売上から利益に

2009年10月11日 日曜日

Mc
『当社は今後数年でさらなる拡大を目指します!』

成熟社会の世の中であっても、大企業と言われる殆どの企業が上記のような方針を経営者の挨拶の中で話しています。成長によってあらゆる問題を解決する事が目的でしょう。

大胆な目標設定には否定しません、悪くない行動です。しかし、成熟経済の中、人口の増加や物価の上昇による収益の微増を除けば、永遠に成長を進める事は現実的ではありません。企業や事業、商品やサービスにはライフサイクルが存在します。市場に初めて姿を現した時は、それこそものすごい勢いで成長を続けるでしょうが、成熟してしまえばその成長はあったとしても僅かです。

それでは何を目指すべきか?ひとつは売上から利益にフォーカスを絞るべきです。例えば、アル・ライズ氏の論文にアメリカのマクドナルドの事例が載っていましたので、この数字を基に考えてみます。

拡大か?縮小か?

以下、マクドナルドの米国での1店舗当たりの売上です。

2007年 13862店 206万8000ドル(1店舗当たりの売上)
2006年 13774店 194万4100ドル
2005年 13727店 187万1700ドル
2004年 13673店 178万8100ドル
2003年 13609店 163万2600ドル
2002年 13491店 152万7300ドル
2001年 13099店 154万8200ドル
2000年 12804店 153万9200ドル
1999年 12629店 151万4400ドル
1998年 12472店 145万8500ドル

9年間での1店舗あたりの売上、この数字だけを見れば伸びているように見えます。しかしこの増加の多くは物価上昇によるものです。9年間で消費者物価指数は29%増加しています。この上昇分を差し引くと2004年頃より200万ドル(1店舗当たりの売上)で頭打ちになります。2位のバーガーキングが2007年の売上が1店舗当たり124万ドルなのでこの数字は非常に頑張っている数字です。

それでもマクドナルドは拡大を続ける戦略を取っています。現在、ハンバーガー、チーズバーガー、フライドポテトが主力メニューだった頃から、飲料を含めておよそ80種類のメニューを用意しています。この増殖は現在進行形。健康志向の流れでサラダやチキンのメニュー、スタバの成功を参考に高級コーヒー市場への参入、エスプレッソの追加と続きます。

メニューの増加は商品ごとのオペレーションが品雑になり利益を圧迫する形になるでしょう。そして最も怖いのは、マクドナルド=ハンバーガーという目的ブランドの形が崩れることです。それでもマクドナルドがハンバーガーの地位を占めているのは、圧倒的な店舗数と莫大な広告宣伝費のおかげだと思います。

では、拡大を続けないとしたら、どのような戦略が考えられるでしょうか?ポイントは1店舗当たりの売上を減らすが利益を増やす事を考えることです。仮に1店舗当たりの売上が200万ドルで頭打ちだとしたら、何を行っても限界の域に来ています。そのために、メニューを減らしハンバーガーの原点に絞りこみます。そして、絞った分、広告宣伝費を抑えます。メニューが減るので販促商品の数も減らすことが出来るでしょう。

もし、ハンバーガー意外の商品で拡大を目指すのならば、マクドナルドとは違う別ブランドを構築して第二、第三のブランドを立ち上げる方法を取った方が良いと思います。マクドナルドのノウハウやブランディング手法や業務プロセスがあれば、別ブランドの立ち上げは難しい作業ではないでしょう。

ひとつのブランドでの天井を見極めて、そのブランドを薄めることはしない。拡大のために違うカテゴリを選択するならば、同じブランドを冠せず、別ブランドを立ち上げる。成熟したブランドは、とことんまで当初からのメッセージを繰り返す。

拡大を目指すにしても、ブランドが持つ意味を考えた経営判断が必要な時代、それが成熟した社会での心得だと感じます。

早嶋 聡史(はやしま さとし)

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