少子高齢化と言われるなか、日本の社会を取り巻く環境は成長から成熟、そして衰退へと向かう。人口が減少し、労働人口が減少することで、消費のあり方が大きく変わったことが背景にある。
戦後、労働人口が一気に増え、皆が地方から都会に集まることで核家族化が増える。それに伴って景気が上向く時期があった。
しかし、今、核家族の層がまた薄くなっている。世の中の不安が家族のライフサイクルを変えているのが背景にあるからだ。従来のライフステージでは20代から30代の前半で結婚、そのまま育児にはいる。その前後でマイホームの購入があり、ローンを返済する為に更にせっせと働く。50代後半から60代前半で子供が独立して、同じ時期に結婚。ローンの返済も前倒ししているので、比較的に悠々自適な生活をする土台が出来上がる。そして、次の世代にバトンタッチしていく。
さて、現在はどうでしょうか。未婚、シングル、DNKS、結婚しているけれども子供がいない。一生結婚しない、できないヒトも多い。生涯未婚率は男女で異なるが1/3から1/4ある。しかも、結婚した夫婦の1/3は離婚。明らかに高度成長期と異なる傾向にあるのがわかる。
上記の傾向は80年代の半ばから始まっている。男性の場合はバブル崩壊時期頃より、自分の経済力では家族を養うことができるかという不安があり結婚に躊躇しはじめる。それが故に結婚に踏み出せないという。
一方で女性は、先行きが不安になり社会に進出していく。結果的に経済的に独立していく。合理的に考えて結婚しなくても良いのではという考え方が徐々に出始めてきた。この時代から負け犬という言葉とお一人様という言葉が対立するようになる。
その後、アラフォーという言葉が一人歩きする。お一人様世代の消費が企業に良いインパクトを与え、メリハリ消費のメリットを受けることになる。不要なものには消費を抑えるが、自分のご褒美として、高級ホテルでの宿泊やエステで自分磨きなど、従来は考えにくかった消費のバランスである。
概して言えることではないが、独身女性、未婚シングルの女性の7割は実家にお金を入れることが無いので、男性のそれと比較して可処分所得が多いことが特徴。派手な稼ぎは無いが、メリハリをつけることで十分に生活を楽しみことができるのだ。
一方、昔は独身貴族と言われた同世代の男性は独身王子と称される。貴族との違いは身分や収入にあった身の丈消費。しかし、シングルで独身生活が長くなると、徐々に自分の社会的地位や会社での役割レベルにあわせて、時計、ネクタイ、スーツに投資を行うようになる。その根底には、まだ競争世代のなごりがあり、いつかは自分もというのがあったのだろう、年収に応じて消費や購買商品のランクが上がっている。
また、近年の若い層の特徴は、もてたい!意欲よりもリスペクト!という傾向が顕著になっている。それ、どこで手に入れたの?なんで知っているの?どうやって行うの?男性と女性というよりも同じ人間として接することが増える。草食男子といわれる層の特徴は、自ら告白することをしない。この背景は、競争を体験したことがなく、常に自分よりも他人をすごいと思ってしまう傾向からだと思う。自分に対しての自信が極端に少ないのかもしれない。内面に自信を持てない特徴として、髪型や服装など、細かなところを極度に気にするようになる。
上記を象徴する行動に、飲まない、巣ごもり、ホームパーティーと、昔の世代と異なる傾向が見られる。根底には、誰にも迷惑をかけたくないという意識がある。バブル終焉後、親世代がひたむきに仕事をするも生活は何ら変わらない。かと言って最低なわけではないので不満も持たない。そんな中で社会では車の事故が後を絶たない、海外ではテロの映像が繰り返し放映される。一生懸命がんばっても青果が出ずに、会社が倒産するイメージが流れる。
そのためか、努力をすることに意義を感じない、ハードの象徴でもあった車などを持つことが悪のイメージになっていく、そして海外に出ることは危険というようなネガティブな発想を持つこととなったのかも知れない。
また、親の経済力が極端に高いわけではないので、親と同居が続くか、近くに住む傾向が強くなり、親とのキヅナが昔よりも強くなっている。もちろん良いことだ。そして親というよりは友人というよな関係が強くなっている。結果、経済的に独立できない、独立しても価値観が違うヒトと過ごすよりは親と過ごしたほうが楽、そのように考える層が広がったのでしょう。
核家族化は大規模調査上は変わらないが、実際はゆるやかな大家族化が復活しているのかもしれない。
この傾向は夫婦の付き合いにも出てくる。結婚しているけれどもただの友達夫婦というニュアンスが強くなっている。旦那の稼ぎに不安をもつことで、共働きが増える。男性や女性に関係なく力がある人が世の中で認められる世界になり、互いが対等の立ち位置になり、互いを尊重し合うようになる。様々理由があるのだろうが、昔と違って、財布も別会計というのもこの傾向からだろうか。
いずれにせよ、景気の悪さ、その期間が極端に長かったことによって、逆に家族のつながりが復活している。大家族化という動きは目に見えないが、完全なる核家族が緩やかに崩壊しているのは事実。当たり前だが、高度成長期やバブル時期での理屈や発想は明らかにあわないのだ。