ファンケルは無添加化粧品というジャンルを展開しています。創業者の奥さんが、化粧品に含まれる防腐剤や酸化防止剤が原因で肌荒れやかぶれがひどくなったことに起因します。「無添加の化粧品をつくろう!」と。
仮に、防腐剤や酸化防止剤を使用しなければ、化粧品の品質は1ヶ月程度しか持ちません。ということで大手化粧品会社は、その商品を開発しても採算に合わないということで見送っていました。ファンケルはここにチャンスを見いだして、腐る前に使い切れる5mlの密閉型の小分け容器に無添加化粧品をパッケージして通信販売を開始しました。
当時の業界の常識です。化粧品はイメージが命、そんな注射液のようなアンプルのような化粧品が売れるはずがない。しかし、消費者の反応は違います。「携帯に便利」「肌に安心」と口コミが徐々に広がりメガヒットとなります。
業界が考えている常識は時として発想の幅を狭めます。新しい商品を作る、新しい市場を開拓するためには、もう一度顧客の視点に戻る。加えて、部外者の視点でモノゴトを見ることが大切なのかも知れません。
ファンケルの戦略は明確でした。無添加の化粧品を作る。防腐剤や酸化防止剤を使わない。このような商品開発は、顧客に歩み寄った商品と言うよりは、顧客が歩み寄ってきた商品となり、結果としてファンケルに継続的な利益を提供する商材となりました。
どんなに意識しても、企業の視点は強くなります。そして、自己満足に陥ります。しかし、顧客視点、外部者の視点、企業の視点を徹底的に考え抜くことで、同業種、異業種を圧倒する商品が生まれるのかも知れません。
傷む前に使いきりサイズ。なるほど、ですね。
防腐剤に対するユーザの(心理的)アレルギー度が、なかなかメーカーには理解しづらいのでしょう。「本当は無添加がいいけど、他に商品がないから仕方なく防腐剤入りを使っている」という状態を、「喜んで使っている」と受け止めてしまう。 気付きというのは、難しいですね。
ところで、以前、JICAで、BOPビジネスについて取材をしたことがあります。ある欧州企業の事例として、小分けがキーワードなっていました。例えば生理用品など、日常的に使う、安価なものでも、貧しい人は買えない。そこで、小分けにして、価格を落とす、というわけです。BOPビジネスの成功例として、話されていました。
日本では味の素、先進国では潜在やヨーグルト。こっちに住んでいたら、まとめて買ったほうがお得!となりますが、その日生きることが大切な国や地域では使う分だけが重宝される。これも現地の消費パターンや行動を徹底的に観察した結果ですよね。