早嶋です。
コカ・コーラの増税後の価格戦略。チャンピオンとして極めて素晴らしい方式をとったと思います。あっぱれです。
清涼飲料業界大手の日本コカ・コーラグループが4月からの増税に対しての価格方針を2月27日に発表しました。
◯コカ・コーラやジョージア缶は自動販売機での価格を10円値上げ
◯爽健美茶や綾鷹などの無糖茶飲料は、現状の500ミリリットルを525ミリリットルに増量して150円から160円に値上げ
◯いろはすは価格を据え置く
上記を見れば基本は値上げの方針であることがわかります。
が、
◯コカ・コーラや缶コーヒーの小容量タイプを110円で新規導入して自販機での需要喚起に務める
◯電子マネー対応自動販売機は4月1日以降5円引きの値引きキャンペーンを実施
とあります。
これは流石業界のトップだなと思います。大手の飲料各社はチャンピオンのコカ・コーラの動きを今か今かと待っていたと思います。コカ・コーラの動きによって自社の値上げをするか否かを決定しなければ場合によって大きな損失を被るからです。そこに対して今回のコカ・コーラ社の動き。
まずは価格をあげます!と言っておいて最も売れ筋の商品は堂々と10円の値上げです。しかもこちらの販売は基本はコンビニなどの流通店での価格戦略です。元々、10円の価格感応度が低いコンビニでは値上げを実施。但し、若干容量を増やすなど値上げの理由を明確に提供しています。ここは小技が効いています。
一方、自動販売機では価格を据えおく戦略です。自動販売機は他の流通媒体よりも価格感応度が高い、ですから値上げによる売上現象のインパクトは大きいと考えたのでしょう。
しかし実際は自動販売機用に小容量タイプの缶を新たに導入するため、消費者からすると価格据え置きに見え、コカ・コーラからするとしっかりと値上げしていることになります。これは他の飲料会社の意表をついた戦略です。何故ならば、コカ・コーラ以外はこの方式をすぐに模倣出来ないからです。仮に模倣出来たとしてもかなりの時間を要するでしょう。これからコカ・コーラと同様の缶のサイズを製造することは不可能だからです。日本中の缶製造メーカーを探しても4月に間に合うように対応できる企業はそもそも存在しないでしょう。
小容量と発表していますが、きっと消費者にとっては認識しずらい程度の減量にとどめていると思います。従って増税後も価格据え置きとしか思わない。対して他社の取る選択肢です。コカ・コーラ社の缶が消費者の見た目上は価格据え置き。元々競争力が低い他社です。
値上げをすると、コカ・コーラに更に販売を取られてしまうとかんがえるでしょう。ということで、自動販売機での販売は価格据え置きを選択するしかない。そうなると他の飲料メーカーは実質的な値下げになります。すると確実に増税分の3%の利益を失うことになるのです。元々薄利多売の自動販売機ですから、この値下げによるインパクトは相当大きいでしょう。
更に、電子マネーの自動販売機はしばらく5%の値引きキャンペーンを実施するとあります。ここでも追い打ちをかけています。業界トップのコカ・コーラは自動販売機の電子マネー化も他社と比較して圧倒的に進んでいます。他社が真似したくてもそもそも自動販売機のハードが電子マネーに対応していない。従来とおりの小銭を入れる自動販売機は1円単位に対応していません。そう、ここにも対応するとなると10円単位で値下げをするしか方法がないのです。
小容量の対応といい、電子マネーで払った場合の5%キャッシュバックといい、2位以下を欺くかのように圧倒的な力を見せつけた戦略だと思います。
参照元:ロイター通信「消費増税時の自動販売機価格、コカ・コーラを10円値上げ」
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYEA1Q03Y20140227