早嶋です。
1990年代から2000年にかけてそれまで進められた多角化は否定的な事業戦略になり原点回帰で本業にリソースを集中する企業が増えて生きました。理由は2つあります。1つは、新規事業がそもそも上手くマネジメントできなかったこと。鳴り物入りで参入した新規事業は計画どおりいきません。2つめは、既存ビジネスとのシナジーという神話が崩れたことです。資源を活用して双方がメリットを生むことなく新規ビジネスが想定以上の赤字を流出し続けます。
ということで、2000年以降、新規事業や多角化の風潮はめっきり下火になります。結果、事業再編が加速する方向に進みます。しかしここ数年、大企業がこぞって新規事業の必要性を主張し異業種のビジネスに資本を入れる、或いは自ら立ち上げを行う動きを観察出来ます。
この理由は経済の成熟です。本業が成熟し、今後の収益が細ることが確実に予測できるようになりました。成長がシュリンクし、既存のパイが飽和。ジワリジワリとそのパイが縮小しています。もし付加価値を付けて高級路線に転用出来ても、そもそもの母数が減少しているので、大手の胃袋を十分に吸収することはできません。なんとか既存の事業で生きてきた企業もいよいよ追い詰められているのです。それが新規ビジネスの方向性へとモチベートが向かう理由です。
マクロ的な条件は同じ画故に、多くの企業が同じ方向性へ向かいます。市場とそれを実現する人材は限りがあります。結果的に競争が激しくなり思うように実現できません。また、技術革新のスピード変化が10年で全く異なる次元になっています。従来の取組で無意識に対応している経営者は正直頭を悩ませているでしょう。
既存のビジネスのように、事業計画に書いてしまえば、その行動計画通りモノゴトが進むと考える経営者もいます。しかし、新規ビジネスは「不確実性との戦い」で常に不安定な環境、予想外の出来事が起こることが前提です。一方、既存事業は、様々なフレームワークが活用出来ました。新規ビジネスはそもそもの仮説や前提がフワフワしているが故にバシッと枠にハマりません。特にネット関連やIT関連のビジネスは半端なく予測が難しいのです。
そこで考え方や取り組み方が180度異なります。ポインは完璧な事業計画を立てないこと。5年後の予測を3年、2年、1年に落として半年、1ヶ月の行動計画で細密に作り込むことは、ある程度前提が既知である程度変化が緩いビジネス環境においての前提です。従って、新規ビジネスは発想を逆転します。計画するために割く時間を少なくして、残りのリソースは行動にフォーカスします。そしてその行動から得られるフィードバックをビジネスの構築に都度仕込んでいくのです。緻密に机上で考えることで、自身の満足度は高まるかもしれません。しかし、そのビジネスが実現する保証はありません。
それよりも「やってみなければ分からない」という世界観を持ちリーン・スタートアップの発想に切り替えるのです。キーワードは3つあります。MVP、実験、そして学習です。
MVPとはminimum viable productの略称で本当に必要な機能だけを持った商品を素早く作って実際の市場でテストしながら精度を上げていく考え方です。MVPを実際の顧客に提示して、本質的な価値を構築していきます。この取り組みを繰り返し行いながらビジネスモデルも構築します。もし、初めの商品が過大に投資したものであれば1回の失敗は事業全体の命取りになります。しかしMVPであれば失敗を繰り返す仮定で顧客への提供価値とビジネスモデルを見極める発想です。
次に実験です。予め実験を意識することで、何を予測して何を検証するかを常に明確にします。そのためには仕組みをシンプルに削ぎ落とした取り組みを繰り返します。MVPと組み合せることで、仮説のフィードバクではなく、実際の商品からのフィードバックを得られるために机上ではわかり得ないことを発見する可能性が高くなります。新規ビジネスなんて突き詰めれば、やってみないと分からない部分もあり、それを前提として取り組んで行くのです。
最後の学習も一連の流れになりますが、繰り返し得られたフィードバックを基に組織が学習して真に価値ある商品やビジネスモデルを構築するのです。既存企業はビジネスモデルの実行に重きを起きますが、スタートアップ時はビジネスモデルの探求にフォーカスすることを忘れないことです。
リーンスタートアップ。考えてみれば当たり前のことです。はじめはあたって砕けろ的に取り組みをする。でもカタチが無ければわからないので必要最低の商品(MVP)を作る。それを実際の顧客に示しながら反応を観察して実験する。それらを都度都度フィードバックして不確実な部分を確実にイメージして取り組むのです。
事業実践塾では、既存の取り組みと新規の取り組みを基本的には分けて考えています。詳しく取り組みたい方は、是非、参加ください。