早嶋です。
設立して、10年程度で超一流企業になった会社といえば、IT企業に代表される、Googleやアマゾン・ドットコムなどを思いつきます。時計メーカーでもわずか10年あまりで一流企業になった会社があります。高級腕時計のフランク・ミューラーです。
フランク・ミューラーの本社兼工房は、スイス・ジュネーブの近郊、レマン湖のほとりです。従業員は約400名、92年設立当時は14人だったとか。生産台数においても、当時は年間に200個余りだったのが、現在では5万個と250倍の生産です。
スイスの高級時計は、その歴史が100年、200年を超えるブランドがゴロゴロしているのに、フランク・ミューラーは確固たる地位を構築しています。70年代のクオーツショック(クオーツ時計が機械式時計を駆逐した)によって機械式時計メーカーは打撃を受けました。これにより、老舗メーカーを含む企業の資本集約化が進みました。フランク・ミューラーは、歴史と伝統を持つ老舗ブランドや、資本の集約によって資本力を兼ね備えた大手ブランドの競争環境の中、ごく短期間で成功を収めているのです。では、フランク・ミューラーの成功の秘訣とは何だったのでしょうか?
創業者のミューラー氏はジュネーブ時計学校在学中より、才能に注目され、卒業後も数々のキャリアを積みその名声をとどろかせていたようです。しかし、キャリアの集大成として自身のブランドを立ち上げたものの、即成功とはいきません。
フランク・ミューラーが成功を収めるきっかけは、共同経営者でCEOでもあるヴァルタン・シルマケス氏との出会いと言われます。一方は時計技師、他方は宝飾品の細工士。ただし、シルマケスは経営の才能も持ち合わせていました。
まるで、ホンダの本田宗一郎と藤沢武夫、ソニーの井深大と盛田昭夫のような組み合わせですね。二人の出会いによって、フランク・ミューラーの独特の製品、高度な技術で従来の時計の概念を壊す製品が、浸透していきます。
フランク・ミューラーの時計は実用的なものが少ないといわれます。それは、最近発表されたクレージー・アワーズ(時計の文字盤の数字がバラバラに配置されているが、時刻は針が巧みに動いて時間を示します。)などを見ると分かります。
フランク・ミューラー氏は、雑誌のインタビューで「時間というのは人間が作った概念です。ですから私は時計を作るに当たって、時間というものを視覚で判断でき、理解でき、そして不思議に思ってもらう、そういう時計を作ってきました。」と発言しています(日経BP参照)。
商品コンセプトとターゲット(世界中のセレブ)が明確なフランク・ミューラーのマーケティング手法も徹底しています。高級ブランドのマーケティング手法には、各界で活躍する著名人に無料で配り広告宣伝塔になってもらうケースがありますが、フランク・ミューラーはこの手のプロモーションを一切行いません。これは、フランク・ミューラーの時計はあくまで、プライベートな時間にこそふさわしい時計なのだということを明確にしているからです。「時間は個人で違う。昼の12時に必ず昼食を取らなければならないということはない」時間の概念をとことん追求し、時計という形で表現しているのです。
経営的な部分も、もちろんしっかりしています。未公開の会社なので公表はされていませんが、売上規模は300億程度。この規模になれば、ミューラー氏一人の技術力ではどうにもならないでしょう。それをシルマケス氏がうまくコントロールしているのです。また、積極的なM&Aで部品メーカーを参加に収め、部材のほぼ100%をグループ内で調達する体制が整っていると言われています。
時間の概念を追求して、それを形に表現することを、とことんまで追及する。その技術者魂に、シルマケス氏の経営手腕がうまく融合して、今日のフランク・ミューラーがあるのでしょう。
—ただ今、ブログマーケティング実験中。—
実験の詳細は、『ブログマーケティング実験』『ブログマーケティング結果報告』をご覧ください。
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