早嶋です。
中国の4月から6月期のGDP知速報が前年の同じ時期と比較して7%程度の水準に留まっている。不動産関連、生産低迷が響き、上海市場の不安定な値動きなど、不安材料が止まらない。(参照1:http://www.47news.jp/47topics/e/267175.php)
そもそも、政府主導で人件費を年率13%程度も上げ続けたことが背景にあると思う。結果、中国に進出したビジネスの多くが苦しめられ他の地域に出て行くか見直しをすることに。
中国での製造業が低迷するダメージは極めて大きい。資源国であるオーストラリア、カナダ、ブラジルが連鎖的に低迷しダボつきがでるからだ。主要なバロメーターは粗鋼だ。中国の生産量は半端無く、2014年の統計で8億トンの粗鋼を生産している。2位の日本が1億トンレベル、ついで3位のアメリカが8,000万トンを考えると中国がどれだけ生産しているかが分かる。
(参照2:http://www.globalnote.jp/post-1402.html)
仮に中国の粗鋼生産が2割ダウンしても1.6億トンもの粗鋼生産にダボ付きがでる。中国の粗鋼生産企業は国営で凡そ100社ほどある。通常の競争社会では淘汰されて調整がなされるが、柔軟な対応ができないだろうからそのダボつきは恐ろしい。結果、その部分は海外に放出される。そうすると、他の地域で生産をしている粗鋼との価格競争になり、価格を安くするという行動が目に見える。生産量からするとコスト競争では他国は競争にならない。結果、他の地域の粗鋼メーカーに大きな影響がでることになる。
仮に2割の粗鋼生産のダボ付きでもアメリカと日本を足したくらいの生産量だからこの影響は大きい。最近のニュースで新日鉄住金は16年3月期の経常益が3割減で3,000億円程度と報道があったが、これは今後ますます減少していくことになる。まだ利益が出ているだけハッピーだと思ったほうが良い。
(参照3:http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXLASGD17H08_20102015EA2000)
今回の香港も短い滞在だったが、マカオに出入りする金融筋と話す機会があった。マカオも低迷しているという。マカオといえばカジノで有名だが、その殆どの稼ぎ頭のVIP部門が収益を落としているからだ。
マカオの盛況はそもそも、政治家のマネーロンダリングに一役かっているという話は有名で、斡旋人がマカオのVIPに用心を招待する。VIP室で渡されたチップが一夜にして高額のお金になっていき、そのお金が香港の銀行や不動産に化けていくというカラクリだ。そのVIPの収益源が昨今壊滅的なダメージを受けている。紙面でも報道されているが、そういった政府の腐敗マネーを取り締まる動きが強いことが背景だ。従って、マカオにも突然の地獄図がやってくることが想像できる。
中国は国が土地を企業や人民に貸しつけているので、仮に政府が窮地に陥っても、最後のリーサルウェイポンがある。土地の売却だ。しかし、これだけ市場経済に政府が介入することで、制裁を受けていることを考えると、土地の売却の前に、為替の自由化を検討することが先決だと思う。やはりコントロール出来ないこともあるということを学ぶべきだ。
今回の香港出張の主な目的はHSBCでの商談でしたが、本社の移転の話について幾つか質問ができました。それらしい解は得られなかったがアメリカを匂わすこと自体が若干きな臭い感じを受けた。HSBCはどう考えてもアジアが最大の利益元なので米国に移る理由は考えにくい。しかし、マネーロンダリングを考えるとそれは合理的な判断なのかもしれない。
香港、上海、シンガポール。お金を持っている人の悩みは如何に減らさないで増やしていくか。常にそのようなことしか考えていないほど、悩まされているようだ。ある意味羨ましいが、HSBCの筋が話していて気になっていたのが、一部のお金は日本の不動産に流れているとのこと。紙面でも言われていたがやはりその動きはあるようだ。
従って日本はミニバブルの状態。不動産の価格を図る指標として月の家賃から将来稼ぐキャッシュフローを計算すると、今の不動産価格が妥当か否かが推定できる。かりに不動産がうなぎのぼりに価値が上がったとしても月の坪単価が2万や3万を超えると貸し手がつかなくなる。従ってそれ以上の不動産価値が売買されるようになるとこれはバブルといえる。
更に、日本に行く観光客の動向についても話しをした。平均30万円を使う中国人観光者。今後の勢いはどうかと議論したところ、平均購買価格は3割程度下がるかも知れないが、数が倍になるという方向性が見えてきた。つまりこれまで500万人程度の訪日観光客が今後1000万人クラスになる。結果、500万人×30万円と、1000万人×20万円なので今後も期待ができると言うもの。国内のビジネスは縮小しているので、国内向けの需要に対応出来ず、海外に足踏みをしているサービス業は、真剣に中国人向けのビジネスを国内で検討しても良いと思う。
ちなみに中国人が好きな日本は日常。香港で高級品を買いあさり、日本では実用的な商品を購入する。これがどううやら中国人の典型的な思想のようだ。ただ実際に香港での高級品の価格と日本での販売価格を見ると日本が2割程度安い印象を受けた。ということは高級品も含め、日本での買い物がしばらく続くことは予測できる。