仕事の定義を広く捉えて見よう

2016年11月22日 火曜日

早嶋です。

成熟ビジネスを事業ポートフォリオに抱える大企業の中で、わりと共通項としてあがる現象に中堅社員が積極的な姿勢を見せないというのがあります。入社して5年から10年程度の選手がバリバイと積極的に仕事をしないのです。会議での存在感があるわけでもなし、新しいビジネスの提案をガツガツ行うでもなし。ただただ指示された、言われた範囲での仕事を黙々とこなすのです。

このことに対して私は、「自分の仕事の範囲をかなり狭く捉えている」ということが問題にあると思います。この層の社員に会社全体の売上や事業部の売上を聞いても、かなり曖昧にしか数字がかえって来ません。そこそこの企業であれば、会社の数字はほぼ何らかの形で通達されますし、気になればすぐに調べることもできます。が、皆会社がどこに向かっていて、どのような戦略を取っているのかに無関心なのです。

積極的に発言しないし、主張しない最大の問題は、そのことは自分の仕事と関係ないから私が考えなくても良い。と本気で思っていることにあると思います。そして、それが結果的に自分の仕事の効率を落として、部分最適に陥っていることを理解していません。

とは言っても何も困っていないかと言うと違います。幾つもの企業で当該する層に対して接する機会が多々あります。例えば、階層教育などでじっくりと議論をしていると、問題解決の具体的な手法が分からない、部下や後輩に指示をしても動かない、現在の業務が忙しくてやりたいことができないなどと、一応は困っていることが出てきます。

例えば、問題解決の具体的な手法が分からないという点に対して、多くの場合問題を定義せずに、思いついた内容をいくつか上げて解決策として片付けています。もし説明責任がある場合は、その思いつきを正当化する理由を適当に考えて上手く作文をしてこなしています。しかし問題とは、そもそもはありたい姿と現状のギャップです。ありたい姿や部署が目指すべき方向や目的があやふやだから当然に問題は定義されないのです。それなのに小手先のテクニックや取り急ぎの解決策を求めてしまっているということに気がついていません。

例えば、部下や後輩に指示をしても動かないという点に対して、多くの場合は自分が指示をすると相手は動くと勘違いしています。コミュニケーションは自分が伝えたことがどんなに正しくても、相手が理解しなければ全く意味がありません。逆に、相手が間違って理解したのであれば、そのことが相手にとっての正解になります。コミュニケーションの主体は自分ではなく相手にあるのです。指示をしたら動くという発想はすぐに捨てなければなりません。チームのゴールを示し、目的を共有して、何のために行っているかを共有して初めて互いのコミュニケーションがスタートします。しかしチームの目的を意識していないので、そのコミュニケーションにおいてもなんとなく行っていて、その上、部下や後輩が動かないと感じてしまっているのです。

例えば業務が忙しくてやりたいことができないという点に対して、そもそもその仕事は目的を達成しえいるのか、などと考えることはありません。ただただ上司の言った内容を真に受けて黙々とこなす。上司の言った内容を確認して、その目的や背景を理解していれば、現場の人間程言われたやり方以外にもっと効率的に目的を達成するアイデアが出て来るはずです。が、そのような発想になれません。目的やゴールを意識していないからです。結果、何年もやり方が変わらず、その手法が効率的か否かの検証すら行っていないのです。それでも時間が無いと捉えるのであれば、仕事の前後を確認して、部門を超えた仕事を把握してもっと効率を上げるような発想には絶対にならない。それは自分の仕事、他人の仕事と細かく自分で分けているからです。

基本は、自分の仕事を狭く定義すればするほど、作業の全体像が見えなくなります。その為言われたことが全てになり改善するのが良いのか否かの判断も全くできません。ある程度仕事をこなせるようになったら、まずはその部隊の一番大きな事業部がどこに向かっているかを整理します。その上で、自分の役割を考え今の仕事を見直してみる。すると不思議なくらいもっと時間を割いて取り組むべきことが見えてきます。



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