リバースイノベーション戦略

2010年9月8日 水曜日

円高の影響で海外に生産地を移転する企業が増えています。しかし、もっと大きな時間軸では生産拠点だけではなく、開発拠点までを海外に移すケースも出てくるでしょう。しかも新興国に。

このモデルはリバースイノベーション戦略と呼ばれGEが実際に実行している戦略です。通常、グローバル企業は先進国で商品開発を行い新興国向けにマイナーチェンジして販売する戦略を取っています。この戦略はグローカリゼーション戦略と言いわれます。リバースイノベーションはその反対の戦略です。

グローカリゼーション戦略を取るとほとんどの場合、商品が先進国向けの仕様なのでとってもハイエンドな商品設計になるため、いくらマイナーチェンジしても新興国の高級層までの需要しか満たせません。

リバースイノベーション戦略の場合、はじめから新興国のボリュームゾーンを狙うために何をするのか?を考えて新興国でゼロベースで商品開発を行うため、安価な商品を逆に先進国に輸出して大量に拡販する方法も取れるため、多くの需要を見込む事ができます。

リバースイノベーション戦略を展開していく国々は、今後BOPと呼ばれるところに集中するでしょう。地球上の40億~50億の人口がBOPと呼ばれ、年収が3000ドル以下の生活レベルです。

ターゲットとしては、既に人口が大きくかつ、その人口も成長中のBOP諸国です。それから国として取引に対して統治能力があることが重要です。独裁的な国は、上記の条件をクリアしていても真っ当なビジネスができないからです。もちろん加えて企業の強みを活かせる事も条件になると思います。

マーケティングミックスを考えてみます。まずはプロダクト。提供する国は貧しいくにだから品質は下げて良いと考えますが、実際は貧しいが故に価値を重視する傾向があります。従って、優れた品質(と言っても先進国のいわゆる優れた品質とは異なる)でターゲット諸国の生活環境にフィットさせる事が大切です。昔は安かろう悪かろう、でしたがリバースイノベーション戦略で提供する商品コンセプトは、やすいい商品、になるでしょう。これらを実現するために正にゼロベースの商品設計が鍵になるのです。

それからパッケージやサービスの提供の仕方にも工夫が必要です。基本BOPの国々では必要な時に必要な量を消費する傾向が強いです。従って、大量のパッケージではなく毎回、使いきれる1回分のパッケージを基本とします。

次に価格。言うまでもなくコストリーダーシップ戦略を取ります。しかも究極の。そのための低コストで生産できる体制を構築します。バリューチェーンやサプライチェーンを後進国で完了させるのです。ここはリバースイノベーションの発想の原点でしょう。

流通においても、現地の人、現地の資本、現地の行政を取り込み徹底した低コスト体制を構築する必要があるでしょう。

そして最後にプロモーション。基本はマス広告を取るとよいと思います。BOP諸国は首都や都市に人口が極端に集中するため、メディアが発達する都市においては極めて有効なプロモーション活動になります。それから営業パーソンを個別に雇うよりは、対象エリアで信用力のある人を大量教育して、販売量に応じてコミッションを払う個人エージェントを用いた人的販売が有効だと思います。

早嶋聡史



コメント / トラックバック2件

  1. ぐるぐる より:

    おはようございます。ぐるぐるです。
    途上国ビジネスは、開発段階から現地人材を活用することが大切だと思います。先進国の人材がゼロベースで発想するのと同様、現地の人材が実感ベースで発想するのも効果的だからです。実際、リバースモデル成功企業は、現地人材の起用法が非常にうまいようです。この点、日本企業は情報漏えいを恐れるあまり、及び腰ですよね。
    また、BOPで注目すべきは金融、マイクロファイナンスだと思います。社会起業の観点からも、既存の巨大企業でなく、優秀な若者がこの分野を担い、成長させていくのではないでしょうか。

  2. biznavi より:

    ぐるぐるさん

    コメント、ありがとうございます。
    とある企業でもBOPでのバリューチェーン移管を検討し、現地の人材起用を考えているシーンがありました。ここでも、情報漏えい、強みが漏れる、的な発言が多くを占めていました。ゼロベースになる事はあたまで考えれても、実際は難しい。特に組織が大きく、組織が古い場合はその傾向が強いですね。

    BOPのモデルは、グラミン銀行のマイクロファイナンスや互助組的な発想もおもしろいですね。

    今後、注目すべき分野の1つですね。

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