早嶋です。
米国の国民の指示はトランプでした。では何が変わるのでしょうか?
民主党のヒラリー・クリントン前国務長官と共和党のドナルド・トランプ氏は税制や医療保険、エネルギー政策で主張が異なっていました。トランプ氏に決定したことで白黒が明確になりました。
まずはオバマケア、つまり医療保険制度改革法です。クリントン氏はオバマケアを継承する方向で、低所得者向けの公的支援拡充を掲げていました。しかしトランプ氏に確定したことで、既往症のある国民を受け入れる保険会社や薬価引き下げを求められる製薬会社にとっては追い風になります。
エネルギー関連。トランプ氏は石炭産業の保護を訴えていたので、この業界に対しては追い風になります。一方、クリントン氏は地球温暖化対策や再生可能エネルギーの推進、その橋渡しにあたる天然ガス利用の拡大を主張していいました。従って太陽光発電関連や再生可能エネルギー業界は風向きが悪くなります。
一方、ウォール街にとってはプラスです。両候補とも商業銀行と証券の厳格な分離を求めるグラス・スティーガル法の復活を指示していましたが、クリントン氏は保有期間の短い株式の売却益に対しては税率引き上げを主張していました。トランプは様々な規制の撤廃を求めていたからです。
税制でも明暗が分かれます。クリントン氏は富裕層への増税と富の再分配を訴えていましたが、トランプ氏は真逆でした。最高税率の引き下げや税制の簡素化、相続税の引き下げなど富裕層へのメリットが大きい税制に進みます。結果、高級品を取り扱う百貨店や宝飾業界などには追い風になります。
クリントン氏は主な経済対策として雇用創出の手段としてのインフラ投資の拡充を主張していました。しかしトランプ氏は大規模減税を掲げていました。結果、資源関連の企業や株価は低迷することが考えられます。
クリントン氏やトランプ氏に関係なく追い風だったのは防衛関連の企業です。両氏とも強い国防を指示していました。トランプ氏は日本、韓国などの同盟国が独自に軍備を拡大する主張でしたので、日本では防衛費が膨らみ代わり社会保障などの大きな予算にメスが入る可能性が考えられます。一方で、軍需産業の企業は日米共に米国にとっては内需の拡大、日本にとっては輸出の拡大になり追い風です。
為替です。円相場は一時期1ドルあたり101円台前半と2ヶ月ぶりくらいの高値でした。その後、緩やかにトランプ確定が見えてきたので相場は急激には下がりませんでした。しかし一様にマーケットはクリントン氏を押していたと思いますのでいわゆる想定外という結果だったと思います。
今後の為替の予測は円高です。100円台を割り再び95円前後になるとの見方が大半です。理由は、トランプ氏が米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長はクビだ!と言う発言を繰り返したことにあります。これはこれまでの米国の利上げ路線と正反対だからです。これまでは米国が緩やかな利上げを実施して、ドル高、円安が進むというシナリオでした。しかし、この話は白紙になり軌道修正される可能性が高まりました。となれば投資マネーの動きに加えて、トヨタなどのグローバル企業に対しての影響が強くなるのです。今、大企業で海外比率が高い企業の最高財務責任者(CFO)は、来年の予算が立てられないというのが本音だと思います。
上述したとおり、クリントン氏はオバマ政権の路線の延長上でしたから大きな変化は無いと考えられていました。しかし今回、トランプ氏になることでシナリオが全く異なります。トランプ氏は米国を再び偉大な国にすることを掲げています。これは米国を孤立させることにもなるかもしれません。米国は常に世界を監視する役割でしたが、グローバルのリーダーの座を降りることになるかもしれません。
これらは、メキシコ国境との壁の発言やテロ関連国からの移民受け入れの取りやめなどから、トランプ氏が大統領になることで米国の表情が全く異なってくるのです。開かれた米国はこれまで世界中から優秀な人材を集めていました。シリコンバレーはITやIoT、自動運転技術で再び世界の頭脳になり競争力を確保しました。しかし、トランプ氏によって、この動きにストップをかけるようになるかもしれません。
他国との外交はどうでしょうか。
トランプ氏の勝利が確定した後、ロシアのプーチン大統領は祝電を送っています。米ロの危機的な状況の打開に向けて協同の取り組みに期待する表明です。トランプ氏は冷え込んだ米ロ関係の改善を主張してプーチンに対してプラスの評価を行っていました。
EUのトゥスク大統領、ユンケル欧州委員は共同文章で米国とEUが密接に協力することで、イスラム国、ウクライナ危機、気候変動、移民などの課題に友好に対応し続けることを強調しています。
韓国のパククネ大統領は北朝鮮問題の解決、米韓関係の発展に向けた連携強化の期待を伝達しています。フィリピンのドゥテル大統領は米国の最高司令官として成功を望み、互いを尊重した外交関係の強化、民主主義の法の支配を共に追求したい旨のメッセージを発表しています。インドも、選挙期間中にインドに対しての発言を喜びその友情に感謝を示すコメントを寄せています。なんだかんだ言ってトランプ氏であってもクリントン氏であってもアメリカに寄り添う姿勢を示すのかな、と推測できますね。