M&Aを行う、これから行う実務担当者に向けてのメッセージ、その3

2021年4月27日 火曜日

早嶋です。

何度かに分けて、これから、或は既に企業のM&A担当者として実務を行っている、或はこれから行う担当者に向けてのメッセージです。協会の取組を紹介しながらも、考え方やとりみ方、そして騙されない考え方や失敗を防ぐ取り組みについて紹介しています。

2回目まで読んで、一度買い手として整理をしてみましょう。年間に1500万円から2000万円を平均給与を支払える会社が本気になってもM&Aの成約件数は300件程度がマックスです。当然に、案件を様々な手法で集めていき、それらをセールスする手法は日々ブラッシュアップしています。ですから、事業会社の担当者が片手間で案件を探したところでまずは太刀打ちできないのです。

それでも私は、案件自体はその企業のトップが責任を持って探すことが効果的だと思っています。M&Aアドバイザーの会社から「あなたの会社に興味を持っている企業のリストを持っています。」とレターを毎月もらったところで、オーナー経営者としては理解をしないし、そのアドバイザーの会社にコンタクトしようとは思わないでしょう。

一方で、我々は〇〇という業界で△△の技術と経験のもと〇〇年以上の実績があります。今後、弊社では■■というビジョンのもと、経営資源を〇〇の分野にシフトして、拡大したいと思っています。その際に、△△のエリアを自前で行っても時間がかかることをシミュレーションしています。そこで御社と業務提携を結んで、〇〇の取組ができないかと考えています。というように、バイネームで取り組みたい内容と、一緒に行いたいことを真摯に伝えて、正面からアタックすることも可能だと思います。

実際に、複数社で並行的に上記の取組をしながら資本政策ありきではなく、戦略を達成するための手段としての業務提携などを視野にアプローチして現在進行形の企業がいくつかあります。

しかし実際は、20年程度の低迷した社会において、既存の事業がいよいよ終焉を迎える、或は数年先が見えなくなるなかで、イノベーションやら新規事業やらM&Aやらの抽象的な概念の言葉が社内で独り歩きして。いざ部隊が出来上がってもトップの方針が良く分からない。という状況を多々観察します。

もしそのような状態でM&Aの大手アドバイザリー会社に相談を持って行けば、かならず、待ってましたと言わんばかりに具体的な案件やいいお話をされること間違いなしでしょう。

しかし冷静に考えると極めておかしな話なのです。本来は、自社の合致した条件でなければ断るか、或は相手に譲歩頂くかが筋なのですから。また、市場価格よりも高く値段がついている状態で譲り受けること自体もおかしな話です。自社の戦略に合致していても、そのオプションを評価した時に、自社のルールから外れる場合は、明確に断ればよいでしょうが出来ないのです。

その理由は戦略の軸がないことだと思います。

もし、どうしても提案されている会社がが良ければ、相手と交渉をして、100%の譲渡ではなく、マイノリティから始めることだって良いのです。場合によっては、アドバイザリーは買い手に対してそのような提案を進めても良いでしょう。また、状況が不確定であればしばらく業務提携で互いの様子をみても良いのです。

しかし、このような提案は絶対にアドバイザーの会社は行わないでしょう。理由は明確で、アドバイザーの会社は売買金額に応じたインセンティブを成功報酬で受け取るからです。仮に100%の譲渡で30億の売買価格の場合、10%の譲渡だと3億程度になってしまいます。アドバイザーの会社としてはそれまで行ってきた苦労を考えると、やはり100%の契約を巻いてもらった方が自分たちの手取りも高くなります。こう考えると、本来の利害が一致していない関係であることが分かると思います。



コメントをどうぞ

CAPTCHA