早嶋です。
1602年、オランダ東インド会社が世界初の株式会社を設立してイギリスで資本をあつめ、当時貴重とされていた胡椒などのスパイスをインドから貿易して鞘取り(アービトラージ)で利潤を追求しました。それから株主が資本リスクを追って利金を提供する代わりに利潤を分け合う仕組みが世界に広がります。
17世紀には株式や債権を取引する場、いわゆる市場が整備され主要な貿易国であるオランダや英国などが金融センターとして成長します。同時に市民革命で個々人の所有が認められるようになり、富を蓄積する主体が国や地域から個人へシフトしていきます。
18世紀後半。アダム・スミスが生きたイギリス社会は政治の民主化、科学の普及と技術革新、経済発展という啓蒙の世紀であった一方で、格差と貧富、財政難と戦争という新たな社会問題を抱えた世紀でした。利己心にもとづく個人の行動や思想が社会全体の利潤につながる動きを「見えざる手」と説いています。資本主義の基本が構築された時代です。
英国で始まった産業革命により繊維産業の機械化が進み工場経営の役者が農地の地主から都市部の資本家とシフトします。資本家は株式や金融で得た資金で工場をつくり労働者を雇用して大量生産するモデルが確立して世界の工場と称されるようになります。蒸気の発明によって機関車や蒸気船が実用化され運河や新たな航路の発見も相成り背系規模でヒト、モノ、カネの移動が活発化します。
蒸気機関のエネルギー源である石炭の需要が急増します。環境破壊が始まります。資本家と労働者の格差が目に見えはじめ対立も始まります。労働災害、低賃金、労働環境の悪化、長時間労働と不満は募ります。徐々に資本主義を否定するカール・マルクスなどが社会主義の思想を広げていきます。
社会主義に異を唱える西欧資本主義は労働時間の規制や社会保障の充実、そして労働者への選挙権の拡大などを行いマルクスが唱える社会主義と対抗して資本主義の進化を遂げます。
世界は第一次世界大戦となり欧州が疲弊していく最中、米国は大型債権国となり潤沢な資金が流入しはじめます。1920年代、大衆車となったT型フォードはラインの発明とともに大量生産と大量消費の社会が到来し好景気に沸きます。
しかし1929年の米国株式の暴落を景気に世界大恐慌に突入します。金融は機能不全に陥り大量の失業者で溢れます。1930年代は一気に資本主義を嫌悪する雰囲気に包まれました。
米国では雇用創出を目的にニュディール政策を打ち出し公共事業の大型投資を開始します。同時に輸出拡大を目論んだ通貨の切り下げ競争がはじまります。結果、米ポンド、仏フラン、米ドルなど当時の主力基軸通貨ごとに経済を囲い込むブロック経済に発展します。各々の保護主義が横行して事実上の自由貿易が崩壊します。やがて経済的な苦境がきっかけてドイツやイタリアで急進的な政権の成立とともに第二次世界大戦が始まります。
戦後、1950年から1960年代は復興需要と急速な人口増によって世界経済は大きく成長を遂げます。資本主義は黄金時代と呼ばれました。日本でも同様に高度成長期を迎えます。
欧米では自国経済を守るため企業の国有化と規制強化などの政治介入が強化され、1973年の第一次オイルショックで石油価格の高騰とともに先進諸国ではスタグフレーション(インフレと不景気が共存する経済減少)に陥ります。米国は財政赤字に加え経常収支が赤字になり、英国も経済が停滞します。
この反動により資本主義の民間による自由競争を再評価する流れが自然と強まります。1980年代、サッチャー英首相は国営企業の民営化をすすめ、レーガン米大統領はレーガノミクスで規制緩和を推進します。当時、冷戦終結とソ連崩壊も重なり、また東欧諸国や中国との経済格差が広がり、資本主義は揺るぎない地位を確立します。
米国は市場に任せた状況が続き、危険水準を超え遂に2008年にリーマショックが起こります。市場の混乱と共に金融機関が破綻します。先進国は長期低迷に陥り資本主義は再び試練を迎えます。