売り切りと継続モデル

2019年6月13日 木曜日

早嶋です。

従来、任天堂はハードであるゲーム機を開発して、ソフトであるコンテンツを切り売りして収益を得ていました。スマートフォンの登場によって、コンソール型のゲームマシンは、スマフォセントリックの思想が強くなり、専用のハードを使うのではなく、スマフォをハードとして活用して、他はソフトの処理で対応するという流れになってきました。

5Gが完全に普及すると、スマフォを介してクラウド上のハイスペックなマシンを介したゲームが可能になることから、コンソール型の事業モデルはいよいよ終盤を迎えることが予測できます。すでに、米国の巨大IT企業は矢継ぎ早にゲーム事業に参入しており、サブスクリプションサービスを中心とした事業モデルで打って出ています。

任天堂は2017年3月に発売したコンソール型のゲームマシンであるスイッチによって業績をあげています。直近の決算見込みは売上高が1兆2500億円、営業利益は2600億円です。しかし、内訳を見るとゲーム機と関連ソフトの販売が9割を占めており、将来の事業モデルを鑑みると雲行きの怪しさを感じます。機器単体売りの事業は常に業績の浮き沈みが激しく、開発資金を投じたからと言って確実に回収して収益を上げることができないからです。

当然、任天堂もサブスクリプション事業を開始しています。18年9月から300円/月のゲーム事業です。19年4月時点の会員は980万人。年間の単純売上は350億と推察できます。全体の事業からするとまだ3%程度。ソニーや他の企業と比較すると遅れは否めません。

理由は様々あるでしょうが、いわゆるイノベーションのジレンマで、既存のコンソール事業が成功を収めていたために、新たな事業の投資や可能性の評価が企業内で理解されていても、合理的に判断をすると、既存のコンソールとソフト開発に資金を投じたほうが、今の利益を最大化できると判断していたのでしょう。

サブスクリプションの事業モデルは、安定的な収益もありますが、メーカーとしては、直接エンドユーザーの情報を握ることができる点です。従って、今後は課金時に手に入れた、そして継続的に収集しているエンドユーザーの情報を活用してゲームを中心にしたエンタメを如何に提供できるか、企画できるか、行動できるかがカギになるでしょう。

売り切りの発想で、事業モデルだけを切り替えても、サブスクリプションの本質を理解して事業に展開しなければ米国のIT事業者にはずっと追いつけないと思います。



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