メーカー直営の背景

2012年5月29日 火曜日

最近、メーカー直営の店舗が急増しています。例えばカルビー。直営店では、主力商品のポテトチップスのできたてが食べられるほか、地域限定で販売されている商品を購入することができます。

メーカーが直営店を運営する理由は何があるでしょうか?最も先に考えられることは、自社のブランディング。メーカーのコンセプトの基、全てのプレゼンテーションから顧客との直接的なコミュインケーションまで全て100%メーカー主導で行えます。これによって、更にブランドロイヤリティを高めたり、ブランドの価値を発信することが可能になります。

では、何故このような店舗展開を行うメーカーが急増しているのでしょうか?例えばPBの台頭が考えられます。プライベートブランドとは、メーカーではなく小売りや流通業者が自ら企画した商品を独自のブランドを付けて販売する商品です。トップバリューやセブンプレミアムなどは、ちまたに十分に浸透しています。これまでのメーカーが作っていた商品をナショナルブランドと称した対義語です。

富士経済がまとめた2011年のPB食品市場の実態調査によれば、2010年のPB食品売上比率が9.3%になる見込みです。2007年の同数が6.1%であることを見ると、ジワジワ着実にPBが消費者に指示されていることが分かります。

PBブランドの売上高総額は、1位がパン3,553億円、2位牛乳1,265億円、3位お茶類660億円、4位乳製品597億円、5位即席麺、スナック麺532億円となっています(2010年見込み)。

これをNBとの売上費で見ると冷凍スナック類、パン、カップ飲料、ビール類はPBにかなり流れている傾向が分かります。冷凍スナック類はPB売上比率がおよそ30%。景気悪化による節約志向で一度PBにながれ、そのまま定着しているのです。これらのジャンルは、コンビニでも個食設計がなされ、レンジでチンして簡単調理で食べられる商品が定番として定着しています。

パンのPB売上比率はおよそ20%。やはり量販店での食パンやテーブルパン、コンビニの焼きたてパンがPB市場を牽引しています。この傾向はコンビにから始まり、2007年から大型流通店でのPB商品が台頭しはじめ、景気後退が顕著となった2009年にPBパンが市場に定着しています。食パンに置いては、超熟、本時込などのNBと低価格のPBが市場を2分するかたちになっています。

2007年頃、メーカーは、景気後退によって自社で遊んでいるラインを無駄にするよりは、PBの生産にあてて、稼働率を上げる動きをしました。これが、自社を逆に苦しめる形になり、2008年、2009年と景気が急激に良くならず、PBが定着してしまいました。大型流通店では、自社ブランドを顧客が最も買い易い場所に配置するため、どんなにNBがテレビや広告を売っても、売り場で判断する消費者には叶わないのです。そう、ジワジワとNBの力が薄まってきているのです。

このような背景から、今後もNBが自社のブランドを発信して、これまでの価格で購入して頂ける消費者に支持をもらい続けるためには、これまで以上のブランド価値の向上が必要になる。直営店舗の運営の背景には、このような厳しい事情が隠れているのです。



コメント / トラックバック2件

  1. 椿事 より:

    食品のブランディングのためには、CMなど広告宣伝もかかるし、直営店運営は運営コストもかかる。かなり重い課題ですね。直営店は、全国津々浦々までというのは考えられず、象徴的な場所に数店出すだけでしょうね。
    NB vs PB、競ってくれるのは消費者にはありがたいですが、ツブし合いになるのも、キツい。チロルチョコとか、ベビースターラーメンとか、パイン飴とか、独自のポジションを占めている会社もありますよね。業界の上位以下は、思い切って早めにニッチ戦略に切り替えないと、厳しいでしょうね。

  2. biznavi より:

    味の違いが分かりにくい食品を中心にPBに巻き返されています。一方、特徴的な商品はNBが圧倒的に強い。競争の戦略が明確なところは残り、あいまいなところは淘汰される。そんな時代ですね。

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