早嶋です。
ーー引用(日本経済新聞朝刊 2017年2月17日)ーー
日本生命保険とニチイ学館は共同で保育事業を展開する。来春までに保育所を全国で約100カ所新設し、1800人程度の児童を受け入れる。国が民間の力も借りて保育サービスを提供する「企業主導型保育事業」(総合2面きょうのことば)で、運営会社と事業会社が組んで大規模に展開するのは初めて。一部で同じような取り組みが出てきており、全国で2万人超とされる待機児童の解消に一歩近づく。
ーー引用終了ーー
1980年代の戦略論は競争という言葉を使っていた。当時の前提は、情報流と物流の自由度が低く、競争優位になるためには全てのバリューチェーンを自前で行うことこそが鍵だった。従って企業の成長と共に資産を持ち、全ての事業を自分たちで内製化した。
が2000年頃から始まるIT革命、2007年頃から始まるスマフォセントリックな世の中になり始めると、情報流は誰でも親指一本で自由に共有できるようになり、物流はサードパーティーを活用することで自社で保有するよりも高い自由度で活用できるようになった。従って2007年以降に出現した企業の多くは、自社のバリューチェーンを全て自前で行うのではなく、最も付加価値を提供できる部分に絞り他は外注することを覚えた。結果、従来のビジネスモデルで競争し始めた企業は、付加価値がつかない他のバリューチェーンが荷物になり利益率の低下や効率の低下を招き、後から出てきた企業に逆転される動きも観察されている。
そして近年、競争という言葉は同業界にも変化をもたらせた。成熟した国内市場であれば、アサヒとキリンのように商品や販促では競争をしても、A地点からB地点の物流においては日立物流を使っているわけだから、ここは混載する形で共争しようよ。と。世の中の変化が企業の戦い方を大きく変えるのだ。
今回の保険屋さんと介護屋さんの事例も面白い。ニチイ学館としては保育事業に乗り出したいが、稼働率の確保が心配の種だった。そこに日本生命が展開する保育施設の半数を目処に契約するというのだ。日本生命の肝となるセールスレディもまた近年の保育施設の少なさに悩み、それが原因で仕事ができない状態にあるからだ。
1980年代の発想であれば自前でビルを立てて保育施設を運営しただろう。しかし、今はシェアや共有の時代。不動産を持ち、資産を持ちたがった金融の会社も国内においては考え方を柔軟にし始めた。象徴的な記事だと思う。