トイレットペーパーと物流

2020年3月3日 火曜日

早嶋です。

トイレットペーパーが不足しています。一連のコロナウィルスに乗じたデマがSNSで拡散され、見えない恐怖と戦う社会が反応したためです。

一方、経済的な見方をすると、他にも要因があります。2020年3月3日の日経新聞によると、その本質は物流にあるとのことです。

ーー引用ーー
メーカーに在庫はあるのになぜ店頭で品薄なのか。同工業会は「一時的な注文の集中に卸などの物流が対応しきれていない」と解説する。日用品卸大手のあらたによれば、在庫はメーカーや卸などの倉庫で分散保管される。「紙製品はかさばるため一度にトラックに積める量が限られ、補充には時間がかかる」と明かす。
ーー引用終了

◾見た目の原因
* トイレットペーパーやその他の原料が中国輸入に依存しているため品薄になるというご情報がSNSで拡散し、それに反応した消費者が買いだめ行動をおこした。
* 政府や業界団体は「在庫は十分にある」と火消しをするも店頭では品薄が続き、結果、消費者の買いだめを助長する。

◾新の原因
* 注文の急増に対応するも工場から店舗までの物流が機能していない。

◾解説
トイレットペーパーなどの製造を行う大手の情報によると主要工場はフル稼働状態が続きます。一連のトイレットペーパー騒ぎもありますが、今の時期は花粉の時期。そのため通常のフル稼働に加えて更に在庫を抱えて製造しているメーカーもありました。

政府も沈静化を図るためにトイレットペーパーの在庫も原料の仕入れも十分にある説明をされています。実際、19年の国内出荷に占める中国からの輸入製品の割合は1.3%程度です。

トイレットペーパーに関わるサプライチェーンは、
①原料⇒②製造⇒③倉庫⇒④物流⇒⑤店舗⇒⑥消費者

となっています。現在、⑥消費者と⑤の店舗で不足しており。①原料はOK、②製造もOK、③倉庫もOKという状態です。ということで③倉庫と⑤店舗の間を結ぶ④物流に問題があるのです。

メーカーは商品を作ったそばから販売するわけでは無いので、作り置きをするか、卸のような流通業者に一度提供するかで需要のコントロールをします。この機能は物流の大きな役割の一つです。しかし企業は徹底的に無駄をなくすために効率追求しますので、製造と在庫と流通のバランスを常に調整しています。

今回の店舗での一時的な品薄状態が短い期間で発生したことにより通常の流通で設計されている届ける機能が麻痺しているのです。そこにトイレットペーパーという商品の特徴も影響が大きいと思います。

形状を考えると、そこそこ体積がある。軽い。しかし、その割には安い。紙製品はかさばるために一度にトラックに詰める量が限られています。紙の需要があると言ってもすぐにトラックに乗せることが難しいのです。

加えて3月は引越しシーズンです。物流業者も紙のみを専業で運搬するわけではなく、やはり資源としてのトラックを最大限活用してリターンを得るためには、その時期に最も単価が高い仕事に振り分けるのが経済合理性でいう筋です。そのため今は引越にトラックが集中しているため、紙が不足しているからといってトラックの枠がなかなか確保出来ないのです。

報道等の様子を鑑みると、小売店からトイレットペーパーのメーカーや卸には通常の4倍の注文がきているそうです。通常の4倍を余裕を持って確保している物流であればその時点で成り立たないでしょう。ということで物流が完全に機能していないということが原因です。

◾今後の予測
となれば、物流が滞るということをベースに考えると、トイレットペーパーと同様の商品は徐々に同じように店舗への流入が滞る可能性があります。そこで又誰か心無い人がデマを流して一時的な過度な需要を創り出すとその商品の需給バランスが崩れ、更に流通が滞ってしまう。という悪循環が想定されます。

小中学校の休校が始まって3日間程度ですが、この状況が2週間続き、春休みに突入します。季節の緩みと同時に気の緩みも出ると思いますが、ここは皆が協力しあってクリアして、次の明るい将来に備える時期としてじっくりインプットするなどをしないと、予測出来ない困難が次々に発生するかも知れません。



コメントをどうぞ

CAPTCHA