技術をとことん追求する事。技術者にとって当たり前の道だと思います。早嶋も昔は研究職の身、マニアックなネットワークの研究に没頭していました。当時、研究している内容のビジネスの着地点はおろか、それがどのような商品に役に立つのか?なども余り意識していなかったと思います。
一方、技術から離れてマーケティングの世界に身を置いたとき、お客様って案外技術の差って分からないかも知れない!と感じました。
例えば、ワインのソムリエは2万円のワインと2000円のワインの違いを当てる事が出来るでしょう。しかし、素人にその違いが分かるでしょうか?
例えば、音響のエンジニアは、20万円のスピーカーと100万円のスピーカーの音の違いを当てる事が出来るでしょう。しかし、素人にその違いが分かるでしょうか?
例えば、美容師さんは、カット技術の違いが分かるでしょうが素人にその違いが分かるでしょうか?
業界は違えども、技術者は自身の技術を追求します。しかし、ある一定レベルの技術水準を超えたところで多くのお客様はその違いが分からなくなると思います。プロは技術の違いをPRし、その分高い製品やサービスを提供するでしょう。しかし素人であるお客様は、その違いを理解しないまま、あるいはそのスペックを活用できないまま、高い値段を払っているかもしれません。
極端な例は、携帯電話やパソコンです。テレビやハードディスクレコーダーなどの家電もそうかもしれません。全ての機能をパーフェクトに使える人を見た事ありますか?殆ど、必要のないスペックにお金を払っているのではないでしょうか?極端に言いすぎていますが。
上記は、技術やスペックなど、機能にフォーカスした場合です。
一方、このような経験は無いでしょうか?あの商品は技術はおとっているのにお客様が沢山集まっている。一体何なんだろう?と。早嶋も横河のマーケ―として仕事をしている時、コンペジターの商品をそのように感じた事がありました。しかし、良く考えると、お客様にとって技術の違いは分からない。つまり同等レベル。それだと技術以外のものに魅力を感じているのでは?と。その違いを追求して提供する事も重要なんだ!と。
まさにブランドであったり、その起業の文化であったり。お客様の感性に訴える部分にお客様はお金を払っているのです。
成熟して行く世の中、この傾向は強くなるでしょう。まだ市場が成長していたり、発展している段階では新しい技術の違いが明確になるでしょうが、やがて成熟して競争が激しくなるとどの企業も競合がクリアしている技術水準を持つようになります。つまり、機能の差がお客様目線から無くなるのです。これはコモディティーとなる事を意味します。
一方で、コモディティーにならずに、常にスペシャルなモノも存在します。上記の機能競争にフォーカスしないで感性にフォーカスした企業や製品・サービスです。
モノに満たされると結局人間は何が欲しくなるのか?それはインターナルな欲求です。それは目に見えません。そしてその目に見えない感性を刺激する概念こそ、人がお金を払っている対象なのでしょう。
早嶋聡史