とある国の小さな漁村で一人の米国人ビジネスパーソンが桟橋に立っていると、沖合から小舟に乗った漁師が帰ってきました。漁師は大きなキハダマグロを数匹釣り上げていました。あまりの見事なマグロに米国人は漁師に声をかけました。
米国人:「釣り上げるのにどのくらいかかったのか?」
漁師:「すぐに釣れたよ。」
米国人:「それだったら、どうしてもっと沖でねばって沢山釣らなかったの?」
漁師:「これだけあればしばらく家族を養っていけるからね。」
米国人:「じゃ、余った時間をどうやって過ごすのかい?」
漁師:「朝はゆっくり起きて、少し漁をしたら子供と遊んで、妻と昼寝するのさ。」「夜になったら村に繰り出して友達とお酒を飲んでギター片手に歌うのさ。毎日、やることで精いっぱいなんだよ。」
米国人は鼻で笑いました。
米国人:「私はウォール街の企業で重役をしている。ひとついい知恵をあげよう。」
米国人:「まずは、もっと漁に時間を費やしなさい。そしてお金を稼ぎ、大きな船を買いなさい。うまくいけば何隻も大きな船が買えるよ。そして最終的には漁船団を作るのさ。」
米国人:「水揚げした魚を仲買人を通さないで、君が直接加工して、最終的には缶詰工場を建てるのさ。漁から生産、加工、販売まで手掛けてね。こんな漁村をおさらばして、まずは首都に移りなさい。そこからLA、そして最後はNYに本社を出して、会社を他の人間に任せるのさ。」
漁師:「でも旦那、そのくらいの規模にするのに、何年かかるんですかい?」
米国人:「15年から20年くらいかな。」
漁師:「で旦那、そのあと、どうするんですか?」
米国人:「タイミングを見計らって新規株式を公開して、会社の株を上場して多金持ちになるのさ。何百万ドルも稼げるぞ。」
漁師:「それで?」
米国人:「君は引退して、海辺のひなびた漁村に引越すのさ。朝はゆっくり起きて、少し漁をしたら子供と遊んで、妻と昼寝するのさ。夜になったら村に繰り出して友達とお酒を飲んでギター片手に歌うのさ。」
早嶋聡史