早嶋です。
コモディティ化している業界。今後、コモディティ化するであろう業界。どちらも、業界全体の商品(製品やサービス)供給量と市場全体の需要をしっかりと把握する必要があります。また、その中で業界が得られる全体の利益を左右するのはトップの企業の戦略であることを理解する必要があります。
■業界の供給量が市場の需要よりも少ない時。
この場合、業界に参入している企業は総じて黒字化します。ただし、最も利益を得られるのは、1位の企業です。商品の供給量が大きい企業ほど1つあたりの製造単価と販促コストが下がるということを前提とします。
この場合、
1位の企業の利益の総額>2位の企業の利益の総額>3位の企業の利益の総額>・・・
となります。これらを極端に考えてみます。
企業が販売している量:x、 企業が生産するコスト:y、と表現すると(x、y)と表現できます。
例えば、1位の企業は販売量が5、コストが3で(5、3)
例えば、2位の企業は販売量が4、コストが4で(4、4)
例えば、3位の企業は販売量が3、コストが5で(3,5)
例えば、4位の企業は販売量が2、コストが6で(2,6)
例えば、5位の企業は販売量が1、コストが7で(1、7)
だとします。
上記の場合、業界全体の商品供給量=5+4+3+2+1=15になります。
市場全体の需要が15よりも大きい場合は、どの企業も利益を得ることができます。供給量が市場が求める需要より足りていないので高くても購入されるからです。
ちなみに市場の平均的な供給価格が8だとすると、
1位の企業の利益は5×(8−3)=25
2位の企業の利益は4×(8−4)=16
3位の企業の利益は3×(8−5)=9
4位の企業の利益は2×(8−6)=4
5位の企業の利益は1×(8−7)=1
となります。
上記の場合、業界全体が得られる利益=25+16+9+4+1=55になります。
■業界の供給量が市場の需要よりも大きくなった時。
この場合、業界に参入している企業の一部が赤字になります。当然、販売量が大きい企業は利益を得ることが出来るでしょう。しかし、市場全体の需要が小さくなるため、提供価格は良くて維持、通常は下落します。従って、各企業の利益も減少します。
仮に市場の均衡価格が8から7に、市場全体の需要が14に下がったとします。この時、5位の企業は市場から追い出されます。かつ、4位以下の企業も自社の利益が目減りします。総じて業界が得られる利益も減少します。
1位の企業の利益は5×(7−3)=20
2位の企業の利益は4×(7−4)=12
3位の企業の利益は3×(7−5)=6
4位の企業の利益は2×(7−6)=2
5位の企業の利益は0×(7−7)=0
となります。
上記の場合、業界全体が得られる利益=20+12+6+2=40になります。
■この状態で1位の企業が価格を更に下げてシェアを拡大を目指したとします。
市場の均衡価格が7の時、1位の企業はコスト3で対応可能なのでシャア拡大目的で価格を一気に5まで下げたとします。1位の企業はコスト3なので5で販売しても利益2を確保できます。この場合、市場の需要が14のままだとすると、
3位の企業の利益は3×(5−5)=0
4位の企業の利益は2×(5−6)=△1
となるため、3位の企業、4位の企業は市場から追い出されます。結果、1位の企業は価格を下げることで、3位の企業の販売量3と4位の企業の販売量2の合計5を獲得できます。
その時に1位の企業、2位の企業の獲得する利益は以下のとおりです。
1位の企業の利益は(5+3+2)×(5−3)=20
2位の企業の利益は4×(5−4)=4
上記の場合、業界全体が得られる利益=20+4=24となります。
つまり1位の企業はシェアを獲得することは出来ても1位の企業としての全体の利益は変化しません。更に、1位の企業が値下げを断行したことで業界全体が得る利益は大幅に減少したことがわかります。
■今度は1位の企業が価格を少し下げてシェア拡大を目指したとします。
市場の均衡価格が7の時、1位の企業はコスト3で対応可能なので提供価格を6にしても利益は3出すことが可能です。この場合、市場の需要が14のままだとすると、
4位の企業の利益は2×(6−6)=0
となるため、4位の企業は市場から追い出されます。結果、1位の企業は価格を少し下げることでも、4位の企業の販売量2を獲得できます。
その時に1位の企業、2位の企業、3位の企業の獲得する利益は以下の通りです。
1位の企業の利益は(5+2)×(6−3)=21
2位の企業の利益は4×(6−4)=8
3位の企業の離型は3×(6−5)=3
上記の場合、業界全体が得られる利益=21+8+3=32となります。
つまり1位の企業はシェアを獲得して、かつ若干ですが利益を拡大することが出来ました。勿論、この場合も1位の企業が値下げをしたことによって業界全体が得る利益は32となり減少していることがわかります。
1位の企業がシェアを無理して拡大する場合、シェアは確保出来ますが、市場全体の利益と自社が取れる利益の総数を減少させることになります。また、シェアをある程度維持して、1位と2位の均衡を作ることによって、自社の利益を最大化することが可能になります。1位の動きが業界全体のシェアや利益を左右するのです。
こんにちは。
たとえば、下位の数社が合併して、1位に比肩する規模になって追撃するケースがありますね。鉄鋼や通信(携帯電話)などは、その典型かも。巨大設備が必要な産業のようです。
一方、1位が市場を独占したいと思わず、競争を好まない場合は、談合がありますね。業界に声をかけ、価格維持を図る、と。
そういえば、談合はB2BやB2Pが多く、B2Cでは聞きません。なぜでしょうか? 缶ビール220円とか缶ジュース120円は、談合でなく、結果として同一になると、何かで読んだことがあります。
談合がB2Cに少なかった背景は、提供する顧客数が多すぎた、若しくは、提供する企業の数が多く議論が難しかった。という推測はいかでしょうか?
顧客に対して商品を提供する企業が結果、より顧客本位で仕事をしている結果とも解釈してよいかもしれないですね。
なるほど、顧客数が多い、またはプレーヤー数が多いと、調整が難しいですからね。難しいというより事実上不可能なんでしょうね。