車でもなんでも、人が一度何かを所有すると、ほかの人よりその所有物を高く評価する傾向があります。これらの概念はダニエル・カーネマンシ氏の論文の中で保有効果として論じられています。
M&Aを行う際も保有効果が働きます。つまり、買い手よりも売り手がどうしても高く会社や事業を評価するのです。自分で育ててきた会社なので、他人の手に渡す段階で市場価格よりも高く評価してしまうのです(自分で育てるという意味ではイケア効果と捉えても良いですね)。
M&Aの価格算定方法は様々にありますが、最も重要なのが買い手と売り手が合理的に納得できる価格であることです。そのため、保有効果に関する論文は非常に参考になります。
保有効果には3つの不合理な特性があります。1つ目は、自分が既に持っている所有物に自然と惚れ込んでしまうことです。自分の会社を売るとしましょう。M&aのブローカーを通じて買い手を見つけました。しかし、その瞬間くらいから、その会社で過ごした時期や思い出を振り返る事でしょう。そして、素晴らしい思い出に浸っている時に価格を提示され、安すぎるのでは?と思うかもしれません。
2つ目は、手に入るものよりも失うモノに注目する事です。会社を売買する時も、会社を失うという事実に注目するかもしれません。失う事に対する感情の方が得られる金銭的価値よりも相対的に大きく評価されるのです(損失回避を参照)。
3つ目は、他の人が取引を行う際、自分と同じくらい素晴らしいモノを手に入れる!と勝手に思ってしまうことです。会社の買い手が自分が売る会社に対して、同じくらいの感情を持つと勝手に勘違いするのです。しかし、実際にに購入する側は、会社の負の面に目がいき、感情的な余韻などまったくもって無関心なのです。
早嶋 聡史(はやしま さとし)
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