伝統の美と共感力

2019年3月3日 日曜日

原です。

私が共感できる人、企業・組織、製品・サービスに共通しているのが、人としての美意識の高さです。
また、美意識の高い人の共通点は、文学、音楽、絵画、建築物、古典芸能などを鑑賞または学ぶ探求心があります。ビジネスリーダーの多くは、探究心が旺盛なのか国内外を問わず伝統への美意識が高いと思います。
知識として暗記したものには美はなく、人間にとって、何が「真・善・美」なのかということを純粋に追求してきた伝統の型は、人の心を動かす「美」の一つであると考えます。

私は、30歳から古典芸能「狂言」を習いはじめました。きっかけは、26歳の時にアジア青年交流活動に参加し、自分の美意識の低さを体感したことです。
アジア青年交流の行き先は韓国と中国でした。交流内容は、現地青年との議論やホームスティによる家族との交流でした。韓国や中国の皆さんは、行く先々で母国の伝統芸を披露して頂きました。
一方、私達は日本の文化や芸を海外の方々に発信することができずに鑑賞しているだけで終わりました。
唯一、日本の仲間で堂々と日本の伝統芸を披露できたのは、沖縄の仲間が琉球舞踊を演じてくれたことでした。おかげで、改めて日本の伝統の美しさを知ることができました。
日本に帰省した私は、この反省から、日本の文化・伝統芸能への意識が高まりました。休日には、日本舞踊、茶道、太鼓、神楽、落語、水墨画などを鑑賞や体験する日々が続きました。
このような中で、約600年の歴史がある「狂言(きょうげん)」に興味を持ちました。狂言は、室町時代には台本がなく、口伝(くでん)といって、書物に記さず、稽古によってのみ師匠と弟子の信頼関係により相伝されてきました。
江戸時代には、セリフとして本に書きつけるようになって固定化したらしいですが、師匠からの口伝や作法の指導により、狂言の「型」を物真似し身につけていきます。
師匠から弟子への物真似である口伝は、自分ではない人になるという意味で、演じるという行為の根源になります。そして、「型」を個性・経験でアレンジすることで表現になります。
伝承による型を身につけ表現することで、伝統の美を伝えることができるようになるのです。

一般のビジネスでも、基本の型や美があると考えます。
知識として暗記したものは忘れていき使いものになりませんし、知識はインターネット社会では、いつでもどこでも入手可能です。
知識だけでなく、ビジネスの基本(型)を身につけ、実践で使いこなせるまで繰り返すことにより知識を知恵に変えていくことが必要です。
私の場合では、「論理的思考、発想法、問題解決思考」は型であり、この型に、
「経営哲学、マネジメント、マーケティング、リーダーシップ、共感力、コミュニケーション力など」が加わることでアレンジされながら型が進化していくのです。
繰り返すことで自分なりに表現できるまでになった型は、ビジネスにおいて技となり伝統の美になるのではないでしょうか?
そして、その型や技は、顧客や社会から価値として共感され、伝統の美として受け継がれていくのではないでしょうか?



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