社長の任期

2020年2月10日 月曜日

早嶋です。

日本企業の競争力低下の原因に役員人事含む社長の任期が短いことが言えます。ここ数年のクライアントの事例です。

売上規模200億程度のグループ会社の子会社。会長は本部の役員。社長は該当会社の叩き上げ。グループ統合して3年程度で社長が交替。当然、グループ統合の期間を全うしたと考えると良いのでしょうが新社長はその流れを引き継げず着任2年目にしてまだ現場が混乱している。

売上規模300億程度のグループ会社の子会社。社長は一貫しているけれども、各事業部の実質トップが頻繁に入れ替わる。確かに社長の任期が長いことで現場の把握はされているでしょうが。実質事業部のトップが入れ替わる度に施策が反転して定着しないどころか歯止めが効かない状態が続く。

売上規模70億円程度のグループ会社の子会社。役員は皆叩き上げだが、社長が2年毎に本部から送り込まれる。その社長も過去に経験がなく本部ではよくて本部長レベル。会社の数字全体を見て、新たに事業を切りだすことなど考えたことが無い人材。無関心な社長であればよいのだが、皆2年間妙に張り切って結果何も残さないで去っていく。

グループ会社の社長(や役員)についてコメントしましたが、これは独立してる会社でオーナー企業では無い会社にはある程度当てはまることだと思います。

任期が短いのです。

多くの会社は2000年前後から確立された事業モデルを変えることができずになんとか食いつないでいます。トップの役目はその潮目を変えて事業のポートフォリオを刷新することです。そのためには痛みを出しじっと我慢できる期間が必要です。それをすっ飛ばしても事業構造を変えることもできなければ、ましては遅効性の組織は絶対に変わりません。

そのためにはやはりトップの目線が短期、四半期に追われるペーペーサラリーマン思想では務まりません。長期的、根源的な視野から先を見越してそこに到達するための覚悟が欲しいところです。

2年とか3年の周期では到底その覚悟ができませんし、全体を把握出来た1年ころからは仮に準備をしたとしても、本気で取り組んでいいものか?という疑問との戦いになると思います。その理由は繰り替えす人事です。このグレードになるとしょっちゅう役割が変わるため下手に本気になって取り組むと自分もその組織にも明確をかけてしまう。というマインドが必ず邪魔をさせるのです。

取引先の社長とも延べ30名位とは腹割って上記のような話を何度もおこなったことがあります。新たな事業モデルの構築は仮説で検証と実験を繰り返す勇気と忍耐と根性が必要です。そこに期限付きではやはり本気で取り組めないと思います。

東京経済大学柳瀬ゼミが調査した2004年から2012年の東証一部上場企業1.2万社の在任期間は平均で5.7年、中央地で3年というデータがあります。これは企業のトップですのでグループ会社の社長はこの任期が最大になり更に短いことが推察できるでしょう。繰り返しですが、社長の今の任務から考えると明らかに短いですね。

次に考えられる原因は教育です。基本、社長の教育は自分で起業するか、机上で学ぶかしか有りません。どちらの場合も、OJTとOff-JTを取り入れ、不足する部分は自己研鑽しかありません。これは人材教育と発想は同じです。

しかし日本企業の社長の場合は、新卒採用。その企業一筋。もっと言えば、その事業一筋で、たまたまその事業が好調で力を発揮して、直近の社長人事で権利を勝ち取りトップになる方が多いです。つまり、事業のトップは経験したことがあるでしょうが、複数の関連、あるいは非関連の事業を取りまとめて総合的に舵取りする経験は就任してから磨くしか無いのです。

企業人生は30年以上経過しているでしょうが、社長経験が極めて乏しい方が殆どなのです。もちろん、それまでに補佐的な業務や事業部のトップ(小会社の社長)は行っていますが、本店のトップとそれ以外は仕事の性質がやはり異なります。

●全役員や主要幹部の人選人事
●重要経営事項の判断と決定と実践
●会社を代表するコミュニケーションや利害関係者との重要行事
●社内外の重要顧客との会議や訪問や視察
●他業界のキーパーソン等の交流深耕
●10年単位での業界や企業の舵取り
●上記を実施しながら企業の事業ポートフォリオの調整と変更

上記のような仕事を補佐ではなく、自分の意思で実行する必要があります。しかも時間は誰しも24時間365日同様です。矢継ぎ早に会社の運命を左右する決まりごとを整理する必要があります。

この任期の中央値が3年というのはやはり短いですよね。



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