ブランドの終焉

2010年7月30日 金曜日

ブランドはお客さんの信頼を得るために長い歴史をかけて様々な努力をしていました。例えば鞄。鞄であれば革の材質を徹底的に吟味して見極め、限られた職人に縫製を任せ伝統的なデザインを守っています。もちろん商品が素晴らしいだけではなく、顧客に対しての接客やサービスも長い間培いながら、常にお客さんに目を向けています。

そんな長年の積み重ねがブランドになり、そのために商品以上の価値が付き、高いお金を払っても人が欲しくなる商品に仕上がっていったと思います。ブランドが信頼感や満足感を提供するからです。

現在、世の中に出回る高級ブランドを見てみると、多くのブランドが有名になったら次は生産能力を高めるようになっています。もともとこだわり抜いて作ってきた商品を工業化するかの如くじゃかじゃか作りだすのです。

そして次はコスト競争を始めます。工業化すると効率とか利益とかを追求するようになるからでしょう。そして、コスト競争力がなくなれば、今度は他社に自分のブランドを作ってもらうのです。OEMです。

なんだかブランドがこれまで培ってきた歴史を度外視です。フランスやイタリアのブランドなのに、生産をコストが安価なスペインであったり、トルコであったり、ルーマニアであったり、そのような地域で作られうようになります。

またブランドが有名になると、初めは鞄だけしか作っていなかったのが、財布を作ったり、ベルトを作ったり、そのうち洋服を手掛けたり、サングラスを手掛けたり。気がつけば、どのブランドも商品のジャンルが増え、どのブランドも上から下までそろうようになります。ブランド商品の品ぞろえがどのブランドも同じで、他のブランドとの差異性が見えなくなるのです。

そもそもそのブランドのアイデンティティは何?と言っても、もはや分からなくなっている状況が世の中にたくさん観察できます。

最悪なのはその次でしょうか?ブランドを自ら薄めていったためパワーが衰え売れなくなります。そして、皆の発想は一律の値下げ。でも価格を下げても売れないでしょう。しかも、下げれば下げるほどブランド品を維持するための販促費や店舗の固定費がかさみじり貧になります。

結局、価格も売り上げも販売店数も芳しくなく、荒れ果てたすえ、ブランドの名前だけが残ってしまうのです。ブランドの存在意義がなくなるのです。

早嶋聡史



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