百貨店の凋落

2006年5月7日 日曜日

早嶋です。

日本百貨店協会のまとめによれば、H17年度の全国百貨店売上高は前年比0.7%増の7兆8509億円で、H8年度以来9年ぶりに前年実績を上回りプラスに転じたと発表がありました。株高などを背景に貴金属や高級腕時計などの高額商品が件引きしたとしています。

上記の報道を見ると、いかにも百貨店業界が追い風のように見えます。ポイントは、前年比で比較しているからです。以下に、全国百貨店の売上高推移を調べてみました。(日本百貨店協会 参照 単位:兆円)

 98年 9.12
 99年 8.98
 00年 8.74
 01年 8.53
 02年 8.30
 03年 8.10
 04年 7.82
 05年 7.85

98年から04年の推移を近似曲線で表すと毎年0.21兆円程度売上が下がっていることがわかります。(Y=-0.218X+9.384 R^2=0.99)98年から毎年2180億円程度の売上が減少しているので、明らかに百貨店業界は長期低迷を続けているといえます。今回の増加は、前年比で0.7%なので、この程度の増加では、この低迷を抜けているとは言い切れませんね。

98年はバブルの頃で、日本の景気も良かったでしょう。百貨店は、売上減少をただ単に、景気のおかげとして捉えてよいのでしょうか?

98年前後と現在では、日本の所得構造に大きな違いが出始めています。バブル前後は、一億総中流意識が強かったと思います。今は全体の給与所得の37.8%が300万円以下です。そして年収300万円から600万円以下の層が41.5%。明らかに、百貨店が商品・サービスを提供するターゲット層に変化が生じているのです。百貨店は、クールビズといったひと時の変化に注目するのではなく、長期的に変化しているトレンドから読み取れる情報を下に、構造を変えていかなければこの先、更に状況が厳しくなると思います。

百貨店が繁盛していた頃、あそこに行けば一通りのものが揃う、といった顧客向けの商品・サービスを提供する良かった。でもそのようなターゲット顧客は殆どいなくなり、マーケットの8割が中流よりの下の層に移っています。この層を取り込むためには、価格的にはバリューがあって、でも決してセンスが悪くない。といった商品・サービスの拡充が必要になってきます。センスが必要なのは、中流の意識が以前とあるからです。でも、思い切った消費は出来なくなった。また、年収1000万円以上の高所得者層(全体の4.9%)を狙うとしたら、現在の百貨店には、彼らを満足する商品・サービスをそろえなおす必要があります。現状の商品は、あまりにも中途半端ですからね。

百貨店がこぞって回復を目指すのであれば、パイの小さいアッパーに目を向けるのではなく、中流より下の層に目を向けなければ業績上昇といったことは難しいでしょう。いづれにせよ、百貨店の商品・サービス構成を今のまま続けていたとしたら明るいニュースは途絶えるでしょう。

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