技術系におけるマーケティング

2020年10月8日 木曜日

早嶋です。

研究所や開発職についている方々がマーケティングで悩んでいる話を聴くと多くが以下のような状況です。

””研究所で開発した技術を自分が属している業界以外で活用したいがアイデアが見いだせない。””

そして、上記のような状況下でどのようなリサーチを行っているかと言えば、ひたすら自分たちの業界で他に何か活用方法が無いか?という内容です。

上記のアプローチについて2つの誤ちというかミスしている点があると思います。

1つ目はズバリ技術主導であって顧客の不に一切着目していないこと。つまり完全なるプロダクト・アウトになっています。

次に、無意識に事業化の可能性を自分たちが属している業界に絞り込んでいることです。技術の本質を抽象化して他の業界や自分たちが考えてもいないような転用の可能性をはじめから否定しているのです。

メーカーやインフラ系の研究所の多くは、プロパーでずっと研究職を続ける人と、事業部から定期的にやって来て数年研究してまた事業部に戻る人の2種類に別れます。

プロパーの研究者の特徴は、自分の会社の現場でどのような不が起きているかについて以外としらないということです。もし何か把握していても、その情報の多くが現場から上がってきた2次情報であり、自分で現場を観察して見出すとか、現場の方々とコミュニケーションを取り自分のインサイトを使って取りに行くことなどをめったに、というかほぼ行いません。そのため顧客の不に対しての理解が極端に浅いのです。

一方、事業部から定期的にやってくる研究員は、自分が昔いた古巣のバリューチェンの一部しか把握していないのに、自分がいた業界のことを理解したつもりになっています。自分が属している部や課の上流工程や下流工程などの理解がほとんど無いのです。

伝統的なマーケティングの手法にSTP分析があります。様々な調査を行った後に、自分たちが仕掛ける市場を定義し(セグメンテーション)、特定のセグメントを選択してターゲットを絞ります。この際に、様々な顧客の不を分析して、顧客が解決したい困りごと、顧客があったらいいなと感じていること、いわゆる顧客が片付けたいジョブを整理します。そして、自社の技術や特徴や強みを生かして解決する方法を考えるのです。

このようなSTPから4Pへの流れをまずは様々な事例や業界を観察しながら把握することで、技術ありきの発想から、顧客に寄り添った考え方が少しは理解できるようになると思います。

更に研究者の多くが議論しようとする事業は新規事業やこれから始まる事業がほとんどです。その場合、顧客の声を聴くことや、シンクタンクなどが分析した顧客の不満などはあまり役に立ちません。それは、また顧客自体が自分たちが感じている不に対して合理的に言語化できておらず、従いその解決のイメージも無いからです。

更にいうとシンクタンクや調査会社が調べた顧客の声は、わざわざ対象者を集めてグループインタビューやアンケート調査を行った結果です。本来、多くの消費者は無意識の内に不を感じ、なんとなく解消するための商品を購入しています。それなのに正面から購買理由を聞かれるため、インタビューワーが喜びそうな答えを話します。つまり新規の取り組みやこれから考える事業においての顧客の声は、あまり役に立たないのです。

この場合、実際に顧客が無意識に捉えて行動しているため聞き出すよりもむしろ、その行動を観察しながら企業がわが不を言語化する方が都合が良いのです。そのために2次情報に頼るべきではなく、仮説を立てながらも現場や顧客を観察して様々に洞察することが大切なのです。

まとめると、技術系の方々は一度技術のことを忘れてしまいましょう。そして、自分たちが属している業界以外に興味を持ちましょう。その際、自分たちの技術の活用を考える前に、様々な業界の不に関心をいだき、様々な業界の現場を観察して顧客候補の不を視覚化していきます。そして初めて、その不に対してのアプローチを自分たちが保有する技術やアイデアで解決できないか?と考えてみるのです。

研究者が現場に行くことはハードルが高い場合、そのような取り組みを現場で行っているであろうカスタマーサービスや、メンテナンス部隊、あるいは営業などにコンタクトを取ってヒアリングしながら仮説を構築するなど、手法は無数に思いつけるはずです。

ポイントは技術から考えるのではなく顧客や市場の不にフォーカスして後付で自分たちの技術をぶつけてみることです。


タグ: , , ,


コメントをどうぞ

CAPTCHA