で、ユーザーをいくつかの層に分けて、ヒットするコンテンツを企画できるようです。しかし、何より現場の意欲の高さが強みの源泉だと思います。
◇ニッチビジネスの可能性
「Netfilx」一人勝ちの構図が形成されるなかで、ニッチなサブスクリプションのビジネスチャンスが広がっています。
注目しているのがダンスのDリーグです。プロのダンスチームが、1年間複数のラウンドで順位を競い、最終的なチャンピオンを決めます。2020年8月に発足したばかりですが、すでに名だたる企業が、スポンサーやオーナーに名を連ねています。
専用のアプリをダウンロードし、1年間6,600円の有料会員になると様々な特典がつきます。そのなかで面白い取り組みは、有料会員が、ラウンドの審査ポイントを得られることです。
Dリーグでは、100点満点の計算で順位を競います。その得点は、プロの審査員による得点と、有料会員による得点を合わせたものです。単に視聴するだけでなく、有料会員が得点を付与することができます。その勝敗に関わることができます。インタラクティブなエンターテイメントができています。
今の若い人たちはダンスがより身近になっています。ダンスは中学体育の必修科目です。若い人は、自分たちのダンス動画をTikTokに投稿しています。ダンスは単なる娯楽ではなく、コミュニケーションツールであり、自己表現のツールです。これからも競技人口は増えていくと思います。周りを気にせず大音量で音楽をかけてみんなでダンスが自由に踊れる場所のニーズはあると思います。そしてアマチュアチームの発表の場もニーズがありそうです。そう考えると、ダンスは、さらにインタラクティブにリアルとネットを融合できそうです。これはコンテンツが一方通行の「Netfilx」ではできないことです。
◇スモールサブスクリプションビジネスの可能性
魅力的なコンテンツがあり、コアなユーザーがいて、インタラクティブなエンターテイメントが実現できれば、小さな企業でも優良なプラットフォームが構築できます。更に、リアルのサービスと組み合わせて収益を上げる仕組みができれば、その優位性は確固たるものになります。
実際に、タレントやビジネス系の有名人がそのようなプラットフォームを作っています。しかし、これはファンクラブの発展形のようなものです。今後、個人のネームバリューに頼らない、一つのビジネスのカテゴリーとしての、小さな確固たるプラットフォームが生まれてくると思います。
今はアプリの開発も多額の費用はかかりません。アイデアと熱意があれば、ビジネスを立ち上げることができます。そして、その後の工夫と努力の積み重ねが重要です。もちろんサラリーマン感覚ではダメです。動画系サブスクに参入した大手企業の死屍累々たる状況を見れば、それがよくわかります。みんな同じような内容だし、同じようなキャンペーンをやっています。何かびっくりするような新機軸のアイデアはありません。何か斬新なアイデアがあっても、組織内(巨大なグループ)の稟議や調整でなかなか実現できないでしょう。
何より大切なのは、関わる人のチャレンジ精神や意欲です。それがなければ人の知恵と工夫は生まれません。テクノロジーが発展しても、ビジネスの成功を決めるのはやはり人の感情です。