早嶋です。
上場ビール三社の05年12月期連結決算が17日に出揃いました。キリンは営業最高益を更新したのに対して、アサヒとサッポロHDは営業減益でした。この明暗を分けたのが第三のビールです(日経新聞より)。
第三のビールとは?タブを空けて、グラスに注いだ黄金色の液体に白い泡。一見すると普通のビール。ただ、原料が大きく異なっている。第三のビールに先陣を切ったメーカは、サッポロ。04年2月に「ドラフトワン」を発売し大ヒットを記録している。ドラフトワンの原料はエンドウ豆から取れるたんぱく質。
原料に麦芽を使わない理由は、日本の酒税にある。日本の酒税法は複雑で、酒税法のビールは、麦芽比率67%以上のものとされ、350ml缶に対して実に77円も税金がかかっている。一方、発泡酒は麦芽比率25%未満のもので、税額は同350ml缶に対して46円。
原料に一切麦を使用しないドラフトワンは、「その他の雑種」として扱われ、税額は同350ml缶に対して24円、ビールの1/3以下である。この理由で、標準的な小売価格のビール218円に対して、第三のビールは125円と半額の値段で提供できる仕組みになっている。
サッポロドラフトワンに続き、サントリーは「スーパーブルー」を発売。こちらは発泡酒に小麦スピリッツをブレンドした手法で、税制上は「リキュール類」、税額は同350ml缶で27円。2004年は、この低価格が消費者に受け入れられ、ビールや発泡酒の出荷量が低迷するなか、第三のビールは出荷量を大幅に増やした。
サッポロ、サントリーに遅れて、05年4月にキリンとアサヒが相次いで第三のビールを発表した。キリンは、原料に大豆たんぱくを採用した「のどごし生」。アサヒはスーパードライに使っている酵母と大豆ベプチドを組み合わせた「新生」。
「その他の雑種」と「リキュール類」と何やらややこしいので、第三のビールを以下まとめてみました。
【その他の雑種】
「ドラフトワン(サッポロ)」:エンドウたんぱく
「スリムス(サッポロ)」:上記と同じ原料でアルコール度数とカロリーが低い
「のどごし生(キリン)」:大豆たんぱく
「新生(アサヒビール)」 :大豆ペプチド
「新生3(アサヒビール)」: 上記と同じ
「キレ味生(サントリー)」:とうもろこし
【リキュール類】
「スーパーブルー(サントリー)」:発泡酒と小麦スピリッツの混合
「麦の贅沢(サントリー)」:麦芽100%のビールと小麦スピリッツの混合
「サザンスター(オリオンビール)」:発泡酒と大麦スピリッツの混合
今回、明暗をはっきりしたのは、キリン「のどごし生」。これが好調であったのに対し、アサヒの「新生」の売れ行きが鈍かった。
第三のビールの開発は、そもそも酒税に起因する。高いビールの酒税の隙間をぬう形で発泡酒が開発された。しかし、それもつかの間、行政は発泡酒を狙い撃ちとした税制改正を行い、メーカーの発想の豊かさや工夫に水をさした。
政府税調は2005年度税制改正について、「第三のビール」を狙った改正は行わず、酒税の仕組み自体を変える抜本的な改正を行うということで、改正が行われなかった。しかし、2006年度税制改正において、5月より結局は増税となる。酒税法上の構造的欠陥から生まれた発泡酒や第三のビール。行政はメーカーの自由な発想や開発力を阻害することのない公平な税制を検討してもらいたいものである。