グランドセイコー②

2020年3月6日 金曜日

早嶋です。

3年前グランドセイコーはブランド革命をはじめます。セイコーの時計ブランドはチープカシオのようなセイコー5。GPS時計に代表されるアストロン。ダイバーズモデルのプロスペック。他にもルキアやブライツやプレサージュなど非常に沢山ポートフォリオを持っていました。ここにグランドセイコーも含まれましたが、それを切り分けたのが3年前です。

当初は、販売網や広告を一緒にしていたと思いますが、徐々にその整理が結果を出しています。これまでは直営に加え、いろんな卸にグランドセイコーを提供していたようですが、ようやく流通の制限も管理できるようになっています。加えて米国とフランスに現地法人も作っています。ブランドコミュニケーションもセイコーとは切り分け、グランドセイコー独自のWebサイトを立ち上げ、ロゴにもSEIKOの文字を外すなど一通りのセオリーを踏襲しています。

プライシングについても明確です。従来は20万円前後のエントリーモデルもありましたが、価格帯を50万円前後をエントリーモデルにするなど引き上げています。更に言えば、グランドセイコーを体現するスプリングドライブやザラツ研磨の技術ももっと使用範囲を狭めて他のセイコーとの違いを出せば良いとも思いますが、難しいところでしょうね。

興味深いのはクオーツ式を出して低価格化を招いたセイコーが世界の機械式時計の体力を弱らせた。しかし、そのメーカーの復活によって、セイコーは逆に体力を失う。そして再度、機械式に手を出してスイスを凌駕しようとしているセイコーがいるということです。そして価格に対しては安くしない。という徹底ぶり。素敵ですよね。

時間を見るための道具としての時計はもはや不要です。皆スマフォを持っているし、時計型のコンピューター、いわゆるスマートウオッチはバイタルの管理や気圧や天候の把握まで出来てしまう天才です。そこに時間を見るためだけに100万円以上の価値を出すこと自体狂っていると思う人もいるでしょう。

しかし私は思うのです。今何時だろうな。という時間は古代から人が制したいと思っていても、なかなか出来ず、正確に刻むことは出来ても早めたり、遅くしたりすることは出来ない概念なのです。その時間は今後も人が追求してもなかなか解明できないし、その時間を止めることも出来ない。

1,000円のチープカシオでも時間は分かります。スマフォを見れば超正確な時間を知ることができます。でも、自分がずっと使っていた愛着のある機械がある程度正確な時間を教えてくれる。そしてその時計は100年も200年も前から時間を刻み続けている。ひょっとして、それは自分の父親が同じように使っていたかも知れない。時間をコントロールすることは出来ないけれど、世代を超えても同じ機械が同じリズムで歯車を回して時間を告げてくれる。そんな感覚は半導体からは来ないでしょうね。それが時計の世界なのです。

皆が2000万円の時計を買うことは無いでしょうし、物理的に難しいです。自分がいいなと思った時計。できれば壊れても修理ができる。半導体の交換という概念ではなく物理的な部品の交換で100年も200年後も一定の技能を持っている人だったら動かすことができるアナログの技術。使い捨てが当たり前になっている今、同じものを大切に世代を超えて使い続けるという物語は年齢を問わず受け入れられると思います。



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