ジョブ型雇用を取り入れながらマネジメント層のコーチング能力を高める

2021年2月17日 水曜日

早嶋です。

職務内容に応じて求められる能力や経験を明らかにして職務明細書(job descripution)を示した上で雇用する。従来の新卒一括採用から社員の適応をみながらポストに充てていくメンバーシップ型の対局であるジョブ型雇用の導入が増えつつあります。入社年次に関係なく、そのポストに相応しい人材を充てる制度なので、直感的にはもっと早くから導入していればと思う方も多いでしょう。

日本では、制度上職務を規定せずに多様な仕事を経験させてキャリアを形成してきた社員が多いため、「自分の強みはなんですか?」「仕事におけるあなたの役割はなんですか?」と問うても答えを返せない社員が多いのも現実でしょう。高度経済成長期に制定された組織制度が長らく低迷、多くの方が心の底では規定していると思います。そのような組織は結果的に積極的に仕事をすることもなく、何かしらの改善を提案することもなく、単にマネジメントの指示通り動いていく。

私の仮説ですが、ジョブ型雇用を導入したい企業の多くが、マネジメントが不活性で指示待ち人間が多い職場のように感じます。このような職場の特徴は、過去5年、10年以上も組織の大きな変革は無く、過去と同じく繰り返しの仕事を行っている。業績は悪くは無いがピークの頃を偲んでなんとなく今の仕事をこなしているが先が見えない。だからと言って多くの社員は転職することも無く今の仕事のしがみついている。自分の能力が今の組織外で活躍するとも思っていないし、転職することで給与が下がる恐れを持っている方が多いからです。

トップマネジメントは社員に対して新規事業の方向性を説いているが、自分たちで動くこともせずに、数年後の構想すらあやふやなまま。若手やマネジメント層から提言があれば、前向きに進む前に出来ない理由を並べるか、できる証拠を示せといい新規の提案を潰している。自分たちも既存の事業モデルが出来上がった頃にマネジメントになっているので今の事業を維持拡大することはできても、新たに創造する経験が無いので実はやり方がわからないのです。そして特に共通の項目としてみられる現象が本質的なコミュニケーション不足です。何かの方針に対してはトップダウンで、その方針が決まった背景や経緯をごく一部しか知らず、共有させる必要性や意義もわからない。現場は常に、具体的な指示に変換した取り組みが降りてくるので「なぜ」行うかなどを5年、10年考えたことが無いので自分たちが行っている行動や業務が実は明後日の方向を向いていても気が付かないし思考しない組織が出来上がっているのです。

そんな組織の中で、皆業務を余りこなさないけど、意識的に仕事をしていないわけでは無いので、目立った人が業績を上げても、その人の成果だと余り認めたくない。じっと我慢して将来給与をあがるのをシクシクと待っているのです。ジョブ型雇用の導入に対してはサイレントを保ったまま、できれば今のままにしてほしいというのが本音では無いでしょうか。

働き方改革は確かに大歓迎でしょうが、賃金とポストが連動して、年功序列に関係なく人の評価が変わる制度に対しては会社が急に言っても受け入れたくないのでは無いでしょうか。「私だってできるのに」「なんで自分よりも若い人が」「なんで私ではないのか」等々。不満の声が続々と出てきそうです。もちろん表情を変えずに、ここの中にしまっているでしょうが。5年、10年上司と部下のコミュニケーションが取られていないため、お互いにそのわだかまりが在ることは何となく知っていても、どうして良いのかわからない状態だからです。

マネジメントからすると「理解している」「コミュニケーションは取れている」などと全否定する人も居るでしょう。私もあなたを否定する意図はありませんが、平均的な組織のマネジメントからすると出来ていいないということを書いています。そのためマネジメント層におけるコミュニケーション、特にコーチングで求められる相手の話を傾聴する、相手の考えを引き出す質問。そしてテクニック以外に会社の現状がどうなっていて、今後どうするべきかを自分の見解として語れる力。このような能力がなければ、出来ていると言えないかも知れません。

従来の職場では、気のあった部下や後輩とはコミュニケーションを取っています。コロナの前はちょいと軽くノミニケーションも取っていたかも知れません。話を聞かないで相談に対しては結論を押し付けて、過去の自分の事例を押し出して終わっていたかも知れません。更に言えば、自分が気に食わない部下やウマが合わない部下とは意図的にコミュニケーション取るどころか距離をおいているかも知れません。チームとして仕事をする時の大義名分を自分の言葉で語ることもなく、上からの指示と下に伝えただけかも知れません。

欧米の先進企業、少なくともジョブ型雇用を長らく導入している企業、は上司と部下のコミュニケーションに1:1(ワンオンワン)という手法を積極的に取り入れています。いや私も行っているよ。と思う半期に一度程度の効果舎面談とは異なります。1週間から2週間に1度のペースで1回1時間程度の日程を確保して連続して行われます。仕事の進捗や相談は当然のこと、部下の悩みやキャリアの相談に乗ることも日常です。当然に経営方針の疑問や理解を深める時間にも充て、マネジメントが10%は部下のための時間を確保するという所以です。成果主義ではありますが、成果を出す過程をマネジメントが把握しなければチューニングも出来ないし、同じ取り組みを他に展開することも出来ません。結果を出すためのプロセス管理も日常的にマネジメントの職責として実施するのです。部下や組織のパフォーマンスは上がりますよね。

クライアント企業のセールス部隊80名のトップマネジメントと複数名のマネジメントに対して2年間、試行錯誤しながら1:1の手法を取り入れたことがあります。はじめは自分の仕事や成績につながらない行動は行っていなかったセールスも、企業や事業の方針、ブランドの方針を理解するにつれて個人の成績と共にチームの成果を追求する重要性を理解して日常的な行動が変わっていく経験をさせて頂きました。自分の成績が悪い時は他のヘルプがあり、結果的に顧客体験が常に最高に保たれるので2年、3年の乗り換えの期間にもまたそのセールスチームを頼って顧客が戻って来るようになったのです。見た目の瞬間的な取り組みに成果が宿るのではなく、長期的な意味在る導線づくりと手間が結果的に毎日の成果を生み出しているのです。

1:1を続けると、一方的に話すスタイルはすぐにネタが尽きてしまうので、必然的に現場のことや過去、将来、過程と様々なことを聴くようになります。マネジメントはそれに加えて否定せずに一度受け入れる。仮に反対のことを言わないといけないときもじっくり聞いて、その中でプラスのフィードバックを始めに行った上で、私だったら◎◎というようにチームとして目標を達成するコミュニケーションを行うようになってきます。まさに、マネジメントが皆コーチになる必要性に気がつくと思うのです。

ジョブ型雇用の受け入れを考える組織は、今からマネジメント層のコーチングのトレーニングを強化しないと、採用した優秀な部下のコストを回収出来ないままに、その社員は他にジョブホッピングするという意味の無い取り組みを行い、一層人材エージェントだけがウハウハになるカラクリがみえてきます。マネジメント、あなたが変わることが大切なのです。



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